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※洪さんが男体化してますので、苦手な方はご注意ください







………。
あー。うん。何から話したものか…。…何?最初から?そうだな…原因はイタリアだという話から、そこから行こうか。

「ハンガリーさんだけ仲間外れってダメだと思うんだ!」
イタリアがいきなりそんなことを言い出すから何事か、と瞬きをした。
日本が来るんだからかわいいかっこしなきゃね!と着たシフォンスカートがふわりと揺れる。
隣に座った日本と顔を見合わせ、わかるか、いいえ、と視線で会話を交わす。

「あー…。イタリア?」
「だってさ、仲間外れは行けないでしょう!?」
「いやまあそれはそうなんですけど…」
何の話、なんだろうか。そこが全く持ってわからない。
「だよね、だからさ、俺、どうにかしなきゃなって思ってさ、だから…」
ばんばんと興奮したように話すイタリアにとりあえず落ち着かないか、と肩に手を伸ばすが、そのとき、玄関の方で声がした。
「悪い、遅くなった!」
仕事で遅れていたイギリスがやってきたのだ。迎え入れなければと腰を上げるとそれより早くだだだだだとイタリアが走っていく。
「おい、イタリ、」
「イギリスイギリス!お願いがあるんだけどっ!」
「はぁ?な、何の話、おい!」
「いーから来て!」
そのまま、走っていってしまって。

それが、「俺たちは女の子になっちゃったのにハンガリーさんだけなにもないのは仲間外れだ」とい
う意味だとわかっていれば、止めていたのだが…。

数時間たって帰ってきたイタリアは、イギリスともう一人、知らない男を連れてきていた。
「…?どちらさまですか?」
日本が声をかけると、するり、とその腰に腕を回して。
「相変わらず美人ですね日本さんは。」
さらり、と言われた言葉に、かっちん、と日本が固まった。
瞬時にイギリスが日本を引き戻す。ごめんって、と楽しげに笑う。
「…おい。」
誰だ。低くそう尋ねると、やだな、そんな怖い声だすなよドイツ。と言われた。するり、と肩に回される手。ぱしり、とはじいて睨みつける。
…まるで古くからの知り合いのような口調。


上から下まで、見る。長い髪をひとつにくくった微笑んだ青年。すらりと高い身長。深緑の、瞳がまっすぐに、向けられる。好戦的にも見える表情。…初対面、のはずだ。

もう一度、誰だ、と尋ねようとして、イタリアに飛びつかれた。満面の笑顔。
「すごいでしょー!かっこいいよねハンガリーさん!」
「……は?ハンガリー?」
何故ここにいない彼女の名前が出てくる、と聞こうとしたら。
「イタちゃん、そんなに褒めても何も出ないけど?」
さらり、とそう目の前の男が返して。
「えっ。」
もしかして、イギリスさん、という声。ちらりと見ると、視線を逸らすイギリスの姿。嫌な予感が、ひしひしとした。
「まさかとは思うが………ハンガリー……なのか?」
心底聞きたくなかったが確かめると、彼(いや彼女か)は、楽しそうに笑って、

うなずいた。


「なるほど?それがイギリスの魔法で男に変えられたハンガリーだった、というところまではわかりました。イタリアを後でお借りしますよ。まったく…。」
人に迷惑をかけるな、という話を成人したはずのあの子にまだしなければいけないらしい。あの御馬鹿さんは…と小さくため息。
悪い、と何故か謝るドイツに、それで?と話を促す。
「ハンガリーはどうしてああなったんですか?」
「…それは俺にもわからん…。」
ただお前が来た、と聞いただけであの状態だ、とちらと視線をやる。
ハンガリーさあん、とイタリアがドアを叩いて呼びかけるのはドイツ家の客間。その中にハンガリーが何故か立てこもってしまっているのだ。…開けたくないらしい。
やれやれ、とため息をついて、カップを置いて立ち上がる。



「出てきてよー。」
「イタリア。代わりなさい。」
ドアの前に張り付いていたイタリアに言って、そこをどかせ、ハンガリー、と声をかける。返答なし。

どうやら、立てこもりの原因は自分にあるようだ。
「…何を怒っているんですか?」
『っ!怒ってなんか、』
低い声が、一瞬して、また黙る。…怒っているわけではないらしい。ではなんだろうか。と考える。
…わからない。
「…私はまたあなたに、何かしてしまいましたか?」
素直に問いかけると、違います、オーストリアさんが悪いわけじゃ、なくて、とそう言われた。少しほっとした。

「ではなんですか?」
ドアに尋ねる。…辺りはしんとしている。気を利かせて、ドイツがイタリアをつれて二階へ行ったようだ。
だって、と小さな声がした。無言で続きを待つ。
『だって、こんな格好見せて、嫌われたくない…。』
泣きそうな、声。…拍子抜けして、ため息をつく。
「イタリアにはのりのりだったと聞きましたが?」
無言。…やれやれ。

「だいたい、あなたは自分に自信がなさすぎますよ。」
そう言って、ドアにそっと手をあてる。
彼女に少しでも、心が伝わるように、言葉を、考えて。

「…どんな姿であろうと、私は『あなた』を…愛していますよ。」
ハンガリー。そう名前を呼ぶ。

しばらくの沈黙の後、言ってしまった言葉に赤面していると、かちゃり、とドアが開いた。
隙間から、本当ですか?とでも言わんばかりの視線がくるから、苦笑してうなずいてみせる。

「…っ!オーストリアさん!」
ばんとドアを開けて、ハンガリーが飛び出してきた。
自分より大きな体を受け止められなくて、倒れこむ。一瞬、息が止まった。
「っ、こら、ハンガリー、」
「愛してます。」
世界中の誰より、ずっと。
そう、耳元で、低く囁かれて、かっと全身の温度が上がった。どきん、と心臓が鳴って一瞬かっこいいなんて思ってしまったのは何だか変なことにつながりそうな予感がするから忘れないと!!

「っ!!と、とにかく離れてください!」
「あっすみません!」
ぱっと離れたハンガリーが、えへへ、と変わらない表情を浮かべた。
…この笑顔がある限り、彼女を、それが彼、であろうとなんであろうと、嫌いになるわけがないのに。
「この御馬鹿さん。」
「ごめんなさい。」


その後自信を取り戻したハンガリーがそれをとても『楽しんで』、一夜明けて、元に戻ったハンガリーを見て、本当によかったですよ、とオーストリアが遠い目をしていたのはまた別の話。



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結衣様からのリクエストで「墺洪で洪が男性になった話」でした

設定は何でもと言っていただいたので、My Ladyです、一応…洪♂は墺さんもくらくらになるくらいのいい男だと信じてます!

こんなですが少しでも気に入っていただけるとうれしいです。
ありがとうございました!



































































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ふあ、とあくびをしながら街を歩く。
いい天気だ。青い空、澄んだ空気。
問題は、この近くにあのオーストリア宅があるというところだ。あそこは鬼門だ。本当に苦手だ。親二人は当然として、あそこの長男も苦手だ。…ベアトリクスとか、マリアとガブリエルはまだかわいげあるんだが…。

「あいつはちょっとなぁ…」
「誰の話?」
「誰ってマックスの悪ガキの…」
声に答えかけて、はた、と気づいて口を閉じる。今の声。は、誰、だ?
…マックス、の声に聞こえたのは。気のせい、か?

ぎぎ、と視線を向けると、にしゃあ、と笑って、手に紐持ったマックスの姿…!
「お、ま…っ!」
「頭上注意っ!!」
はっとして上を見上げると、そこにはバケツが吊り下げてあって。避ける間もなくバケツがひっくり返された!
ざばあ!と水が降ってきて。
「あははははは!」
だーいせーいこーう!と笑う声にひくついた。
「…〜〜〜…っ!おまえやっぱり嫌いだ…っ!!」
あああもう!こいつに会うといつもこんなだ!!



その状態で家まで歩くわけにもいかず、俺にとってはラスボスの居城、なオーストリア宅に寄らなくてはいけなくなった。というかわざとだな?マックスのやつ…!
さすがに濡れ鼠で上がるわけにはいかないので庭に回り、シャツを脱いで絞る。

「あ、の」
かかる声に振り向くと、小さな影。
「兄がすみません…これ」
タオルです、と差し出してくるのはベアトリクスだ。おう。と受け取って、頭をがしがしと拭く。
「…ん?」
ちら、と視線をやると、じい、と見上げてくるつぶらな瞳。
「どうした?」
尋ねると、あの、その、とおろおろしだした。
その両手に抱きしめられた、一冊の本。
ああ、と気づいた。古い、うちの本だ。昔の言葉で書かれているから、ベアトリクスには読めない部分があるのだ。教えてやることもよくある。もちろんオーストリアもヴェストも読めるのだが、書かれたそこの国の方に聞かないと、細かい表現が伝わらないと思いますので、らしい。

「どこだ?」
しゃがみこんで尋ねるとぱあ!と表情が輝いた。
「ありがとうございます!」
心からの笑顔に、一瞬息を詰まらせて、はああ、と深く、ため息。
「プロイセン、さん?」
くき?と首を傾げた彼女の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「きゃ、」
「かわいいなぁおまえは…!」
わしゃわしゃと頭をかき混ぜていると、がすっ!と頭に重いものが当たった。
「っ!」
思わず頭を押さえてうずくまる。
「ベアトリクスに近づくな変態!」
「お兄様っ!!人に本を投げつけるとは何事ですか!お兄様!?」

ばたばたと駆けていく音を聞きながらいてえ、とぼやくと、ばふ、と今度は布が投げつけられた。
「早く着なさいよ馬鹿」
声に痛みで涙のにじんだ目で見上げると、仁王立ちしたハンガリーの姿。
「…いたのかよ…」
「今帰ってきたところですよ」
上着を脱ぎながらのオーストリアの言葉にああそう、と呟いて投げつけられたシャツを着る。こないだマックスに粉まみれにされた時に置いていったやつだ。


「しっかし、あんた気に入られてるわねえ」
マックスにもベアトリクスにも。
言われて口をへの字に曲げる。
「あんまうれしかねーよ…」
痛いし。毎度水浸しになったり粉まみれになったりだし。
でもまあ。ちら、と見やる。走り回る兄妹。
「ま。…ガキが元気なのは、別に悪いことじゃないとは思うけどな。」
「…そうね。」
「それには同意しましょう。」
珍しく俺の言葉にオーストリアとハンガリーがうなずいて。

「しかし、一応言っておきますが、ベアトリクスは差し上げませんから。」
いくら懐かれているからといって調子に乗らないでくださいね。
冷たい口調とともに殺気の込められた二対の視線に射抜かれ、そんな命知らずじゃねぇよとぼやいた。


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サザナミ様からのリクエストで「墺洪家の子たちが普に凄く懐く話」でした

懐かれてるというか、遊ばれてるというか…そういう感じですが、いかがでしょうか?

こんなですが、少しでも気に入っていただけるとうれしいです
ありがとうございました!