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「一番かわええのはイザベルや!」
というなんともまあ親ばか丸出しなスペインのセリフで、論争は始まった。
「何言ってるんだサラとリリーに決まってるだろう?あの美しさがわからないのか?」
「美人、なのはエリだ!見ろあの端正な顔つき。世界一だぞ!」
「イザベルの方がかわええ!見てみ、あの大きな目!ふわふわでひらひらなのがもうめっちゃかわええもん!」
ぎゃいぎゃい、と言い合う中に、何やってるんだ、とあきれ顔のドイツとオーストリアがやってきて。
「世界一かわいいのはどの子かって話。」
フランスが答え、は?そんなのはベアトリクスに決まってるでしょう。と、オーストリアが返したことで、論争はさらにヒートアップして。

つまりは皆、当然うちの子が一番だと思っているわけで。
一歩引いたところで呆れて眺めていたドイツに、ドイツはどう思うんだよ、とイギリスから言われ、いや、世界一、というか、と呟いて。
「うちの家族は皆、かわいいと思っているが?」

その一言で、世界一の家族はどこだ論争が始まって、それにはドイツも加わってしまって、収拾がつかなくなった。

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ぱたり、と頬を流れたそれに、げ、やべ、とマックスとルキーノは視線を合わせた。
「さ、サラ、」
「…何でもない。顔洗ってくる。」
冷静な声。や、あの、と呼び止めるが、つかつかと歩いていってしまって。
「…やば、い?」
「な…」
泣かせるつもりなんかなかった。ただいつものようにからかって絡んで遊んでいただけで。
どうしよう、と顔を見合わせる二人の肩を、ぽん、と叩く影がひとつ。

「…で?」
低めの声に、ひ、と声を上げる。
ぎくしゃく、と二人が振り返ると、にっこりと笑顔のリリーがそこにいた。

「言い訳があるなら聞いとくけど。…僕の妹を泣かせるなんて覚悟はできてるんだろうね?」

リリー…もとい、リリアンの絶対零度の笑みに、二人は声もなく引きつった笑みを浮かべて。


「ちょ、サラ、どうしたの!?」
トイレで、泣いているサラに驚いたエリの声に答えず、ざばあ、と水を出して顔を洗い出した。
「サラ、誰に泣かされたの?」
エリが真剣に尋ねると。
「あー痛かったぁ!やー、目にゴミ入って、もう痛くて〜…」
やっととれた、とうれしそうに言われて、エリははぁ?と声を上げた。
「…誰かに泣かされたとか、」
「そんな弱くないわよ、私。」
平然とした声に、まぎらわしいのよあんたは…とエリはため息をついた。


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アメリカ主催のクリスマスパーティー、なんて。俺には全然関係なかったんだけどでも。なんとなく来てみて、思い切り後悔した。
「くそ…どいつもこいつも…」
廊下に出てため息。
まあ、簡単に言えば、家族団欒に、ひとり、が際立ってちょっと寂しくなっただけだが。

「あーあ、ひとり楽しすぎるぜー!」
怒鳴ったら、しんとした廊下に響いてよけいにむなしかった。
帰ろう、と決めて廊下を歩く。

しばらく歩いていると、向こうから小さな影。
「…あれは、」
ヴェストのとこのちびだ。姉のほう。幼い頃のイタちゃんそっくりな。たしか、名前はマリア。ふわふわした白いドレスが、とても愛らしい。
ちなみに自分の姪なのだが、それについては深く考えない。だって叔父さんとか。一気に年とったみたいだ。

さっきまでパーティー会場にいたはず。それがなんでこんなところに?
思っていたら、こっちを見たマリアが、ああー!と叫んだ。
何だ!?と思っていたらぱたぱた駆け寄ってくる。
「プロイセンさん!」
まぶしいばかりの笑顔で駆け寄ってこられて、思わず一歩引いた。
「な、何だ?」
「あ、こんばんわ!」
「お、おう」
元気な挨拶にたじろぎながら、どうした、と尋ねる。
「パーティー会場への道わかりますか!?」
迷子になっちゃって、と困った顔をされて、…それくらいなら、まあ、と戻る気のなかった部屋へ戻りだした。
隣をとてとて歩く姿に、歩調を合わせる。

「プロイセンさんは、どうしてここに?」
「帰る途中だった。」
「お仕事ですか?」
いや、ひとり楽しすぎて。
なんて言えるわけもなく、そんな感じ。と返す。

それからも、話しかけてくるのに適当に返して、歩く。
俺といるのにこんなに笑顔でいられるやつもめずらしい。
母親と瓜二つの笑顔を見て、不思議に思って。

ふと耳に入る喧噪。
見れば、すぐそこにパーティー会場の入り口。
「ついたぞ。」
「ありがとうございます!」
じゃあ、と今度こそ本当に帰りはじめて、呼び止められた。何だ、と見下ろすと、髪に挿していた花をとって、はい、と差し出してきた。
「メリークリスマス!」
ぱたた、と駆け去って、残されたのはプロイセンと花が一輪。
「…ふん。あーあ、ひとり楽しすぎるぜー」
いつものように呟いて、今度こそ帰って行くプロイセンが、楽しそうに笑っていたのは、本人も知らないこと。


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ぎゃいぎゃいとまだどの家族が一番か論争を旦那達が繰り広げる中、ドイツー、とイタリアが呼んだ。
どんなにうるさくてもその声を聞き逃すはずのないドイツが辺りを見回し、手を振るイタリアを見つけて。

「っ、イタリアーっ!!」
思い切り怒鳴った。

ヴェ、と、驚いて一歩下がったイタリアの元までだだだだと走り、自分の上着を着せる。
「なんて格好をしているんだおまえは!」

「ヴェ〜…」
似合わない?と潤んだ目で見られて、顔を赤くして逸らしてからいや似合ってはいるが。と呟く。
真っ赤な、へそ出しミニスカの、サンタのコスチュームというかなんというか、な、服を着た彼女は、もう本当に世界一かわいいのだけれど、それはそれこれはこれ。
着替えてこい、とそう言い放つと、何で?と見上げられた。
じいい、と見てくる。こういうときは、本当は、わかっているのだ。何故だめなのか。そして、その答えを俺に言わせたいのだ。

まっすぐに大きな瞳に見上げられて、まあ耐えきれるわけもなく。
細いからだを抱き寄せて、そういう格好は、と耳に囁く
「…そういう格好は、俺だけの前にしてくれ。」

独占欲、だけからくるそんなセリフを聞いて、彼女は満足したのか、だから着替えてこい、というとえへへ、はぁいと笑って、頬にキスをひとつして駆けていった。


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イタリアーっという怒鳴り声に、なんや、と振り返る。
そしたら赤い集団。
その中に、ロマーノの姿を見つけて、ほかに何も見えなくなった。
体が勝手に走り出す。
こっちに気付いたのか、何故か逃げ出したロマーノに、後ろからタックルする勢いで抱きつく!

「ロマーノぉっ!!」
「うわぁっ!」
「かーわーえーえー!ロマーノかわえええ!」
ノンスリーブのサンタ服。スカートはちょっと長めだけれど、長いブーツとか本当にかわいくて!すてきで!
「ろまぁのぉ!」
「うるせー!」
顔を真っ赤にしたロマーノが、じたばたと暴れている。ちょっと痛い。急所に綺麗に入る。痛い。でもそんなの気にならないくらい、ロマーノがかわいい!
「かわえええ!うちの奥さんはもうほんま世界一やで!」
「…っ、くそ…」

すり寄ると、やっと大人しくなってくれた。赤い肌。かわええ、と呟く。もう本当にかわいい。やばい。
でも、露出した肌が、心配になって、首筋に唇を寄せる。
むき出しの首筋に、すいついてキスマークをつける。
「!!っおい!」
暴れられて、暴れんといてや〜と呟く。逃げられないようにしっかり捕まえて、またちゅーと吸いつく。
「馬鹿スペイン!」
何しやがる!と真っ赤になって怒鳴る彼女に、やって〜と呟く。

「かわええけど心配やもん〜…」
ロマーノは俺の、と抱きしめると、馬鹿、当たり前だ、とかわいいセリフが耳に聞こえてぎゅううーと抱きしめた。


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思わず、絶句した。
「…にあわ、ないですか?」
しゅん、と上目遣いでちょっと余った袖を口元にあててとかもう、あーもう!
「…、にあ、ってる…。」
内心暴れだしたいのを必死に抑えてなんとか返すと、ありがとうございます、イギリスさんvと俺の最強の嫁は楽しげに笑った。
ふわふわの白いサンタ服。下がスカートのそれは、もう、凶悪的にかわいらしく日本に似合っていて、なんかもう何も言えなかった。顔が熱い。真っ赤な自信がある。

「なんかもう…反則だろ…。」
「そうですか?」
イタリアがみんなで着ようよ、と見つけてきたのだというそれを、楽しげに着こなした日本。こういう格好するときは、本当に楽しそうだ。普段は尻込みするくせに。
というか、今日はちょっとテンション高いかも。さっき暴れてきたせいか?今は、ふわ、と回ってみせる余裕まであるようだけれど。
やばい。かわいい。頭がくらくらする。

直視できなくて、視線をそらす。
そこにはいろんなサンタがいた。赤やら黒やら……ロマーノとかみたいな。露出多いのもちょっと見てみたかったけれど、ちょっと長い長袖も、いい。というか、白という色がいいのかもしれない。かわいい。
さっきは格好良かった。信頼して任せられる背中。それとの、ギャップもまたいい。

思っていたら、ぐい、と顔をまっすぐに戻された。
「どこ見てるんですか?」
すぐ近くに少しむっとしたような表情の日本。
化粧をしなおしたようだ。鮮やかな、イギリスさん、と動く、赤に、惹かれて。

「っ!」
小さな声を上げた日本が離れて、その瞬間にやっと、自分がキスをした、と気がついて真っ赤になった。

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フランスさん!と駆け寄ってくるカナダが、いきなりつまづいたのを見て大慌てで駆け寄る。
倒れ込む前に抱き留めて、すぐに立たせる。
「カナダ…」
ため息をつくと、ごめんなさい、と謝られた。何にため息ついたかわかってる?尋ねると、案の定首を横にふるふる。苦笑して肩に手を置いて、頼むからその格好でこけるな。と真剣に頼んだ。

赤いノンスリーブのサンタ仕様のワンピースは、非常にかわいい。ほんとうに。このままかっさらいたいくらい。
だけれど、こけると、スカートがふわり、と。さっきもヤバかった。心臓に非常に悪い。悪すぎる。

「…努力、します。でも、」
ブーツが厚底で歩きにくいんですよ、と困った表情になるカナダに、わかった、とうなずいて、指を絡めて手をつなぐ。
「フランスさん?」
「今日は、ずっとお兄さんのそばにいて。」
まったく、俺のサンタクロースは危なっかしくて目を離せないよ。そう、額にキスをしたら、彼女ははにかんだように、はい、とうなずいて、もうかわいくてかわいくて、是非ともこのままお持ち帰りしたいと思った。




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