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「いい景色だな…」
「でしょう。」
ここはいつ来ても綺麗なんですよ、と、隣で日本が笑った。
新婚旅行、どこに行くか、と話し合っていたとき、日本が、私のとっておきにご案内しましょうか、と言い出したのだ。日本がそんなことを言い出すのはめずらしい。だから、すぐそこに決まった。

とっておきなだけはある。そこは、とても美しいところだった。
「露天風呂もあるんですけど、それがまた景色が綺麗なんですよ」
「へえ…」
呟いて振り返る。浴衣に着替えた日本は、やっぱり落ち着きます、と笑って。
その様子にどきどきしながら、でも、とっておき教えてしまっていいのか?と尋ねる。
すると、彼女はいたずらっぽく笑って。
「夫婦、なんですから。隠し事は少ない方がいいでしょう?」
夫婦、という単語に、どき、と胸が高鳴った。
それで一瞬誤魔化されそうになったが、ん?と疑問に思って尋ねる。
「少ない方が、なのか。ない方が、じゃなくて。」
「だって無理でしょう?」
ずばっと一言。いやまあ確かにそうだけど。仕事のこととか。昔のこととか。言えないことは多いけど!

「無理なことはしない方がいいんですよ」
だってこれから、ずっと一緒にいるんですから。

当たり前のことなのに、なんだかそれだけで胸が満ちてしまった。そうだ、これから、ずっと。二人で、一緒で。夫婦、になったんだから!

胸を満たす、満足感のような幸福感のようなものをかみしめていたら、というわけで。と日本がにっこり笑った。
「料理は全部私がしますので。イギリスさんは待っていてくださいね。」
「…日本…」

それが言いたかったのかと脱力するとすみません、と笑われた。
「…いや。」
「…ああ、そうだ。イギリスさん、日本茶入れられるようになってください。」
「え、」
「私はイギリス料理作れるようになりますから、イギリスさんは日本茶を。」
交換で。どうですか?
そう言われて、わかった、とうなずく。それくらいならできるはずだ。というか、できるようにする。
「約束ですね。」

心底楽しそうに日本が笑うのが、本当に愛らしくて、つい手を伸ばして抱きしめたら、かあ、と赤くなって見上げてくるのにくら、としてしまって。
「日本、」
キスして、いいか。
ゆっくり閉じられる瞼が、返事だった。

くちゅり、と舌が絡む。
ぴく、と反応を見せる小さな体が愛しくて、後頭部に手を回して、深く口付ける。
日本の体から力が抜けていくのがわかる。がくん、と唐突に力の抜けた体。ぐ、と腰を引き寄せ、倒れ込むのを防ぐ。
「は、あ…まだお昼ですよ…?」
すっかり息の上がった彼女に、日本が欲しい。だめか。そう真剣に尋ねる。
かあ、と顔が赤くなって、もう、イギリスさん!と怒られた。
「ずるいですよ、そんな…真剣に言わないでくださいよ…」
赤い顔のままうつむいてしまった日本に、ダメか?ともう一度だけ尋ねる。答えはもう、わかっていたけれど。
「…優しくしてくださいね。」
預けられる体重に、もちろん、と答えた。そしてふと、思いついてしまった。
つい頬がにやけてしまう。
「その代わり、って言ったらなんだが、」
「…はい?」

「んあっ、や、あ…っ!」
あられもない声に、煽られる。日本が発しているとは思えない声。ぞくぞくしながら、柔らかいふくらみを甘噛みする。途端に声がオクターブ上がった。
声を我慢しないこと。できるだけでいいから、と日本を説き伏せて約束させたそれは、もう大正解だった。かわいい。愛しい。
変な声上げて嫌いになるかも、なんておかしなことを心配していたから、馬鹿なこと言うな、俺が日本のことを嫌いになんかなるわけがないだろうと真剣に言った。どんな日本でも好きだから。だから。

そう言ったのが功を奏したらしい。絶対嫌です、と頑なだった日本も、ついには折れて。

「い、ぎりす、さん、あ、ふぁ…っ!」
だめだ。にやついてしまいそうだ。なんてエロい。そして、それを聞けるのは自分だけ。欲が満たされる。だめだ、こっちが先にやられてしまいそうだ。
ちゅう、と吸い上げると、頭にかかった手に力がこもった。や、です、イギリスさん。何度も繰り返される言葉。けれど、それが本気ではなくて、いやたまに本気だけれど、痛いとか苦しいとかじゃなくて、恥ずかしいからくるものだと知っているから。やめない。
する、と手を這わせたら、腰が弱いらしい。逃げる体を、シーツに縫いとめる。

「日本、」
気持ちいいか、と尋ねると、そ、そんなの、と泣きそうな表情になってしまった。すまない、と苦笑して、首元に吸い付く。
「あ、そこは…!」
「あ、悪い。」
見えるから、高い位置は嫌ですと言われていたのをすっかり忘れていた。けれど仕方ない。だって日本がかわいらしすぎるのが悪い!
するすると手を伸ばして、太股を撫でる。
途端、びくっと体が強張った。
「大丈夫だ。」
怖くなんかない、と笑うと、視線がそらされた。ばつの悪そうな、恥ずかしそうな表情。
「…そ、そうじゃ、なくて…。」
「なくて?」
返答はなかった。
かわりに、耳まで真っ赤になってしまう日本を見て、なんとなく、察しがついた。
撫でながら、足の付け根に触れる。
足を閉じようとするのに、ぐい、と大きく開いて、間に足を差し入れて。
「イギリスさ…!」
「…濡れてる。」
耳元で呟いたら、ぱっと顔をそらされた。下着の上からでもわかるほどのそれに、ますますにやつきが止まらなくて。
下着を脱がせて、指を這わせる。くちゅり、と立つ音に、日本は耳を塞いでしまった。
「日本。」
「だ、だって、」
聞きたくない、という日本の手をはがして、自分の背中に回す。爪立てていいから。そう言っておいてから、止めていた指をゆっくりと動かす。
途端に背中に痛み。きゅ、と閉じたまぶたにキスを落として、痛くないようにゆっくりと中に指を入れる。けれど、そんな気遣いはいらなかったようだ。少し動かしただけで、水音が聞こえてくるほど、中は潤っていた。
ばれないように小さく笑って、指を動かす。
「やっ、あん、あああっ!」
快楽に震える体に、痛そうでも苦しそうでもないことを確認してから、指を増やす。
弱いところをつつけば、声が消えた。見ると、唇を噛みしめていた。傷になると大変だ。唇をなめて、口を開かせ、深く口付ける。
その間に、弱いところを押し上げるように、強く刺激すると、くぐもった声が聞こえた。
背中に走る痛みが、日本の快楽をそのまま表しているようでぞくぞくしてしまって、そのまま一気に追い上げる。すぐに絶頂を迎えた日本は、くたり、と体の力を抜いて。
それでやっと唇を離すと、開口一番、イギリスさんのばか、と言われた。
「な、」
「優しくしてください、って言ったじゃないですか…。」
うらめしそうに見上げられて、その頬に涙のあとを見つけて、すまない、と謝る。
許してくれないか、と額にキスを落として尋ねる。仕方ないですね、とすぐに彼女は笑って。
「これからは優しくしてくださいね。」
「ああ。」
できるかぎり。と付け足すと、苦笑された。


ゆっくりと、彼女の中に入っていく。
至福とはこのことかと思う。けれど、眉を寄せた日本が心配で、大丈夫か痛くないか、と尋ねる。
「へ、いき、です…」
苦しそうなのに笑ってみせる日本が、健気で、愛しくて、もう耐え切れなくて抱きしめた。
「んん…っ!」
動いたからか、背中をそらす彼女の名前を呼んで、耳元で囁く。
「I love you.」
心の底からそう思う。他に言葉を思いつかないくらいに。好きだ。好きで好きで好きで、たまらない。
「…わ、たしも…愛してます。」
そう、返してくれる日本が、本当に、愛しくて、ああ、彼女が自分のものだなんて、妻になっただなんて、本当に信じられないほどの幸福だ!
ぎゅ、と強く抱きしめて、動くぞ、と声をかける。
小さくうなずくのを見てから、動き出す。締め付けられて、すぐにでも達してしまいそうなのを必死で耐える。
「あ、あっやあん、ひあ!そこ…!」
「ここ、か?」
反応を返したところを攻めると、声がオクターブ上がった。目の前にさらされた喉。甘く噛み付いて、日本、と呼ぶ。
「気持ちいいか?」
さっきは答えなかった質問、だけれど、今は、こくこくうなずいて、答えてくれて。
「…っ、日本…悪い!」
優しくする、と約束したのだけれど。
歯止めなんか、利きそうになかった。


結局、もう無理ですと逃げをうつ体を引き寄せて、もっと、足りない、と求めて、双方ともに意識が飛ぶまでして、は、と目が覚めたら、すでに朝日が昇っていた。…はじめたときには、まだ日が高かったはず。
「…マズい、よな…。」
まだ眠る日本をちらり、と見て、ため息。これはまずい。かなりまずい。
しかも、した約束をほとんど守れていなかった自覚がある。まずい。
怒る、かな。怒ると怖いのだ。日本は。
どうしようとこの後のことについて思い悩んでいると、小さな声が聞こえた。
「イギリスさんの、ばか。」
はっと見ると、眠っていたはずの日本がじと、とこっちを見ていて。
「……ごめんなさい…。」
謝ると、はああ、と深くため息。
「…仕方ないですね。今日一日、私のわがまま全部聞いてくれるなら、許してあげなくもないですよ?」
願ってもない言葉に、即答でわかった!と返すと、何故か楽しそうににっこりと笑われた。
ちょっとやな予感が、した。

その後、日本の、変わってたり難しかったり甘かったりするわがままに一日中振り回されるのは、大変ではあったけれど…まあ、楽しかった。日本が楽しそうだったから。


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