好きな人に好きというのは、とても勇気がいることな気がする。 ましてや、キスとか。 そういうところ、平然とできてしまう友人が、うらやましくもあるのだけれど。 結婚記念日。忘れていたことはない。毎年、プレゼントくれたり、あげたり。 今年は、子供達から、プレゼントがあった。 『二人で行ってきなよ。』 『僕たちなら平気ですから。』 追い出されるように押し出されて、久しぶりにふたりきりでデート。 着てしまえば何でも似合う彼は、とても格好良くて。 後ろから追いかける。着物で歩くのも、どうかと思ったので久しぶりのワンピース。 ヒールが高いのにもようやっと慣れてきた。 ふつう、デート、なんていうからには手をつないで歩いたり、するのだろうけど。 背中を追いかける。少し照れているらしい。赤い耳。 「…イギリス、さん。」 小さく呼んだ。聞こえてないらしい。宿題は難しいみたいですよ、エリ。心の中で小さく呟く。 『宿題!ほっぺたにでもちゅーしてきなさい!あと好きって言ってきなさい!』 びし、と指を突きつけて言った娘を思いだして苦笑。 「イギリス、さん。」 小さく呼んで、 「何だ?」 振り返るとは思っていなくてちょっとびっくりした。 「…、いえ。」 なんでも。そう笑って、そうか、と呟くのを聞いて、歩く。 今度は隣を歩いてくれた。背の高い姿を眺めながら歩く。 「…何だ?」 「いいえ。」 呟いてからふと思いついて、言う。 「かっこいいなあ私の旦那様はと思いまして。」 かっと耳が赤くなった。いつもどおりの過剰反応にくすくす笑う。 「…笑うなよ」 「す、すみません…」 笑いを納めて、微笑んでみせる。 と、ぐ、と手を引かれた。つながれる手。 しっかりつかまれて、少しうれしくなる。 「…イギリスさん」 「だから何だ?」 「好きですよ」 そういう、気遣いとかできるとこ。 言ったら、彼はがばっとこっちを見て。 もう首まで真っ赤なその表情がおかしくておかしくて。 あはははは、と声を立てて笑ったら、むっとした顔になって笑うな、と言う代わりに、唇を唇で塞がれた。 戻る . 会議場でママ、と呼ばれた気がして振り返る。 と、そこには、見慣れた子供たちの姿! 「エリ、ケイ!」 どうしたんですか?と声をかけると、見てよこれ、と言われた。 見せられたのは封筒。何か書いてある。 「Don't forget…忘れるな?」 「思い切りリビングに置きっぱなしだったんですけどね。」 「あー…」 この字は、イギリスさんだ。 どこにいますかね、と子供たちと探すと、ほどなくして見つけられた。 イギリスさん、と声をかけそうになって、口を閉じる。 ドイツさんと真剣な顔して話し合う姿。 す、と背筋の伸びた、立ち姿。とか。真剣な表情とか。厳しいはきはきした声、とか。 そうだ、最初は、こういうところに惹かれたんだ。外にでたばかりの私も、対等に、そのまっすぐな瞳を向けてくれたから。そう、思い出した。 「パパって、ああしてるとかっこいいわよね…」 「…たまに抜けてますけどね。」 これとか。と忘れるなと書いておきながら忘れた封筒を掲げて、三人で笑う。 「パパ!」 エリが大声を出すと、イギリスさんが振り向いた。 「!エリ!」 「はい!Don't forget!」 渡された封筒に、あああっ!と声を上げるのがおもしろくて、ケイと顔を見合わせて笑った。 戻る |