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触っても、いいか。
そう尋ねると、うなずかれた。そっと触れる。…温かい、体温。

ほう、と思わず息をついたら、まだわからないでしょう?と笑われた。
「…わからない、けど。」
いるのは、間違いないんだから。言ったら、そうですね、と柔らかい笑み。…少し、表情が変わった、と思う。…やっぱり、母、になったからだろうか。
少し大きくなったお腹を、そっと撫でるその表情は、とても穏やかで、綺麗だ。

「日本。」
「はい?」
「…いや。」
なんでもない。と呟いて、手を離そう、と思ったけれど思い直して、彼女を抱きしめて、お腹に触れる。
「!い、イギリスさん、」
「何だ?」
「……いいえ。」
なんでもないですよ、もう…という声が、恥ずかしそうで、笑った。…夫婦になって、赤ちゃんができても、日本は相変わらず抱きしめたり、キスしたり、に弱い。恥ずかしがる。そこが可愛いんだけど。

「男の子か女の子か、は?」
「次のときにはわかるだろう、というお話です。」
「そうか…。」
呟いて、撫でる。…ここに、いる。新しい命が。そう思うだけで、幸せな気持ちがあふれてくる。
それをため息乗せて、抱き寄せた日本の肩に、顔をうずめる。

「どっちが、いいですか?」
「え?」
「男の子と、女の子。」
そう、だな…しばらく考えて。
「…女の子、かな。」
「おや、そうなんですね。」
「ああ。…いや、どっちでも構わないのは構わないんだ。」
どちらも、愛しい。それに変わりはないから。
けれど。


「…甘やかせる、と思うから…男だったら、ちゃんと礼節とか教えないとってなりそうで。」
「それも、大事なことですよ。」
「わかってる。甘やかすだけじゃいけない。」

そう言ったら、そうですね、子供を育てる、という意味では、イギリスさんの方が先輩ですもんね、と日本は笑った。
「頼りにしてますよ、お父さん。」
そんな風に、…幸せそうに、笑うから。
思わず、その体を、がばっと抱きしめた。

「きゃっ。」
「…日本。」
好きだ。…ありがとう。耳元で囁いた。
「もう…何度目ですか?」
「何度だって言いたい。…足りない。」
ありがとう。俺と出会ってくれて、好きになってくれて、結婚してくれて。…子供を、産む決意をしてくれて。
きつくないように抱きしめて、もう一度ありがとうと呟く。幸せで、本当に、こんなに幸せでいいんだろうか!

「…ふふ。」
「何?」
「…イギリスさん、この子産まれたら泣きそうだなあって。」
今でこの状態なんですから、とくすくす笑われて、な、泣くか!と眉を寄せる。
「いい大人なんだぞこれでも。」
「私は泣くと思いますよ。」
「何だよ、賭けるか?」
「いいですよ、何賭けます?」
「そうだな…。」

小さく呟いて、考えながら、頬が緩んでいくのを止められなかった。
幸せで幸せで。…これ以上、なんてなかなか無いと思う。
「…この子にも、この幸せを早くわけてあげたいな…。」心からそう思った。

途端、ぴく、と。触れていたお腹の中で。
「あ。」
2人で同時に声を上げて。
…どうやら、早く会いたいと、思っているのは、こっちだけじゃないらしい。
2人で顔を見合わせて、笑った。


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かりんとうさまからのリクエストで、「妊娠中の日のお腹をさわる英」でした

こんな感じでいかがでしょうか…?賭けは英の負けです。やんちゃ娘のエリの生まれる前ということで…

こんな感じですが、少しでも気に入っていただけると嬉しいです。
ありがとうございました!
























































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※シーランドくんが子供な家族話ですので、苦手な方はご注意ください。




「ママー!」
なのですよ!と走ってきた少年に、日本は小さくくすくす笑った。

「はいはい、ああ、髪が濡れたままですよ?」
「ママふいてください!」
イギリスの野郎ぐちゃぐちゃにするから痛いんです、と言う声にかぶせるように、おいこら!と怒鳴り声。
走り込んでくるイギリスの姿に、シーランドがげ。と言ったのがおかしくて日本は吹き出した。今のシーランドくんの顔、イギリスさんにそっくり!

「シーランド!逃げるな!」
「やですよー!」
ママにしてもらうですー!という声にはいはい、と笑って、イギリスさんに私がやりますよ、と微笑む。

「…すまない」
「いえいえ。ほら、動かないでくださいよ〜」
「はいです!」
ソファに座った彼の、固い髪を、やさしく拭いていく。
じっとしておいて、と言ったのに、手持ち無沙汰なのか、足をぶらぶらさせる。それにあわせてふらふら頭が揺れて。

「こら、ふらふらするな」
「何でイギリスの野郎に言われなきゃいけないですか!」
「日本に迷惑だろ!」
「、ママ、迷惑ですかー…?」
見上げられ、ちょっとじっとしていただけると助かりますかね、と困ったように言えば、はあい、と止まった。

「ありがとうございます、すぐ終わりますからねー」
そう言って、ごしごしと拭いていく。
じっとしていてくれれば、すぐに終わらせられる。もう何度もしたから、慣れてきて早くなってきた。


終わればすぐぱたぱたと走って遊びに行ってしまう小さな後ろ姿をながめていると、ったくあいつ俺の言うことは聞かないくせに日本の言うことには素直なんだよなあ、とぼやく声。
「そうでもないと思いますけど?」
「そんなことないだろ…」
ため息をつく姿にくすくす笑う。

このあいだ、イギリスさんがいないときに、使ったらちゃんと片付けろって言われてたのを思い出して、これはイギリスの野郎に言われたからじゃないですよ、僕がやらなくちゃと思ったからやってるんです、シー君は立派な国ですからね!と言いながら片付ける彼のことは、しー、ですよ!と言われているので、秘密。


「ところでイギリスさん」
「ん?」
「ここに座ってください。」
「?ああ…」

さっきまでシー君が座っていたところに座らせる。
目の前にくる、湿った髪にタオルをかぶせると、あ!と声を上げた。
「やっぱり。シー君追いかけるのに必死で自分の髪乾かすの忘れてましたね?」
「いや、その、後でちゃんとやろうと…」

答えにはいはい、と返して、頭をわしゃわしゃとタオルで拭く。
「に、日本、自分で、」
「やらせてください。」
言えば、彼は静かに口を閉じた。
そわそわと落ち着かない彼に、じっとしててください、と声をかければかちこん、と固まって。
氷みたいに固まっているのがおもしろくて、声に出さずに笑う。

「イギリスさん、」
「…なんだ」
「好きですよ」
告げれば、う。と黙る彼。タオルをどければ、耳の端まで赤くなっていて。
「…俺もだ!」
照れているのだろう。怒ったように、言われて、はい、と答える。その声がついつい笑ってしまうのは、見逃してほしい。

「…笑うな」
けれど、やっぱり見つかって、不機嫌そうな声を出した彼に、すみませんの気持ちをこめて、見下ろすと見えるつむじに、そっと口づけた。


突然、あー!と大きな声!


「ずるいですよ!シー君もキスしてほしいですー!」
声とともにイギリスさんの膝の上に飛び乗って目の前に顔を近づけてきたシー君に、目を丸くして。
「ぐ…こらシーランド、頭を押さえ込むな!」
「やですよー!イギリスの野郎なんかこのまま縮めばいいんです!」

わいわいと目の前で騒ぐ二人に、苦笑。
まったく…この二人と一緒だと退屈しないですよ、もう。



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亜麻様からのリクエストで「英日に海を加えて家族な話」でした

海がにせものでごめんなさい…こんなかんじにわいわいやってるといいなと思います。

こんなですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
ありがとうございました!
























































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髪を撫でる手の温かさが、とても心地が良い。
だから、今日は早々にやめてしまった彼を残念に思いながら目を開ける。

「イギリスさん…?」
「ん?」
返ってくる言葉。けれど、夜の闇の中では、深い色に変わって見える瞳が見るのは私ではなく。

「手…どうかしました?」
「いや、爪伸びたなって。」
爪。…そんなに伸びていない気がするけれど、いつもきっちりと切りそろえている彼にしては、長いかもしれない。
「明日切らないとな…」
「そんなに長くないですよ?」

首を傾げると、だって、日本に怪我させるわけにはいかにいからな。って…何故急に私が出てくるんでしょう。

しばし黙って考えて、目が合うと、意地悪そうに笑った彼に気づいて。

「…っ!!」
その言葉がさっきまでの行為を指していることに気づいて真っ赤になった。
「傷。付けるわけには、いかないだろ?」
「…っ知りません!」
ぷい、とそっぽを向くと、くすくすと笑い声と、伸びてくる腕。触れる素肌は、あたたかい。

「日本、ごめん。」
ごめんなさい。笑いながらでもちゃんとそう言われたら、許すしかなくて。
「…あんまりからかわないでください。」

そう言って手を回った腕に添えると、手をとられた。見つめられる指先。…ちょっと私も、爪長いですかね…。
「日本はもうちょい長くていいからな。」
「どうしてですか?」
後ろからの声に尋ねると、爪を指の腹で撫でられた。
「…そりゃあ…やめた。また怒られそうだ。」
小さく笑う声に、もう、と指に爪を立てる。
「痛い」
「痛くしてるんです。」
言い返して、残った半月型の痕を撫でる。

「イギリスさん、明日のご予定は?」
「片づけないといけない書類がちょっと、だけだな。日本は?」
「私は明日はお母さんモードです。」
ですから、新しいお鍋とか見に行きたいんですけどいかがですか、おとーさん?
聞けば、わかった、車出す。と一言。
頼れる旦那様だ。ありがとうございます、と笑って言って。

…ああ、ほら、また。頭を撫で始める、手。
暖かい感覚が、心地よくて、でも気に入らなくて、腰に回ったままの腕をゆるめ、もぞもぞと回る。
「日本?」
すぐそばにエメラルド。彼の鼓動が聞こえる位置に頬を寄せると、どきどきと、心音は早くて。
イタリアくんみたいにはぐーとばかりに抱きついて、その音を楽しんでいると、今度は満足できる頭の撫で方。うん。やっぱりこっちが好き。

「イギリスさん」
「…ん?」
平静を装った声出したって、心拍数は正直ですよ、イギリスさん!
小さく笑う。

「好きです」
「!」
「あ。間違いました、おやすみなさいでした。」
何も言う暇を与えずにそう言えば、どうやったら間違えるんだだのなんだの声はしたけれど、そのうち、消えて。

「…おやすみ日本。」
その少し眠たそうな甘い声が、実は一番、好き。おやすみなさい。吐息だけで答えて、目を閉じた。

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リクエストで「裏と連動でピロートーク」でした

全然連動じゃなくてすみません…いちゃいちゃしてる感じが出てるといいなと思います

こんなですが、少しでも気に入っていただけるとうれしいです
ありがとうございました!