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「お。オバケ発見。」
お兄様の楽しげな声に、前を見る。見覚えのある女の子と、見覚え…というかなんというかもう、な、物体がひとつ。動いてる、から、たぶん人間。

女の子の方はイザベルだった。かわいらしい水色のドレス。…妖精、だろう。よく似合っている。
まあ、イザベルと一緒にいるし、身長それくらいだし、たぶん隣の包帯を全身(文字通り足から頭の先まで)に巻いた物体はたぶん。

「ルキーノ!」
お兄様が声をかけると、おー、マックス〜と包帯の固まりが喋った。やっぱりルキーノだ。
「なんだよその格好!」
「おまえこそなんやねんその顔!真っ青やん!」
笑いながらしゃべりだした二人を見上げ、それから視線を下げた。
「ベアトリクスかわいい…」
「…イザベルの方が可愛らしいです」
お世辞などではなかった。
水色のワンピースに、白いレース。
まるでこの世のものとは思えないほど、神秘的で。本物の妖精だと言われても、納得するだろう。
「…ありがと。」
はにかんだようにイザベルは笑って、あ、そうだ、と肩から下げた鞄のポケットから、小さな包みを取り出した。
「ほら、ベアトリクス、ハロウィンの挨拶。」
「え…トリックオアトリート、ですか?」
首を傾げて言うと、はい、とその包みを渡された。
「お母さんと作ったお菓子。…数が少ないから、友達だけ。」
「ひどいねんで、俺にもくれへんねん!」
「私だって食べてないの!」
「けど味見はしたんやろ?」
「それとこれとは別!」
にぎやかな二人を見て、包みを開け、中の袋を開く。…よかった。ちょうど。
「はい、お兄様」
「いいって。ベアトリクス食べろ。」
ひとつを渡そうとしたらそう言われたが、みんなで食べた方がおいしいでしょう?と言い返した。
「ちょうど四つありますし。」
「え!俺らにもくれんの!?」
「でも…」
「もう、いいから食べなさい!」
強制的に三人に渡し、みんなで食べた。
おいしいって言いあった方が、一人で食べるよりずっとおいしい。

「あ、これ似合うんちゃう?」
お菓子の包みを結んでいたリボンをとって、ルキーノが手を伸ばしてきた。
「な、なんですか?」
「ちょっとじっとしといてな。」
髪に触れられ、できた。と笑顔。
「かわええ。」
「似合うなぁ。母さんの色だ。」
「本当はうちのお母さんの色だけどね。」
リボンの緑白赤の三色のことだろう。
触ろうとしたら、はずしちゃダメ、とくぎを刺されてしまった。

また遊ぶ約束をさて、二人と別れて、また歩き出した。

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