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「トリックオアトリート」
言うと、はい、と渡された。
マドレーヌだ。まだ温かい。ふわりと漂ってくる香りは、かぼちゃ、だろうか?
「うわおいしそう!」
お兄様がのぞき込んできて、今のうちに食べたらうまいぞ?とキッチンから声。
「それにしてもベアトリクス…いいねえ実にいい…将来がかなり楽しみだ…」
「フランスさんっ!」
カナダさんのとがめる声に、によによ笑ったままキッチンへ戻っていった。

「まったくもう…ほんとに、食べていったら?」
どうしよう、とお兄様を見上げると、食べていこうか、と笑顔。…でも、と小さく呟く。
「でも?」
「…お父様とお母様におみやげ…」
言ったら、カナダさんの大きな瞳が丸くなった。
それから、くす、と笑う。
「優しい子だね。」
頭を撫でられた。あいつらの家に置いとくのはもったいない、と声がして、フランスさんがキッチンから歩いてくる。

とっさにお兄様の後ろに隠れた。
「あらら。」
「もう…普段の行いが悪いからですよ!」
カナダさんに怒られても、反省はしていないみたい。はいはい、と軽く流して。カナダさんの額にキス。した方もされた方も自然なその様子に、いつものことなんだ、と瞬く。私の家ではあり得ない。
「ほら、おみやげの分。」
マドレーヌが綺麗に包装された袋を差し出された。
でもお父様もお母様も、フランスさんにはあんまり近づいちゃいけないって言ってたし。

「…いいねえ…うちに置いときたいかわいさだ…」
「フランスさんってば!」

よし隠れよう。顔を引っ込めると、あー俺もらいます、とお兄様が受け取ってくれた。

「マックスでも全く構わないぞ?」
「心の底から遠慮します。」
にっこりとお兄様は返した。


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