.

「かわいいシスターさん、血をいただけますか?」
笑って、押し倒したカナダにそう尋ねると、泣きそうな顔したカナダに何か投げられた。
すかん、と額に当たる。十字架のネックレスだ。
「痛っ…そんなに嫌?」
「嫌です!」
力強く言われて、少なからずショックを受けた。嫌よ嫌よも好きのうち、とは言えないレベルの拒絶。そんなにするの嫌か。やだやだとは最初から言ってたけど、恥ずかしいからとかそう言う理由だと思っていたのに。そうか…嫌か…と小さく呟くと、潤んだ大きな瞳に見上げられる。

「…フランスさんと、したいです…」
知らない吸血鬼さんとは、嫌です。僕の好きな、旦那様とがいいです。

心臓のど真ん中を銀の弾丸で打ち抜かれた。

はああ、と深い息を吐いて、カナダの体を起こす。
「あ、あの…」
「はいばんざい」
「え、あ、あの!」
慌てているカナダの服を脱がせて、ベッド下に放る。それから、自分の服に手をかけて、はめていた牙も外して。
上半身全部脱いでから、カナダの体を押して、ベッドに横たわらせる。
「仕切り直し。」
「ふぇ、あ、ん…」
キスをして舌を深く絡める。愛しい気持ちが伝わるように。そうすれば、安堵したように、腕を首に絡められて。
唇を一度離して、至近距離で尋ねる。
「じっくりと、ねっとりと、どっちがいい?」
「いつも通りがいいです…」
はぁい、と返事をして、もう一度口付けた。
ず、とすすり上げた。上がる声、白い肌。揺れる金糸。
見慣れたはずのそれは、いつまで経っても美しい。内股に、痕を付ける。柔らかく一段と白い肌に、くっきりと残るそれに、満足しながら、優しく舐め上げる。足が震えた。
「ふら、んすさん、」
荒い息の合間に呼ばれる。顔をのぞき込んでどうした、と尋ねる。
「キス、して」
舌足らずな言葉にぞくぞくしながら、唇を重ねる。

同時に秘部の入り口をゆっくり撫でると、甲高い声が上がった。
自分の口の中に飲み込んで、舌と指の動きを連動させるように動かした。
途端によじられる体。耐えられない、と訴えるように、背中に爪を立てられた。…痛くなんかない。愛しい。
「カナダ」
一度口を離して、呼んだ。返事はない。別に気にしない。中の一番弱いところを刺激されながらでは、意味のない言葉しかでないのは当たり前だ。

「愛してる。」

…未だに怖い言葉だ。口にしただけですべてを失いそうで。馬鹿みたいだけれど、本当だ。だから、返事は聞かない。
好きはよく言うけれど、愛している、は。
ハロウィンにかこつけて、Trick or love?なんて聞こうかとも思った。…言えるわけがなかった。

イギリスなんかが聞いたら大爆笑しそうだな、と思っていると、ぎ、と背中をひっかかれた。思わず指を止める。
「…っ、僕も、…愛してます…っ」
だから。そんな顔しないで。そう言われた。荒い息をつきながら、それでも必死に。
もう何も言えなくなって、唇を重ねた。
ぐちゅり、と分け入って、浅く揺らす。
しがみついてくるカナダ。締め付けられる感覚に眉を寄せて、それでもゆっくりと腰を押し進めた。
本当は、今すぐ無茶苦茶にしてしまいたい。けれど、カナダが感じてくれなければ意味がない。

「カナ、力抜いて。」
そっと囁いて、緩んだところをゆっくりすりあげる。
「あ…っダメ…っフランスさ…!」
じれたように腰を動かされた。
いつもなら誘われたら応えるけれど、カナダの体を抱き起こして、抱きしめる。
ぞくぞくと走る快楽。それは、カナダも感じているであろうもの。
「カナダ、」
呼んで、その存在をこれ以上ないくらい深く抱き込んだ。…これは、現実だ。そう自分に納得させるように。

「フランス、さん…っ、もう、」
急かすように言われて、ゆっくりと動き出す。逃さない、とばかりに収縮する中と耳元で上がる声と、背中を引っかく痛みに、ぎりぎりのところで耐えていたものがあふれた。強く深く穿つ。
「愛してる…っ」
「僕、も…っ」
唇を塞いで、頂上を目指した。
上がっていく声を聞いて、ぐちゃぐちゃと響く音を聞いて。
「あ、あ、ああああっ!」
一段高く上がった声につられるように、達した。



かちゃ、と細くドアを開けて、それを眺める。
「…パパも寝てる」
「めずらし…」
ママが寝ているのはよくあることだったが、パパまで寝てるなんて、とリリーはサラの上からのぞく。
ママを抱きしめて、幸せそうに眠るパパの顔。…初めて見た、かも。

「起こした方がいいのかな?」
「ほっときましょ。ほら、行くわよ」
「どこに?」
「朝ご飯作るから手伝って」
「あ、はぁい。」
ぱたん、とドアが閉まる

二人はいまだ、寄り添って夢の中。

戻る















.
どさ、と押し倒された。脈絡なく。何の前触れもなく。
驚いて見上げて、イギリスさんの瞳の色にあ、やば、と思った。
いつものエメラルドの色より深い、色。
これは、まずい。本気で。
「日本…」
いつもの、情事のときより低い声に、確信した。
「抱かせろ。」
にやり、と笑ったその表情に、なんで海賊時代のイギリスさんが御光臨なさってるんですかぁ!と内心叫んだ。

「逃げるなよ」
「嫌です…!」
こうなったイギリスさんは誰にも止められない。止まってくれない。
だから、できればこっちのモードのイギリスさんとはあまりシたくない。だって後で思い出したら羞恥で死にそうになる。だから、逃げようとした。いつものように。
けれど、あっさり捕まってしまった。
「日本」
せめてもの抵抗、と、嫌、と首を横に振ると、頬に触れられた。少し寂しげな瞳。
「なあ、日本。別に、傷つけたいわけじゃない。ただ、愛し合いたいだけだ。…ダメ、か?」
ああもう、そんな顔したってダメですよ、それが私を罠にはめるための表情だって知ってるんですから、も、そんな優しくキスしないで!
ちゅ、ちゅ、と降ってくるキスに耐えていると、耳にキスが落ちた。
そして。
「愛してる…」
…ああもうずるい!
いいよな、とすでに質問でなく確認をされて、堕ちた。

「気持ちいいか?」
ぐちゅぐちゅと音がする。それがもう耐えられなくて、首を横に振った。
「嘘つき」
「やっあああ!」
強く中をえぐられたら、もう声なんか我慢できそうになかった。
「や、やです、やめて…っ」
感じすぎるから、怖くて、逃げようとしても、ぐ、と引き寄せられる。
「本当に?」
本当に、嫌か?やめていいのか?
そう問われ、目を堅く閉じた。

「日本」
くちゅ、と音を立てて指を抜かれた。
喪失感にからだが震える。
決定的な刺激の代わりに、太股や腰、首から鎖骨にかけてを撫で、舐められる。
高められた体には、それは毒だ。じわじわと熱くなっていく。
「は…!」
「いいのか、止めて。」
もう一度問われた。泣きそうになりながら、小さく、首を横に振る。
「どうして欲しい?」
「っそんな、」

言えるわけがない。もう体は、指や舌では誤魔化せないくらい高ぶっているのに。
目を開けて、見つめても、イギリスさんは笑うばかり。
「どうして欲しい?」
楽しげな笑み。凶悪な色の瞳。見つめられて、背筋がざわめいた。日本。熱い声で呼ばれたら、もう。
「…っ入れて、ください…」
「何を?」

そこまで言わせるのか!
こればかりは本当に言えるわけがない。顔を隠して首を強く横に振ると、手首を掴まれた。
強い力で下に持っていかれる。
何をするつもりかわからなくて困惑していると、手が熱いものに触れた。
慌てて手を引くが、また押し付けられる。
だって、これ、イギリスさんの!
「俺は、おまえが欲しい。」
そう言われて、ぞくんとした。手が触れているものの熱さが、彼の気持ちを表しているように感じて。
おまえは?そう尋ねられた。彼の目を見る。
口に浮かんだ笑みは変わらない。
けれど、その瞳に強い欲望を見て、思わず息をのんだ。
「…ほしい、です。入れてください…っ」
これを、と少しだけ触れているものに力を入れると、口付けられた。くちゅり、と舌を絡められ、そっちに気を取られていると、足を広く開けられる。ぬちゅ、と熱が触れた、と思ったとたんに奥まで入れられて声にならない声を上げる!

唇が離れても酸素をむさぼる時間なんて与えてくれなくて、その強さに涙がにじむ。
「日本…っ」
呼ばれて、抱きしめられて、しがみつく。
いいところを強く突かれて、声が勝手に上がる。
「あ、あっ、も…!イく…っ!」
びくびく、と体が震えた。なのに、イギリスさんは止まってくれなくて。
「愛してる…っ」
低く囁かれた瞬間、中ではじけたのを感じて、意識が遠のいた。



キッチンをのぞくと、想像していた黒い頭でなく、金色が見えた。
その髪が長く、身長が低いことを確認してほっとしながら、姉さん、と声をかける。

「おはよ、ケイ」
「母さんは?」
「天岩戸。」
ああ、と小さく呟いた。部屋にこもって出てこないらしい。もともと引きこもりだったらしい母さんは、たまにこうやって、部屋から出てこなくなることがある。…まあ、たいがい父さんが原因だが。

「パパが必死になって声かけてるけど、あれはダメね。今日一日は。」
「あー…一日で済んだらいいんだけど…」
「そうなのよね〜…」
「…父さんの料理だけは勘弁…」
「そうなった場合は逃げる。私サラとベアトリクスの家連絡しとくから、」
「ルキーノとガブリエルのとこは連絡しときます。」

はあ、とため息をついて、当然のようにきゅうり切って、と仕事を振ってくる姉の手伝いのため、手を洗った。


戻る