重苦しい沈黙が二人を包む。 「……ギリス、さん」 先に声を出したのは、日本。かすれた声。 「な、何だ!?」 「…末永く、よろしくお願いします。」 きっちりと頭を下げられて、イギリスはこ、こちらこそ、よろしく頼む、と頭を下げた。 そのまま二人とも顔を上げようとしないで、しばらく時間が経って。 どちらからともなく、噴き出した。 「ふ、二人そろって何やってるんだろうな…!」 「本当に…ふふ…」 それでようやっと緊張が解けたのか、二人は笑いあって。 くすくす笑う日本の頬に手を伸ばして、イギリスは一瞬ためらった。 その、止まった手の上から、日本は手を重ねて、自分の頬に押し当てて。 「…指先が冷たいですね。緊張してます?」 「…日本、こそ。」 ちいさく笑みをこぼして、今度こそ、イギリスは日本を抱き寄せた。 きめ細やかな美しい肌。手をそっともぐりこませるように、撫でると、びく、と小さな体が震えて。 そっと下の方まで手をはわせて、ぴた、とイギリスは固まった。 「…に、日本…まさか、下着、つけてないの、か?」 「……どうしていいのか、わからなくて…。」 あの、下ははいてますから、という声が頭を素通りした。くらくらする。当たり前だが生の日本が目の前にいるという当たり前すぎる事実に、もうなんかぐわんぐわん鳴っている。倒れそうだったが、倒れたらもうプライドとかそういうものがぼろぼろになる気がしたから、必死に耐えた。 深呼吸一回。日本の着ている着物をとめている紐を解いた。 簡単に無防備になった体を、布団の上に押し倒す。 動いたせいで少し着物がめくれ上がって、なんか、それがものすごくエロいというか、ああ、もう! 「イギリス、さん?」 困惑した声を聞いて、やっと覚悟が決まった。 唇を首元に寄せる。いつもの夢なら、ここで終わってしまうけれど、今日は。 …消えない。柔らかな肌に唇が触れた。 そのまますべらせると、吐息が漏れる。 「ん…」 イギリスさん、と呼ぶ声が不安げで、顔を上げ、その頬に手を伸ばすと、その手を掴まれた。 「!」 指を絡めるようにつなぎ、きゅ、と握られて、ダメですか?って、ダメなわけがないだろう! やばい。かわいい。にやつく頬が戻らない。 手を握りかえして改めてバター色の肌に舌をはわせた。少しずらすだけで現れる、柔らかい胸を、口に含む。 大きくはないけれど形のいいそれを堪能する。握られた手に加えられる力具合からすると、右胸の方が感じるらしい。 舐めて、転がして、白い部分に吸いついて痕を残して。声が聞けないのが残念だけれど、恥ずかしげに声を耐えている日本も、それはそれで、いい。 空いた手をゆっくり下にずらしていく。 「んん…!」 腰を撫でると声が上がった。弱いらしい。 手の行き先に気づいてか、あの、と不安げな声が上がった。大丈夫だから、と笑って、唯一まとわれた下着に手をかける。 あ、と声がした。湿った感触に小さく笑み。 下着を脱がせて、直接触れると、くちゅくちゅと音がした。 途端に顔を隠してしまう日本。顔みたい、と声をかけても、首を横に振られてしまう。よほど恥ずかしいようだ。 なら仕方がない。みてない間にいろいろしよう、と片足を肩に担いだ。 口を秘部に近づける。 「や、やだっイギリスさ…!」 悲鳴のような声は、甘く噛みついた途端嬌声に変わった。甘い声がもっと聞きたくて、足を開かせ、思いのままに蹂躙した。 「いや、そ、んな…あっ、ーーーっ!」 指を浅く動かし、芽を舌で転がせば、日本の体が大きく震えた。達したらしい。声は、噛み殺したのか聞けなくて、少し残念に思う。 ふと顔を上げて、ぎょっとした。 日本がぼろぼろ涙を流していた。 「に、日本、」 「だ、て、イギリスさんが、私、嫌って言ったのに…」 「悪かった…」 だから泣きやんでくれ頼むから。そうでないと、日本が泣くなんて、俺はどうしたらいいんだ! 頬に触れ涙を拭うと、すみません、少し怖かっただけです、と呟いて泣きやんでくれた。ほっとしながら、ごめんな、と額にキス。彼女の気持ちを考えていなかった。こういうのは二人でする行為なのに。 体を離そうとすると、まだ繋いだままだった手を引かれた。 静かに目を閉じられて、その赤い唇に引き寄せられるように自分の唇を重ねる。 キスならば、(つい我慢できなくて)深いものも何度も交わしているのに、いつまで経っても慣れない日本がかわいい。 所在なさげにシーツを握る手と、繋いでいた手を自分の首へからめさせて、舌を潜り込ませれば、くしゃと頭を撫でるように引き寄せられた。もっと、と言うように。 もしかしたら違うのかもしれないがとりあえずいいように解釈することにして、舌を絡めて吸い上げる。んう、とこもった甘い声。 ずぐん、と腰に来た。 唇を離して、一度軽くキスをして、日本、と唇が触れるか触れないかぎりぎりの距離で呼んだ。 「…いい、か?」 尋ねると、美しいブラックオニキスが、まぶたの向こうに隠れる。 首をただ一度だけ、縦に振った。 腰を進めると、日本の眉が寄せられた。痛いのか、それとも苦しいのか。 日本には申し訳ないが、それでも奥まで入れる。 「あ…」 「痛くないか?」 そう尋ねると、首を横に振られた。…嘘だ。そんな苦しそうな顔して。 思いが表情に出ていたのか、痛いですけど、と彼女は呟いた。 「けど?」 「…うれしい、です。」 その気持ちの方が大きいから。そう、笑われて。 耐えられるほど、大人にはなりきれなかった。 「、悪い!」 「え、きゃ!」 日本の腰を押さえて、がつがつと突き上げる。 ひゃあん、と高い声が上がった。ほとんど悲鳴だ。けれど、それにすらぞくぞくしてしまって、苦しげに眉をひそめた日本の中を動く。 「ゃ、あんっ!」 あるところを突くと声色が変わった。見つけた、と小さく笑う。 「ここがいいのか?」 「や、だめ、はげし…っんっ!ああんっ」日本は何度もだめ、だめと繰り返すが、体は跳ね、声はどんどん高くなっていく。 収縮する中に耐えられなくなりそうで、名前を呼んだ。 「…日本。」 好きだ、愛していると囁く。わ、たしも、と途切れ途切れの声。 「…すき…」 耳元で囁かれて、かろうじてせき止めていたものが一気に決壊した。 中に注ぐのとほぼ同時に、日本も達したらしい。 震える体を抱きしめて、キスをした。 目を開けると、もうすっかり日が昇っていた。明るい中に見える、…私のものなんかとは全然違う白い肌。 ゆっくり見上げる。まだ眠りについたままで、エメラルドの瞳は見えない。 穏やかな寝顔に、ああ、私、と昨日のことを思い出した。かあ、と顔が赤くなってしまう。身じろぎするが、腰に回ったイギリスさんの力が強くて、離れられなかった。「ん…」 聞こえた声とひそめられた眉に、起こしたかな、と一瞬体に力を入れた。 「…にほん?」 眠そうな声がして、瞳が姿を現した。 すみません、起こしてしまって、と言おうとした唇をふさがれる。 リップ音をたてて、離れる唇。ぽかんと見ていると、イギリスさんは、何がうれしいのか微笑んで。 抱きしめられる。好きだ、と囁く甘い声。 一気に体温が上がった。 目を開けたら日本がいたのがなんだかうれしくて、抱き寄せてキスして好きだ、と告げたところで。 何やってんだ俺、と我に返った。 真っ赤になった日本の顔。きっと、負けず劣らず俺も赤い。 「…お、はようございます…」 「お、はよう…」 「…離して、いただけます?」 「!すまないっ!」 大慌てで手を離して後ろに下がる。 くすくすと笑われて、ようやっと落ち着いてきた。 笑ったら、イギリスさんは体を起こしてしまって。気分を損ねたかと不安になりながら、どこ行くんですか?と声をかける。 「どこって…キッチン。水、欲しいだろ」そうさらっと言われて、少しだけ恥ずかしくなった。何勘違いしているんだろう。同時に、うれしくもなった。彼はいつも優しい。 「すみません…」 「気にするな。ほかに、何かほしいものは?」 聞かれて、えっと、と考えて、考えるまでもないことに気づいた。 「あの…何か着るもの、を…」 布団に潜りなおした日本に言われて、ああそうだと思った。 自分はとりあえずバスローブを羽織ったけれど、終わった後すぐ眠ってしまった日本を起こすのが忍びなくて、そのまま布団をかぶせたから、だから日本は今も裸のはずで。 …裸? かっと治まっていた熱が復活する。 ごまかすようにききき着るものな!わかった!と大声を出して部屋を出て、勢い余って廊下で転んだ。 戻る . なあ、ロマーノ。そう呼んだスペインの笑顔にたくらんでますって書いてあって、背筋が凍った。 「…かわええ…」 「…っど変態…っ!」 思い切りにらみつけても、あかんて、かわええもん、と抱きしめられた。さら、と肌を撫でる布の感触に、悲鳴が漏れそうになった。 「…感じる?」 「当たり前だ馬鹿野郎…っ!」 だってスペインが。もうイくってときになって、あれ着て?なんて持ち出すから。着てくれたらいかせたる、なあロマーノ。うなずくだけでええから。な?ん? 余裕なんて全然ないのに。だから。うなずいてしまって。 何でこんな、と思いながら服と呼べない、その機能をまったく果たしていないそれを着て。頭に猫耳つけて。 高ぶる体が敏感に布ずれの感触を快楽に変える。そのうえ、猫耳が、カチューシャが、微妙にくるんにこすれるのが、もう、もう! 「ん、う…!」 小さな快楽が、体をくすぶらせる。もう下がすごいことになってるのはわかってる。…けど、頼れるのなんか一人しかいなくて。 「…スペインっ」 「ん。約束やもんな。」 ぎし、と押し倒された。布越しに胸を舐められて、思わず背筋をそらす。まるで押し付けるようにしてしまって、笑ったような、吐息。 「気持ちええの?」 かり、と噛み付かれて、ひゃ、と声を上げてしまった。小さくうなずく。気持ちいい。ダメだ。何も考えられなくなる! 「素直やね。ええ子。」 する、と手が下りていく。それに、思わず逃げようとしたら、逃げんでええやんと笑われた。 だって、今、本当に、すごいことなってんのに、だって! 下着越しに触れられた。ぬちゃ、と水音がして泣きそうになる。 「すご…びしょびしょやん。」 「…っ言うな、ちくしょーっ!」 強く目を閉じる。見てなんていられなかった。 下着をずり下げられる。エロい格好、なんて耳元で言われて、かっと体が火照った。 「スペイン…っ!」 咎めるためにあげた声は、何、もう我慢できひんの、なんて別の方向にとられて、でもそれも正解で、秘部を直接触れる指に、腰を押し付けるように動いてしまった。 止まらない。もう自分の意思ではどうにもできない。 ぐちゅ、と音を立てて指が入ってくる。弱いところをいきなり刺激されて、甲高い声を上げる。 「聞こえる?ほら、ぐちゃぐちゃ。」 「…っ!」 首を横に振るが、音は消えない。中をかき回されて、腰がくねる。だめだ、視界が白く染まる。 「…っつ、スペイン、も、もう…!」 「イきそう?」 こく、とうなずくと、抱き寄せられた。 胸をかまれて、それと同時に弱いところを強く刺激されて、がくがく体を震わせて達した。 は、と息を吐くと、頭を撫でられた。 カチューシャに触れられて、それが揺れてくるんにあたる。 「んんっ!」 「耳触られたら気持ちいいん?」 笑うな馬鹿、ああ、前に傾けるな馬鹿! いつもとは全然違う感覚に背筋がぞくっとしてしまう。 「…ペイン、」 涙目で見上げると、スペインが、息を飲んだのが、わかった。 「…そんな顔、反則やで…。」 何がだ、ちくしょー。口から出るはずだった言葉は、意味の無い声に変わった。 足を大きく開かれて、熱が、直接、秘部に触れる。 「入れてええ?」 聞かなくてもわかってるくせに。小さくうなずいた。我慢できそうになかったから、何度も。 ずん、と一気に奥まで貫かれた。 飛びそうになる意識。頭からカチューシャが外れた気がしたが、もうそんなのどうだってよかった。 揺さぶられる体が、落ちないようにもう感覚の無い手でスペインの体にしがみついて、快楽を追う。まだ、まだ。堕ちるときは、二人一緒に。 「あ、ああっスペイン…っ!」 「…っ、ロマーノ…っ!」 耳元で低い声がして、途端に、白い世界へ、堕ちた。 ゆさゆさ、と体を揺らされて、ルキーノはんー、後五分…と布団の中にもぐった。 「お兄ちゃん、起きて。」 イザベルの声だ。ちょっと困ったような、声。仕方がないので返事をする。 「んー…何やねん…。」 「お父さんダメっぽいから、朝ご飯。」 「…またかい…。」 「また。」 妹の声が聞いて、ため息をついて体を起こす。 先に行かせて、着替えて、廊下に出ると、こそ、とドアの隙間からのぞいているイザベルがいたから、その上から部屋をのぞきこんだ。 …ベッドの下で土下座してる父さんと、こんもりと布団の塊。 何を話しているかはあまり聞こえないけれど、父さんがとりあえず延々謝っている。 ケンカほどじゃないが、この家ではよくある光景だ。 こうなると、布団の塊、もとい母さんのご機嫌取りに父さんはかかりきりになるから、朝ご飯を自分達で作らないと食いっぱぐれる。 「…私トマト畑行ってくる。」 「ん。朝飯何かリクエストある?」 「んーと…。」 小声で話しながら、こっそりと扉を閉めた。 戻る |