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最初からこうなる予感はしていた。
イタリアがあまりに短いスカートはいて出て行こうとするから、着替えろと説得したけれど。

「これくらい普通だってば!もードイツしつこい!」
そう怒られて押し切られてしまって。

…そもそも、本人に自覚がなさすぎるのだ。イタリアはかわいい。それこそ、少しそばを離れていただけで男たちが声をかけてくるくらいに。


目の前に広がっていた光景にいらっとして、ずかずかと歩き出す。向かうのはイタリアのもと、だ。先に外に出して、会計をすませて外に出ただけでこれだ。何人か組の男たちの真ん中に、少し困ったようなイタリアの姿。
確かに彼女はかわいい。
けれど、決してこいつらのものではない。

「フェリシアーナ。」

声をかけると、困った顔をしていた彼女の表情が輝いた。
「ルーイ!」
じゃあ彼氏来たから、と男たちのあいだをすり抜けて駆け寄ってくる彼女を抱きしめる。

「行こう。」
そのまま、腰に手を回して歩き出す。
もちろん、男たちをにらみつけるのを忘れずに。


腰を抱き寄せて大通りを歩いていると、ルーイ待って、とちょっと焦った声で呼ばれて、自分がいつのまにか早足になっていたのに気がついた。ゆっくりとペースを落とす。彼女とは、歩幅も歩く速さも違うから、気をつけていないとすぐ置いていってしまったり、転かしてしまうのだ。

大丈夫か、と隣を見れば、じいい、とまっすぐに見上げてくる瞳と目があって、なんだか居心地悪くなって前に向き直った。

「ルーイー」
笑いを含んだ声で、そう呼ばれる。おもしろそうな、からかうような声。
「…何だ。」
仕方なく返事をする。
「やきもち?」
うっと詰まって、ちらり、と見やると、普段より大きく見える、デートなんだから気合い入れなきゃ!とメイクをしていた、好奇心満載の楽しそうな目。

「ねえ、やきもちー?」
やきもちでしょー?ルーイかーわいー!
伸び上がってのぞき込んでくる彼女に、顔をそらす。頬が熱い。

「ルーイーこっち向いてよ、ね!」
「…嫌だ」
「やだじゃないって!ほらほら!」
「…っうるさい!」
あまりにはしゃぐから、振り向くついでにその唇を塞いでやった。
した後でああもうこんな往来の真ん中で、とか後悔したが、

「っルーイ大好き!」
えへへへ、はぐーと抱きついてくるイタリアが本当に嬉しそうだったから、まあいいか、と思ってしまった。
まったく…とことん、彼女に弱いな…。
それが心地よい、と感じている時点で、もう彼女にどっぷりはまってしまっているのだろう。
まあ…抜け出す気も、微塵にもないのだけれど。

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実美様からのリクエストで、「伊がナンパされ、慌てて蹴散らす独占欲丸出しの独」でした

伊が大好きな独と、かわいい伊…を目指してみましたが、いかがでしょうか?

こんなですが、少しでも気に入っていただけると嬉しいです。
ありがとうございました!
















































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「わああ!」
上がった二人分の歓声に笑いながら、気をつけろよ、すべりやすいからな。と声をかける。
はあい!と元気な子供達の答えを聞きながら、隣に手を伸ばす。
途端に隣にいたイタリアが、うわあ!と足を滑らせるから、自分の勘に感嘆しながら、抱きとめる。絶対こける。と思ったのだ。
「気、を、つ、け、ろ、よ?」
「…はあい。」
一音一音区切って言えば、えへへ、と情けない笑み。
ため息をついて彼女を立たせ、まわりを見回した。

温泉に行こうと言い出したのは、イタリアだ。
久しぶりに行きたい、というか、家族全員ではそういえば、行ったことがなかったか。と即決定。
温泉初体験のマリアとガブリエルを連れ、やってきたわけだ。
今回は、イタリアが指定したから、彼女の家の近くにある温泉。
最初は日本のとこ行こうよ、という話だったのだが、他ならぬイタリアに仕事が入って、休暇が短くなってしまったのだ。
イタリアはごねたが、日本の家に行くのはバカンスで、と約束して、納得させて。

「あったかい…。」
「入ろう、ガヴィ。」
放っておいたら二人でどこまでも行ってしまいそうな子供達を追う。足をそろそろと浸してそれから中に入っていく二人の目がきらきらしている。…まあそれは、隣を歩くイタリアも同じだ。
…それはともかくとして、水着で抱きついてくるのはできればやめてほしいんだが。…こけるのとどっちがましだと聞かれればそりゃあこける方が嫌なので、何も言わないが。うん。
今日のために買ったんだよねー。とマリアとおそろいだというそれは似合ってないはずもなく。…あー。うん。考えないようにしよう。今は。

隣で足を下ろすイタリアから、マリアたちに視線をやり、気づいてガブリエル、と呼ぶ。

「何?」
「ん。」
ヘアゴムを差し出せば、すぐに受け取って、姉の長い髪をくくりだす。
「あ、ありがとガヴィ。」
「まったく…姉さん、自分でくくれるようになりなよ?そろそろ。」
「えー。だって、ガヴィがしてくれるじゃない。」
「だってじゃない。甘やかすなよ、ガブリエル。」
「父さんみたいになるから?」

さらりと言われ、今ちょうどイタリアの髪をくくり終えたところだったのも重なってぐ。とつまって何も言い返せなくなった。

…うん。まあ。…その通りだ。
「ヴェ。俺は素敵だと思うけどな?髪くくってくれる男の人。」
恋人にしてもらえたら素敵じゃない?というイタリアの声に、肩をすくめてガヴィが言い返す。
「…それは母さんがそういう状況で育ったからだと思うよ?」
「そーかなー?」
首をかしげるイタリアをかわいいなあとこっそり思いながら、温泉に肩までつかる。

…普段の肩こりとか疲れとかが抜けていくような感じがした。
ふう、とため息をつくと、となりからくすくすと笑い声。
「どうした?」
「んー?思い出し笑い。」
くすくす。笑いながらちら、とこっちを見るから、俺の方を見てくる。…なんだ?
「どうしていいのかわかんなくて、ヘアゴム持って困ってるドイツもかわいかったなあって。」
くすくすくす。笑う声に、思い出す。そうだ。最初はさっぱりわからなくて、けれど触り心地のいい彼女の髪を他の誰かに触らせるのが、嫌で。なんとか自分でできるようにして。それをいつも楽しそうにイタリアが、見ていて。
「最初はぐっちゃぐちゃにして困り果ててたよねー!」
イタリアの、だんだん大きくなる笑い声に、少し恥ずかしい気分になって、温泉の中に沈めた手を組んで、ぴゅ、と水を彼女の顔に飛ばした。
「わ!やったな!」
ばしゃん!容赦なくかけられる水に、ひるむことなくまた顔に命中させると、うーというイタリア以外になにそれ、それどうやってするの?パパ、とばしゃばしゃ近寄ってくるマリアとガブリエルの声が聞こえて。

そっちに気を取られた瞬間、イタリアに引っ張られてお湯の中にダイブ。


家族の楽しげな笑い声が響くのはそれがどこでも、いつものこと。


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アリー様からのリクエストで「家族旅行で温泉へ行く話」でした


あんまり温泉っぽくないですが…仲良し家族な感じが出てるといいなと思います


こんなですが、少しでも気に入っていただけるとうれしいです
ありがとうございました!