仏加家編 パパなんて、だいっきらい! 「……はあああ…。」 「ど、どうしたんですか、フランスさん…。」 「…カナ…俺もう生きていけない…。」 「はい!?」 ぎゅうぎゅう、と抱きしめられて、カナダは目を白黒させた。また、ため息。…なんだかわからないけど、ものすごく落ち込んでるみたい。 「どうしたんですか…?」 「…リリーとサラが。」 「あの子たちが?」 うながすと、またため息。 「…パパなんて、だいっきらいって…。」 まるで地獄を見た、と言わんばかりの声色に、あーあー…と苦笑して。 「…というかフランスさん。自分でいろいろやってたくせに、覚えてないんですか?」 「え?」 くすくすくす。笑って、顔を上げた、ほんとに半泣きの目に、あっち、と指をさしてみせる。 「カレンダー。」 「え?……あ。」 そう、今日は。 「四月一日よ、パパ。」 「気づくの遅い!」 カレンダーの隣の出入り口に、楽しげに笑った双子の姿。 「パパ、だーいっきらい!」 2人で声をそろえて抱きついてくる娘達に、おまえらはもう…と本当に困り果てた顔で、フランスさんは笑った。 英日家編 パパなんて、大きらい! そう大声で言ったら。 「ああ。俺も嫌いだ。」 後ろを向いたままのパパにさらっと言われて、すごくショックを受けた。 …だって、からかうだけのつもりだったの。だって、今日はエイプリルフールだから。嫌いって言ったらどんな顔するかな?って。それだけだったのに。なのに。 泣きそうになってしまう。だって、嫌いなわけないのに。嘘なのに。私大好きなのに! パパは私のこと嫌いなんだ! 「…う、」 もうかなしくてかなしくて、うつむいたら、エリ、と呼ばれた。 顔を上げると、とんとん、と机を叩く指先。 その先にあるのは。 「…あ。」 去年プレゼントした、置くタイプのカレンダー。 …それと、後ろを向いたままの、パパの、真っ赤な耳! 「…今日は、エイプリルフールだから、きらい、であってるだろ?」 大人をからかおうとするからだ、と言われて、もう、パパのいじわる!とうれしくて泣きそうになりながら抱きしめた。 墺洪家編 お父様なんて、きらいです。 「…そう、ですか。」 そう言って、お父様は立ち上がる。…反応がない。…少しつまらない、かな。と思って。 その途端、彼の手からばらばらと譜面が落ちた。 「あ、と?」 拾おうとして、がん、と机に頭をぶつけて。 「お、お父様!?」 うずくまる彼に慌てて駆け寄ったら。 「え、あ、いえ、大丈夫、大丈夫ですよ…。」 立ち上がろうとして足をすべらせて、尻餅をついたお父様に、全然大丈夫じゃないじゃないですか、と思って。 「…嘘です。」 「は、はい?」 「今日は、四月一日ですよ?」 お父様。そう笑ってみせたら、ぽかん、とした顔をしたあと、深く深くため息。 もうその顔がおかしくって、くすくす笑ってしまう。 「まったく…たちが悪い嘘ですね…。」 「ごめんなさい。…大好きです、お父様。…心の底から。」 そう言ってみせると、お父様はまったく、とつぶやいて、頭を撫でてくれた。 西ロマ家 お父さんなんて、だいきらい! 「っっっっ!俺が悪かったーっ!」 いきなり聞こえた叫び声に、何事だと居間をのぞく。 「おい、どうし」 「うわああああん!俺が悪かった!何したんかわからんけど俺が悪かったー!」 やから嫌いなんて言わんといて〜! 泣き喚くスペインに抱きしめられて、困惑顔のイザベルの姿。 「ちょ、おとうさ、」 「ごめんなさいいいー!」 「おとうさんってば!」 「うわああん!」 …聞いちゃいないなスペインのやろー…。 呆れて、近くまでいき、スペインの頭を叩く。 「いった!」 「イザベルが話せなくなってるだろーが、この馬鹿!」 呆れて言えば、う、う、やって、やってー…と泣きそうな…いやもう泣き出している。 「…どうしたんだよ、イザベル?」 「…エイプリル、フール…。」 「……ああ。」 だから、嫌い、か。 けど、もうぼろぼろ涙を流しているこの親ばかは、説明したって聞きそうにない。 「イザベル。素直に言ってやらないと、これ泣き止まないぞ。」 「素直!素直にってなに!俺のどこが嫌いとか」 「うるせー!」 ぎゃいぎゃい言い出したのを黙らせて、ほら、とうながせば、顔を赤くしたイザベルは。 「…お父さん、大好き…。」 「っっっっ!!!イザベルー!」 俺も大好きやでー!かわええええ! 途端にぎゅううと抱きしめて叫びだしたスペインに、どっちでも一緒だったか、とため息をついた。 独伊家 パパなんて、だいっきらい! にこにこと笑顔で言われて、一瞬心臓が凍りつきそうになって、けれど、その楽しそうな笑顔と、ふと思い出した今日の日付に、深くため息をついた。 「…エイプリルフールか…。」 「ぴんぽーん。」 びっくりした?ときらきらした目で言われて、心臓が止まるかと思った…と素直に答える。 「えへへ、どっきり成功〜。」 「あんまりこういう嘘をつかないでくれ…。」 心臓に悪い、と言ったら、ごめんなさい、と笑顔のまま言われた。…この笑顔を見てしまうと、なんでも許してしまいそうになる。甘いな、と苦笑。 「パパ、だいきらい、の反対!大好き!」 「…ありがとう。」 くしゃくしゃと頭を撫でると、笑って、やめてよーといいながら駆けて行った。 ため息。…本当に、心臓が止まるかと思った。 「どーいつv」 語尾にハートマークつけて近づいてきたイタリアの口を、手で塞ぐ。 「もが。」 「…娘の真似をしようとするなおまえは…。」 なんでばれたの。って顔をするな。…さっきのマリアと同じ、いたずらする子供の顔してたくせに。手を離せば、むーとむくれる。 「…いいじゃんかあ。せっかくのエイプリルフールなんだから。」 きらいのき、の形になった口を、もう一度手で塞ぐ。 「…嘘でも、聞きたくない。」 きらいだ、なんて。 そう言ったら、うれしそうに顔を緩めて、ドイツ大好きー、と抱きついてきた。 戻る |