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「トリックオアトリート!」
そう声をかけると、はいどうぞ、と綺麗な包みを二つくれた。
甘い匂いがあふれてくるそれに、思わず笑顔になってしまう。はい、と一つをお兄様に渡した。
「ドイツ特製のお菓子だよ。すっごくおいしいから!」
にこにこ笑うイタリアさんの後ろで、困ったように笑うドイツさんをちら、と見てから、イタリアさんの腕を引く。
「なぁに?」
かがみこんだ彼女の耳に、口の端にクッキーの粉ついてます、と囁く。
「やば、」
「どうした?イタリア」
何でもないよ〜と笑ってみせる彼女を見て、やっぱりつまみ食いか…と思った。

ドイツさんとお兄様が話しているのを聞きながら待っていると、近くへ来たイタリアさんにしい、と人差し指をたてられた。
「かわいい子猫ちゃんに、おまけ。」
秘密ね、と渡されたのは、クッキー一枚。俺のつまみ食い用、と笑う彼女に、怒られますよ、と苦笑。
「だから、見つかる前に食べて。」
ほらほら、と急かされて口に入れたクッキーは、とても甘くておいしかった。

その後で、俺ももう一枚、と食べているところを見つかって、ドイツさんはおまえ用は分けてあるから、とため息をついて、ドイツ大好き〜!と抱きついていた。


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