.

「ねえ、みんなでプール行こうよっ!」
イタちゃんの発案に、みんなでプールにやってきた。(私が言うのもあれだけど、みんなほんと、イタちゃんに甘いわよねぇ…)
…プールなんて、久しぶりだから、ちょっっと悩んだんだけど…
ちょっと、チャレンジして、みた。


「うわあ!ハンガリーさんすごい綺麗!」
イタちゃんの声に、ありがと、と笑う。褒めてくれるのはうれしいのだけれど…彼の声で、一気に集まった注目が、ちょっと恥ずかしい…

水着なんてほんとに久しぶりだから、どうしようかなと思ったんだけど、見るだけ、とか思いながら行ったお店に思いの外かわいいのがあって、気づいたら買っちゃってて。
…買ったら、着なきゃって、それだけだったんだけど。久しぶりに泳ぎたいし。

「今日プール来てよかったよ〜だって、ハンガリーさんのこんなきれいな姿が見れたんだもん」
「ありがとう。」
相変わらず褒めるのが上手。苦笑して、ふ、と視線を動かした。
によによしてるフランスとかスペインとかの中で一人。
ずかずか、と歩いてくるのは、イタちゃんにせがまれて、水着の上からパーカーを着込んだ、オーストリアさんだ。
「オーストリアさ、」
呼びかけようとして、口を閉ざす。…その表情が、なんだか怒っているように、見える。
「ハンガリー。」
自分の着ていたパーカーを脱いで、ずい、と差し出して。
「着なさい。」
「え、あ、は。」
返事をする前にぱっと離すから、慌てて受け取ったら、そのまま。
何も言わずに、どこかへ行ってしまった。

…あんな態度のオーストリアさん、はじめてで、どうしていいのかわからなくなった。
怒ってた、のかな。…怒らせた、のかな。私が。…こんな格好、してくるから。
そう思うと、悲しくてつらくて、きゅう、とオーストリアさんのパーカーを握り締めて、息をついた。


パラソルの下に入って、そっと彼のパーカーを羽織る。…少し、大きい。ふわり、と漂ってくる香りに、さっきの姿が、どうしてもまぶたの裏から離れなくて。
「…着替えよっかな」
「ええっなんで〜?」
似合ってるのに、もったいないよ、と言ってくれるイタちゃん。ありがと、と微笑んで、でもね、と呟く。
「一番そう言って欲しい人を不機嫌にさせるんじゃ…おしゃれの意味がないと思うわ」
背中を向けて、こっちなんて見てくれなかった後ろ姿を思い出す。…怒らせたい訳じゃ、なかったんだけどな…
ため息をついたら、イタちゃんがいきなり立ち上がった。
「イタちゃん?」
「ハンガリーさん、ちょっとだけ待ってて!」
俺行ってくる!と何だかすごく決意した顔で駆け出すから、いってらっしゃい?と見送って。途中でドイツになにやら言って、ぱたぱたと走っていった。
「どうしたのかしら…?」
「さあな。」
声に、顔を戻すと、すぐ近くにドイツの姿。
「?なに?」
「イタリアに言われた。護衛だ。」
ちら、とむける視線を追いかけると、こっちに来ようとして断念したらしく、戻っていくフランスの姿。
「…ありがとう」
「いや。」

座れば?いやいい。
そう会話を交わして、座ったまま、膝を抱える。
「…オーストリアも、別に怒ったからあんな態度とったわけじゃないと思うぞ。」
「…そうかなぁ…」
昔から、私が派手な格好とか、するの嫌いな人だった。特に露出の多い服は。
「…わかってるだろ、あいつが素直にできないのは。」
それは知ってる。オーストリアさんが、そう言う性格なのは、私が一番よく。
でも、あれは。…私のことなんて見たくないみたいな、あの態度は。
「…怒ってるんだと、思う、やっぱり…。」
口に出したら余計につらくなって、ため息。
「いや…。」
「ドイツ。」
彼が何か言おうとしたとき、遠くから声が聞こえた。
思わず身をすくめる。…オーストリアさんだ。
「ご苦労様です。…もういいですよ。」
ドイツは、何か言いたげに、口を開いたけれど、諦めたようにため息をついて、じゃあな、とオーストリアさん連れてきたイタちゃんと一緒に行ってしまった。

オーストリアさんと2人で残されて、漂う気まずい沈黙に、いたたまれなくなる。けど、せっかくイタちゃんがチャンスくれたんだもの。このままにしちゃいけないよね!
「…オーストリア、さん。」
「なんですか。」
…ちらり、ともこっちを見ない瞳。ずん、と気分が沈んでしまう。
「…怒ってます、か…?」
震える声で聞いて、みた。そうしたら、まさか!と大きな声を出してこっちを見た。
けれどすぐに、そらされる視線。
「…オーストリア、さん…。」
「…怒ってなど、いません。」
「じゃあ、なんで!」
なんで、私のこと見てくれないんですか…?
不安になって口に出せなくて、黙ってしまった。
うつむいたら、小さなため息。
「…その、水着。」
小さく、呟かれた言葉に、びくっと反応してしまう。
けれど黙ったまま、その、と続く言葉を聞く。
「…とてもよく、似合っています。…その、なんというか…似合いすぎて直視できない、というか…」
「え…?」
ぼそぼそ、と言われた言葉に、目を丸くする。
顔を上げると、視線をそらしたまま、いや、そういうわけでは、とかなんか言い訳してる彼の、横顔が見えて。え。この反応って、もしかして。

「…もしかしてオーストリアさん、照れてます?」
「ですから、……そうですよ…」
認めた!視線をそらして顔を赤くしているのが、かわいくてかわいくて。
「ですが、…その、私の態度であなたを悲しませたことは申し訳ないと思ってます。すみません。」
「オーストリアさん」
思わず呼んだ。ちょっと思いついたから、試してみよう。ねえ、これくらいの悪戯、許されるでしょう?
「何ですか」
「キスしてくれたら、許して上げますよ。」
笑っていったら、ここで、ですか?なんて言うからここで、ですよ、とにっこり笑って返す。
額か、よくて頬だろうと思いながら見ていたら、す、と顎に伸びてきた手。
え。と目を見開く。


一瞬。…ほんの一瞬、だけど、確かに唇同士が触れて。


「…なんですか。あなたがキスって言ったんでしょう。」
「え、あ、う、だ、だって…!」
ああもう、顔が熱くて仕方がない!



戻る


ひなた様からのリクエストで、「墺洪で、みんなでプール!で洪の水着姿にドキッ&嫉妬&キス」でした。

ちょ、ちょっと思ってたのと違うのが出来上がった気がします…!でも墺洪いちゃいちゃさせるのは楽しかったです

こんなですが、少しでも気に入っていただけるとうれしいです。
ありがとうございました!