2021.08.11;22.08.13 ←    人為的地球温暖化は“国連気候変動枠組条約で人為的に決めた地球温暖化”<イチオシ  IPCC第6次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約 日本語訳<New
IPCC第6次報告書 第I作業部会(自然科学的根拠)政策決定者向け要約 日本語訳訳注1
翻訳:井上雅夫訳注2 (2021.08.11-18; 12.07)
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目 次
起草者等
はじめに
A. 気候の現状
B. 起こりうる気候の将来
C. リスク評価と地域適応のための気候情報
D. 将来の気候変動の制限
訳注
(訳注1)IPCC第6次報告書は第5次とは全く違う
(訳注3)産業革命以降の温暖化は温度計のたった1目盛り<オススメ
(訳注4)問題点だらけのホッケースティック曲線が大復活
(訳注5)人為的CO2温暖化を人為的エアロゾルで冷やすシミュレーション<オススメ
(訳注6)気候モデルのシミュレーションは何W/m2で加熱したら何℃になるかの計算<オススメ
(訳注7)IPCCは現実直視のシナリオで21世紀末のシミュレーションを
(訳注8)「可能性が低くインパクトの大きいストーリー展開」で恐怖を煽る報告書<オススメ
(訳注9)気候インパクトドライバーって何?
(訳注10)これが人為的地球温暖化の正体だ!<イチオシ


起草者:
Richard P. Allan(英国), Paola A. Arias(コロンビア), Sophie Berger(フランス/ベルギー), Josep G. Canadell(オーストラリア), Christophe Cassou(フランス), Deliang Chen(スウェーデン), Annalisa Cherchi(イタリア), Sarah L. Connors(フランス/イギリス), Erika Coppola(イタリア), Faye Abigail Cruz(フィリピン), Aïda Diongue-Niang(セネガル), Francisco J. Doblas-Reyes (スペイン) Hervé Douville(フランス), Fatima Driouech(モロッコ), Tamsin L. Edwards(イギリス), François Engelbrecht(南アフリカ), Veronika Eyring(ドイツ), Erich Fischer(スイス), Gregory M. Flato(カナダ), Piers Forster(イギリス), Baylor Fox-Kemper(アメリカ合衆国), Jan S. Fuglestvedtt(ノルウェー), John C. Fyfe(カナダ), Nathan P. Gillett(カナダ), Melissa I. Gomis(フランス/スイス) , Sergey K. Gulev(ロシア連邦), José Manuel Gutiérrez(スペイン), Rafiq Hamdi(ベルギー), Jordan Harold(イギリス), Mathias Hauser(スイス) Ed Hawkins(イギリス), Helene T. Hewitt(イギリス), Tom Gabriel Johansen(ノルウェー), Christopher Jones(イギリス), Richard G. Jones(イギリス), Darrell S. Kaufman(アメリカ合衆国), Zbigniew Klimont(オーストリア/ポーランド), Robert E. Kopp(アメリカ合衆国), Charles Koven(アメリカ合衆国), Gerhard Krinner(フランス/ドイツ、フランス), June-Yi Lee(韓国), Irene Lorenzoni(イギリス/イタリア), Jochem Marotzke(ドイツ), Valérie Masson-Delmotte(フランス), Thomas K. Maycock(アメリカ合衆国), Malte Meinshausen(オーストラリア/ドイツ), Pedro M.S. Monteiro(南アフリカ), Angela Morelli(ノルウェー/イタリア), Vaishali Naik(アメリカ合衆国), Dirk Notz(ドイツ), Friederike Otto(イギリス/ドイツ), Matthew D. Palmer(イギリス), Izidine Pintoト(南アフリカ/モザンビーク), Anna Pirani (イタリア), Gian-Kasper Plattner(スイス), Krishnan Raghavan(インド), Roshanka Ranasinghe(オランダ/スリランカ、オーストラリア), Joeri Rogelj(イギリス/ベルギー), Maisa Rojas(チリ), Alex C. Ruane(アメリカ合衆国), Jean-Baptiste Sallée(フランス), Bjørn H. Samset(ノルウェー), Sonia I. Seneviratne(スイス), Jana Sillmann(ノルウェー/ドイツ), Anna A. Sörensson(アルゼンチン), Tannecia S. Stephenson(ジャマイカ), Trude Storelvmo(ノルウェー), Sophie Szopa(フランス), Peter W. Thorne(アイルランド/イギリス), Blair Trewin (Australia), Robert Vautard(フランス), Carolina Vera(アルゼンチン), Noureddine Yassaa(アルジェリア), Sönke Zaehle(ドイツ), Panmao Zhai(カナダ), Xuebin Zhang(カナダ), ,Kirsten Zickfeld(カナダ/ドイツ)

寄稿者:
Krishna M. AchutaRao(インド), Bhupesh Adhikary(ネパール), Edvin Aldrian(インドネシア), Kyle Armour(アメリカ合衆国), Govindasamy Bala(インド/アメリカ合衆国), Rondrotiana Barimalala(南アフリカ/マダガスカル) ,Nicolas Bellouin(イギリス/フランス), William Collins(イギリス), William D. Collins(アメリカ合衆国), Susanna Corti (イタリア), Peter M. Cox(イギリス), Frank J. Dentener(EU /オランダ), Claudine Dereczynski(ブラジル), Alejandro Di Luca(オーストラリア、カナダ/アルゼンチン), Alessandro Dosio (イタリア), Leah Goldfarb(フランス/アメリカ合衆国), Irina V. Gorodetskaya(ポルトガル/ベルギー,ロシア連邦), Pandora Hope (オーストラリア) Mark Howden (オーストラリア) Akm Saiful Islam(バングラデシュ), Yu Kosaka(日本), James Kossin(アメリカ合衆国), Svitlana Krakovska(ウクライナ), Chao Li(カナダ), Jian Li(カナダ), Thorsten Mauritsen(ドイツ/デンマーク, Sebastian Milinski(ドイツ), Seung-Ki Min(韓国), Thanh Ngo Duc(ベトナム), Andy Reisinger(ニュージーランド), Lucas Ruiz(アルゼンチン), Shubha Sathyendranath(イギリス/カナダ,インドの海外市民), Aimée B. A. Slangen(オランダ), Chris Smith(イギリス), Izuru Takayabu(日本), Muhammad Irfan Tariq(パキスタン), Anne-Marie Treguier(フランス), Bart van den Hurk(オランダ), Karina von Schuckmann(フランス/ドイツ), Cunde Xiao(カナダ)

文書の日付:2021年8月7日17:00 CEST

この政策決定者向け要約は、次のように引用されるべきです:
IPCC、2021:政策決定者向け要約。気候変動2021:自然科学的根拠。
気候候変動に関する政府間パネル第6次報告書への第I作業部会の貢献[Masson-Delmotte, V., P. Zhai, A. Pirani, S. L. Connors, C. Pean, S. Berger, N. Caud, Y. Chen, L. Goldfarb, M. I. Gomis, M. Huang, K. Leitzell, E. Lonnoy, J.B.R. Matthews, T. K. Maycock, T. Waterfield, O. Yelekci, R. Yu and B. Zhou (eds.)].Cambridge University Press. In Press.
 
この文書は、最終原稿編集の対象です。


はじめに

この政策決定者向け要約(SPM)は、IPCCの第6次報告書(AR6)1への第I作業部会(WGI)の貢献の主要な知見を示しています(第I作業部会は気候変動の自然科学的根拠に関する作業部会)。この報告書は、2013年のIPCC第5次報告書(AR5)への第I作業部会の貢献とAR6サイクルの2018-2019 IPCC特別報告書2に基づいており、気候科学からのその後の新しい証拠が組み込まれています3

このSPMは、気候の現在の状態の理解のハイレベルの要約を提供します。これには、気候の変化と人間の影響の役割、起こりうる気候の将来に関する知識の状態、地域やセクターに関連する気候情報、人間が引き起こした気候変動の制限などが含まれます。

科学的理解に基づいて、主要な知見は、事実の記述として定式化するか、IPCCで調整された言語を使用して示された、評価された確信のレベルに関連付けることができます4
 
各主要な知見の科学的根拠は、報告書の章のセクション、および技術要約(以下TS)に統合して示されており、これらは中括弧{}で示されています。AR6 WGI Interactive Atlasは、WGI参照地域全体で、これらの主要な統合された知見の調査を容易にし、気候変動情報をサポートします5


A. 気候の現状

AR5以降、観測に基づく推定値と古気候アーカイブからの情報が改善されたことにより、気候システムの各コンポーネントとその現在までの変化の包括的な見解がもたらされています。新しい気候モデルのシミュレーション、新しい分析、および複数の証拠を組み合わせた方法により、極端な天候や気候を含む、より広範囲の気候変数に対する人間の影響についての理解が深まっています。このセクション全体で考慮される期間は、観測結果、古気候アーカイブ、および査読済み研究の入手可能性により異なります。

A.1 人間の影響が大気、海、陸を温暖化したことは疑う余地がない<unequivocal>。大気、海洋、雪氷圏、生物圏の広範囲にわたって急速な変化が生じています。{2.2、2.3、Cross-Chapter Box2.3、3.3、3.4、3.5、3.6、3.8、5.2、5.3、6.4、7.3、8.3、9.2、9.3、9.5、9.6、Cross-Chapter Box 9.1}図SPM.1図SPM.2

A.1.1 1750年頃以降に観測された、十分に混合された温室効果ガス(GHG)濃度の増加が、人間の活動によって引き起こされたことは疑う余地がありません。2011年(AR5で報告された測定値)以降、濃度は大気中で増加し続け、2019年には二酸化炭素(CO2)で410ppm、メタン(CH4)で1866ppb、一酸化二窒素(N2O)で332ppbに達しました6。陸と海は、過去60年間、地域差はありますが、人間の活動によるCO2排出量のほぼ一定の割合(世界全体では年間約56%)を吸収しています(高い確信度)7。{2.2、5.2、7.3、TS.2.2、Box TS.5}

A.1.2 最近の4つの10年間のそれぞれは、1850年以降、それ以前のどの10年間よりも連続して温暖化しました。21世紀の最初の20年間(2001-2020年)の世界平均表面温度8は、1850-1900年9より0.99 [0.84-1.10]℃高かった。世界平均表面温度は、2011ー2020年は1850-1900年よりも1.09 [0.95から1.20]℃高く、海上(0.88 [0.68から1.01]℃)よりも陸地(1.59 [1.34から1.83]℃)で大きく上昇しました。AR5以降の地球の表面温度の推定された上昇は、主に2003ー2012年以降のさらなる温暖化によるものです(+0.19 [0.16から0.22]℃)。さらに、方法論の進歩と新しいデータセットは、AR6の温暖化の更新された推定値に約0.1℃貢献しました10

A.1.3 1850-1900年から2010-2019年11までの人為的な全地球表面温度上昇の可能性が高い範囲は0.8℃から1.3℃であり、最良の推定値は1.07℃です。十分に混合されたGHGは1.0℃から2.0℃の温暖化に寄与し、他の人間の要因(主にエアロゾル)は0.0℃から0.8℃の冷却に寄与し、自然の要因は地球の表面温度を-0.1℃から0.1℃変化させ、内部変動により-0.2℃から0.2℃変化した可能性があります。1979年以降、十分に混合されたGHGが対流圏温暖化の主な要因12であった可能性が非常に高く、1979年から1990年代半ばにかけて、人為的な成層圏オゾン層破壊が下部成層圏の冷却の主な要因であった可能性が極めて高い。{3.3、6.4、7.3、Cross-Section Box TS.1、TS.2.3}図SPM.2

A.1.4  陸域の世界平均降水量は、1950年以降増加している可能性があり、1980年代以降は増加率が速い(確信度は中程度)。20世紀半ば以降、観測された降水量の変化のパターンには人間の影響が寄与した可能性があり、地表近くの海洋塩分の観測された変化のパターンには人間の影響が寄与した可能性が極めて高い。中緯度の嵐の軌跡は、1980年代以降、両方の半球で極方向にシフトしている可能性があり、傾向に顕著な季節性があります(中程度の確信度)。南半球では、人間の影響が、南半球の夏に密接に関連する温帯低気圧<extratropical jet>の極方向へのシフトに寄与した可能性が非常に高い。{2.3、3.3、8.3、9.2、TS.2.3、TS.2.4、Box TS.6}

A.1.5  人間の影響は、1990年代以降の氷河の世界的な後退と、1979-1988年から2010-2019年の間に北極海の海氷面積が減少した主な要因である可能性が非常に高い(9月に約40%、3月に約10%)。1979年から2020年にかけて、南極の海氷域では、地域的に反対の傾向と大きな内部変動のために、有意な傾向はありませんでした。1950年以降、人間の影響が北半球の春の積雪量の減少に寄与した可能性が非常に高い。過去20年間に観測されたグリーンランド氷床の表面融解に人間の影響が寄与した可能性が非常に高い、しかし南極氷床の質量損失に対する人間の影響については中程度に合意された限られた証拠しかありません。{2.3、3.4、8.3、9.3、9.5、TS.2.5}

A.1.6 1970年代以降、地球の上部海洋(0-700 m)が温暖化したことはほぼ確実であり、人間の影響が主な要因である可能性が極めて高い。人間が引き起こしたCO2排出が、表面の外洋の現在の地球規模の酸性化の主な推進力であることはほぼ確実です。20世紀半ば以降、多くの海洋上層部で酸素レベルが低下したという高い確信があり、人間の影響がこの低下に寄与したという中程度の確信があります。{2.3、3.5、3.6、5.3、9.2、TS.2.4}

A.1.7 世界平均海面は1901年から2018年の間に0.20 [0.15から0.25] m上昇しました。海面上昇の平均速度は1901年から1971年の間に1.3 [0.6から2.1] mm yr-1であり、1971年から2006年の間に1.9 [0.8から2.9] mm yr-1上昇し、2006年から2018年の間に3.7 [3.2から4.2] mm yr-1上昇しています(高い確信度)。少なくとも1971年以降、人間の影響がこれらの増加の主な要因である可能性が非常に高い。{2.3、3.5、9.6、Cross-Chapter Box 9.1、Box TS.4}

A.1.8 1970年以降の陸域生物圏の変化は、地球温暖化と一致しています:気候帯<climate zones>は両方の半球で極方向にシフトしており、北半球の中高緯度において1950年代以降、成長期<the growing season>は平均して10年ごとに最大2日長くなっています(高い確信度)。
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図SPM.1:世界平均温度変化の歴史と最近の温暖化の原因訳注3)(訳注4
図a):1850-1900年に対する、10年ごとに平均化された古気候アーカイブから再構築された(灰色の実線、1-2000年)および直接観測された(黒の実線、1850ー2020)世界平均表面温度の変化。左側の縦棒は、現在の間氷期(完新世)において約6500年前に発生した、少なくとも過去10万年間の最も暖かい複数世紀の推定温度(非常に可能性の高い範囲)を示しています。約125,000年前の最後の間氷期は、気温がより高い時期の次の最新の候補です。これらの過去の温暖期は、ゆっくりとした(数千年の)軌道変動によって引き起こされました。白い斜線のある灰色の陰影は、温度再構成の可能性が非常に高い範囲を示しています。
図b):1850-1900年に対する年平均の過去170年間の世界平均表面温度の変化(黒線)、人間と自然の両方の要因(茶色)と自然要因のみ(太陽と火山活動、緑)に対する温度応答のCMIP6気候モデルシミュレーション(Box SPM.1参照)と比較している。色付きの実線はマルチモデルの平均を示し、色付きの陰影はシミュレーションにおける可能性が非常に高い範囲を示しています。(温暖化への評価された寄与については、図SPM.2参照してください)。
{2.3.1、3.3、Cross-Chapter Box 2.3、Cross-Section Box TS.1、Figure 1a、TS.2.2}


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図SPM.2:1850-1900年に対して2010-2019年に観測された温暖化への評価された寄与訳注5
図a):観測された地球温暖化(世界平均表面温度の上昇)とその可能性が非常に高い範囲。{3.3.1、Cross-Chapter Box 2.3}
図b):気候モデルと観測からの情報を統合する帰属研究<attribution studies>からの証拠。図には、人間の影響の合計に起因する温度変化、十分に混合された温室効果ガス濃度の変化、エアロゾルによる他の人間の要因、オゾンと土地利用の変化(土地利用の反射率)、太陽と火山の要因、および気候の内部変動が示されています。ひげは可能性が高い範囲を示します。{3.3.1}
図c):放射強制力と気候感度の評価からの証拠。 図は、温室効果ガス、エアロゾル、およびそれらの前駆物質の放出;土地利用の変化(土地利用の反射率と灌漑);および飛行機雲を含む、人間の影響の個々の要素からの温度変化を示しています。ひげは非常に可能性の高い範囲を示しています。推定値は、大気への直接放出と、もしあれば、他の気候要因への影響の両方からなります。エアロゾルについては、(放射による)直接効果と(雲との相互作用による)間接効果の両方が考慮されています。{6.4.2,7.3}

A.2 気候システム全体にわたる最近の変化の規模と、多くの側面の気候システムの現状は、何世紀にもわたって何千年にもわたって前例のないものです。{Cross-Chapter Box 2.1、2.2、2.3、5.1}図SPM.1

A.2.1 2019年、大気中のCO2濃度は、少なくとも200万年のどの時点よりも高く(高い確信度)、CH4とN2Oは、少なくとも80万年のどの時点よりも高かった(非常に高い確信度)。1750年以降、CO2(47%)とCH4(156%)の濃度の増加は少なくとも過去80万年にわたる氷期と間氷期の間の自然な数千年の変化をはるかに超えており、N2O(23%)の増加も同様です (非常に高い確信度)。{2.2、5.1、TS.2.2}
 
A.2.2 世界平均表面温度は、1970年以降、少なくとも過去2000年間、他のどの50年間よりも速く上昇しました(高い確信度)。直近の10年間(2011ー2020年)の温度は、約6500年前13の直近の複数世紀の温暖期の気温を上回っています[1850-1900年に対して0.2℃から1℃](中程度の確信度)。それ以前では、次の最も最近の温暖期は約125,000年前で、そのときの複数世紀の温度[1850-1900年に対して0.5℃から1.5℃]が直近の10年間の観測と重なっています(中程度の確信度)。{Cross-Chapter Box 2.1、2.3、Cross-Section Box TS.1}図SPM.1

A.2.3 2011ー2020年において、北極海の年間平均海氷面積は、少なくとも1850年以来の最低レベルに達しました(高い確信度)。夏の終わりの北極海の海氷面積は、少なくとも過去1000年間のどの時点よりも小さかった(中程度の確信度)。1950年代以来、世界のほぼすべての氷河が同期して後退しており、氷河の後退の世界的な特質は少なくとも過去2000年間は前例のないものです(中程度の確信度)。{2.3、TS.2.5}

A.2.4  世界平均海面は、1900年以降、少なくとも過去3000年間でどの先行する世紀よりも速く上昇しています(高い確信度)。世界の海洋は、最後の退氷移行期<the last deglacial transition>の終わり(約11,000年前)以来より前世紀にわたって急速に温暖化しています(中程度の確信度)。表面外洋のpHの長期的な上昇は、過去5,000万年にわたって発生し(高い確信度)、最近の数十年のような低い表面外洋のpHは、過去200万年では珍しい(確信度が中程度)。 {2.3、TS.2.4、Box TS.4}


A.3 人間が引き起こした気候変動は、地球上のすべての地域ですでに多くの極端な天候や気候に影響を及ぼしています。熱波、大雨、干ばつ、熱帯低気圧のような極端な変化が観測された証拠および特にそれらの人間の影響への帰属の証拠がAR5以降強化されています。{2.3、3.3、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、Box 8.1、Box 8.2、Box 9.2、10.6、11.2、11.3、11.4、11.6、11.7、11.8、11.9、12.3}(図SPM.3

A.3.1 1950年代以降、ほとんどの陸域で極端な高温(熱波を含む)がより頻繁になり、より激しくなっており、極端な低温(寒波を含む)は頻度が低く、深刻度が低くなっているのはほぼ確実で、人間により誘発された気候変動が、これらの変化の主な要因14であることの確信度は高い。過去10年間に観察されたいくつかの最近の極端な暑さは、気候システムへの人間の影響なしに発生する可能性は非常に低いでしょう。海洋熱波の頻度は1980年代から約2倍になり(高い確信度)、少なくとも2006年以降、人間の影響がそれらのほとんどに寄与している可能性が非常に高い。  {Box 9.2、11.2、11.3、11.9、TS.2.4、TS.2.6、Box TS.10}図SPM.3

A.3.2 1950年代以降、傾向分析に十分な観測データがあるほとんどの陸域で大雨の頻度と強度が増加しており、人為的な気候変動が主な要因である可能性があります(高い確信度)。人間が引き起こした気候変動は、土地の蒸発散量の増加16(中程度の確信度)により、一部の地域で農業および生態学的干ばつ15の増加に貢献しています。{8.2、8.3、11.4、11.6、11.9、TS.2.6、Box TS.10}図SPM.3

A.3.3 1950年代から1980年代にかけての世界の陸域モンスーン降水量の減少17は、部分的には人為的な北半球のエアロゾル放出に起因しますが、それ以降の増加は、GHG濃度の上昇と、十年から数十年の内部変動(中程度の確信度)に起因しています。南アジア、東アジア、西アフリカでは、GHG放出による温暖化によるモンスーン降水量の増加は、20世紀にわたる人為的なエアロゾル放出による冷却によるモンスーン降水量の減少によって打ち消されました(高い確信度)。1980年代以降の西アフリカのモンスーン降水量の増加は、一部にはGHGの影響の増大と、ヨーロッパおよび北アメリカでの人為的なエアロゾル放出の冷却効果の低下によるものです(中程度の確信度)。{2.3、3.3、8.2、 8.3、8.4、8.5、8.6、Box 8.1、Box 8.2、10.6、Box TS.13}

A.3.4  大きい(カテゴリー3-5)熱帯低気圧の発生の世界的な割合は過去40年間で増加した可能性があり、北太平洋西部の熱帯低気圧がピーク強度に達する緯度は北にシフトした可能性が非常に高い。これらの変化は、内部変動だけでは説明できません(中程度の確信度)。すべてのカテゴリーの熱帯低気圧の頻度の長期的(数十年から百年)な傾向に対する確信度は低い。イベント帰属研究と物理的理解は、人為的な気候変動が熱帯低気圧に関連する大雨を増加させることを示していますが(高い確信度)、データの制約<data limitations>により、地球規模での過去の傾向の明確な検出は阻止されています<inhibit>。{8.2、11.7、Box TS.10}

A.3.5 1950年代以降、人間の影響により、複合的な極端なイベント18の可能性が高まった可能性があります。これには、地球規模での同時の熱波と干ばつの頻度の増加(高い確信度);すべての人が住む大陸のいくつかの地域での火災の天候<fire weather>(中程度の確信度);いくつかの場所での複合洪水(中程度の確信度)が含まれます。{11.6、11.7、11.8、12.3、12.4、TS.2.6、Table TS.5、Box TS.10}
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各六角形は、IPCC AR6WGI参照領域の1つに対応します
IPCC AR6 WGI参照地域:北アメリカNWN(北アメリカ北西部)、NEN(北アメリカ北東部)、WNA(北アメリカ西部)、CNA(北アメリカ中央部)、ENA(北アメリカ東部)、中央アメリカNCA(中央アメリカ北部)、SCA(中央アメリカ南部)、CAR(カリブ海)、南アメリカNWS(南アメリカ北西部)、NSA(南アメリカ北部)、NES(南アメリカ北東部)、SAM(南アメリカモンスーン)、SWS(南アメリカ南西部)、SES(南アメリカ南東部)、SSA(南アメリカ南部)、ヨーロッパGIC(グリーンランド/アイスランド)、NEU(北ヨーロッパ)、WCE(西および中央ヨーロッパ)、EEU(東ヨーロッパ)、MED(地中海)、アフリカMED(地中海)、SAH(サハラ)、WAF(西アフリカ)、CAF(中央アフリカ)、NEAF(北東アフリカ)、SEAFWSAF(南アフリカ西部)、ESAF(南アフリカ東部)、MDG(マダガスカル)、アジアRAR(ロシア北極圏)、WSB(西シベリア)、ESB(東シベリア)、RFE(ロシア極東)、WCA(中央アジア西部)、ECA(中央アジア東部)、TIB(チベット高原)、EAS(東アジア)、ARP(アラビア半島)、SAS(南アジア)、SEA(東南アジア)、オーストラレーシアNAU(北オーストラリア)、CAU (中央オーストラリア)、EAU(東オーストラリア)、SAU(南オーストラリア)、NZ(ニュージーランド)、小島嶼CAR(カリブ海)、PAC(太平洋小島嶼)。

図SPM.3:地域別の観測された変化の評価と原因
IPCC AR6 WGI居住地域がおおよその地理的位置で同じサイズの六角形として表示されます(地域の頭字語の凡例を参照)。すべての評価は、地域全体としておよび1950年代から現在までに関して行われます。異なる時間スケールまたはよりローカルな空間スケールで行われた評価は、図に示されているものとは異なる場合があります。各図の色は、観察された変化に関する評価の4つの成果を表しています。白と薄い灰色の縞模様の六角形は、地域全体の変化のタイプの一致度が低い場合に使用され、灰色の六角形は、地域全体の評価を妨げるデータや文献が限られている場合に使用されます。他の色は、観察された変化に少なくとも中程度の確信度があることを示しています。これらの観察された変化に関する人間の影響の確信度は、傾向の検出と帰属とイベントの帰属に関する文献の評価に基づ いており、ドットの数で示されます:高い確信度場合は3ドット、確信度が中程度の場合は2ドット、確信度が低い場合は1ドット(黒ドット:限られた合意、白ドット:限られた証拠)です。

図a)極端な暑さの場合、証拠は主に1日の最高気温に基づく指標の変化から導き出されます。さらに、他の指標(熱波の持続時間、頻度、強度)を使用した地域研究も使用されます。赤い六角形は、観測された極端な高温の増加に少なくとも中程度の確信度がある領域を示します。
図b)大雨の場合、証拠は主に、世界的および地域的研究を使用した1日または5日の降水量に基づく指数の変化から引き出されます。緑の六角形は、観測された大雨の増加に少なくとも中程度の確信度がある地域を示しています。 
図c)農業的および生態学的干ばつは、 総カラム土壌水分の観察およびシミュレートされた変化に基づいて評価され、表面土壌水分、水収支(降水量から蒸発散量を差し引いたもの)の変化に関する証拠、および降水量と大気蒸発散量によって引き起こされる指標によって補完されます。黄色の六角形は、このタイプの干ばつの観察された増加に少なくとも中程度の確信がある地域を示し、緑の六角形は、農業的および生態学的干ばつの観察された減少に少なくとも中程度の確信がある地域を示します。

表TS.5は、すべての地域で、この図に示されているもの以外に、観察された変化の範囲が広いことを示しています。SSAは、この図に示されている計量基準で観測された変化を表示しない唯一の領域ですが、観測された平均気温の上昇、霜の減少、および海洋熱波の増加によって影響を受けていることに注意してください。
{11.9、
Table TS.5、Box TS.10、Figure 1、Atlas 1.3.3、Figure Atlas .2}

A.4 気候プロセス、古気候の証拠、および放射強制力の増加に対する気候システムの応答に関する知識の向上により、 AR5と比較して範囲が狭い3℃の平衡気候感度の最良の推定値が得られている。{2.2、7.3、7.4、7.5、Box 7.2、Cross-Chapter Box 9.1、9.4、9.5、9.6}

A.4.1 1750年と比較して2019年に2.72 [1.96から3.48] W m-2の人為的放射強制力が気候システムを暖めました。この温暖化は主にGHG濃度の増加によるものであり、エアロゾル濃度の増加による冷却によって部分的に減少しています。放射強制力はAR5と比較して0.43W m-2(19%)増加し、そのうち0.34 W m-2は2011年以降のGHG濃度の増加によるものです。残りは、科学的理解の向上とエアロゾル強制力評価の変更(濃度の低下とその計算の改善を含む)によるものです(高い確信度)。{2.2、7.3、TS.2.2、TS.3.1} 

A.4.2 人為的な正味の正の放射強制力は、気候システムに追加のエネルギー(加熱)の蓄積を引き起こしますが、表面の温暖化に応じて宇宙へのエネルギー損失が増加することによって部分的に減少します。観測された気候システムの平均加熱率は、1971年から2006年19の期間の0.50 [0.32から0.69] W m-2から2006-2018年20の期間の0.79 [0.52から1.06] W m-2に増加しました(高い確信度)。海洋温暖化は気候システムの加熱の91%を占め、陸域温暖化、氷の喪失、大気温暖化はそれぞれ約5%、3%、1%を占めています(高い確信度)。 {7.2、Box 7.2、TS.3.1}

A.4.3  気候システムの加熱は、陸地での氷の喪失と海洋温暖化による熱膨張により、世界平均海面上昇を引き起こしました。熱膨張は1971ー2018年の間の海面上昇の50%を説明しましたが、氷河からの氷の喪失は22%、氷床は20%、陸の貯水量の変化は8%でした。氷床の喪失率は、1992年ー1999年と2010ー2019年の間に4倍に増加しました。合わせて、氷床と氷河の質量損失は、2006ー2018年の間に世界平均海面上昇の主な原因でした(高い確信度)。  {Cross-Chapter Box 9.1、9.4、9.5、9.6} 

A.4.4 平衡気候感度は、気候が放射強制力にどのように反応するかを推定するために使用される重要な量です。複数の一連の証拠21に基づくと、平衡気候感度の可能性が非常に高い範囲は、2℃(高い確信度)から5℃(中程度の確信度)の間です。AR6で評価された最良の推定値は3℃であり、2.5℃から4℃の範囲である可能性が高い(高い確信度)のに対し、AR5では1.5℃から4.5℃であり、最良の推定値は得られませんでした。{7.4、7.5、TS.3.2} 

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B. 起こりうる気候の将来

AR5で評価されたよりも広範囲の温室効果ガス(GHG)、土地利用、大気汚染物質の将来に対する気候応答を調査するために、この報告書全体で5つの新しい例示的な排出シナリオのセットが一貫して検討されます。この一連のシナリオは、気候システムの変化に関する気候モデルの予測を推進します。これらの予測は、太陽活動と火山からのバックグラウンド強制力を説明しています。21世紀の結果は、特に明記されていない限り、1850-1900年に対して、短期(2021-2040年)、中期(2041-2060年)、および長期(2081-2100年)で提供されます。

Box SPM.1:シナリオ、気候モデルおよび予測

Box SPM.1.1:この報告書は、文献に見られる気候変動の人為的要因の将来の進行の可能性の範囲をカバーする5つの例示的なシナリオ22に対する気候応答を評価します。それらは図SPM.4に示すように、2015年に始まり、CO2排出量がそれぞれ2100年と2050年までに現在のレベルから約2倍になるGHG排出量が多いシナリオと非常に多いシナリオ(SSP3-7.0とSSP5-8.5)、CO2排出量は世紀半ばまで現在のレベル付近にとどまるGHG排出量が中程度のシナリオ(SSP2-4.5)、非常に低いおよび低いGHG排出量とCO2排出量が2050年頃またはその後に正味ゼロに減少し、その後にさまざまなレベルの正味の負のCO2排出量23が続くシナリオ(SSP1-1.9およびSSP1 -2.6)が含まれます。排出量は、社会経済的仮定<socio-economic assumptions>、気候変動の緩和のレベル、およびエアロゾルと非メタンオゾン前駆物質については大気汚染の制御、に応じてシナリオ間で異なります。代替の仮定は、同様の排出量と気候応答をもたらす可能性がありますが、社会経済的仮定と個々のシナリオの実現可能性または可能性は評価の一部ではありません。{TS.1.3、1.6、Cross-Chapter Box 1.4}図SPM.4

Box SPM.1.2: この報告書は、世界気候研究計画の結合モデル相互比較プロジェクトフェーズ6(CMIP6)に参加している気候モデルの結果を評価します。これらのモデルには、以前のIPCC報告書で検討された気候モデルと比較して、物理的、化学的、生物学的プロセスの新しくより優れた表現、およびより高い解像度が含まれています。これにより、気候変動の最も大規模な指標の最近の平均状態や、気候システム全体の他の多くの側面のシミュレーションが改善されました。観測とのいくつかの違いは、例えば、地域の降水パターンに残っています。この報告書で評価されたCMIP6の過去に関するシミュレーションでは、ほとんどの過去の期間にわたって、観測から0.2℃以内のアンサンブル平均世界平均表面温度変化となっており、観測された温暖化は、CMIP6アンサンブルの可能性が非常に高い範囲内にあります。ただし、一部のCMIP6モデルは、観測された温暖化の評価された非常に可能性の高い範囲より上または下のいずれかの温暖化をシミュレートしています。{1.5、Cross-Chapter Box 2.2、3.3、3.8、TS.1.2、Cross-Section Box TS.1}(図SPM.1 b図SPM2

Box SPM.1.3: この報告書で検討されているCMIP6モデルは、CMIP5モデルよりも気候感度の範囲が広く、AR6は、複数の証拠に基づいて、非常に可能性の高い範囲を評価しました。またこれらのCMIP6モデルは、CMIP5およびAR6が評価した最良の推定値よりも高い平均気候感度を示しています。CMIP5と比較して高いCMIP6気候感度値は、CMIP6において約20%大きい雲のフィードバック増幅に起因する可能性があります。{Box7.1、7.3、7.4、7.5、TS.3.2}
 
Box SPM.1.4:IPCC報告書で初めて、世界平均表面温度、海洋温暖化、海面の将来の変化の評価は、気候感度のAR6の評価だけでなく、過去のシミュレートされた温暖化に基づく観測制約をマルチモデル予測に組み合わせることによって構築されています。他の量については、予測を制約するためのそのようなロバストな方法はまだ存在しません。それにもかかわらず、多くの変数のロバストな予測地理的パターンは、考慮されるすべてのシナリオに共通であり、地球温暖化レベルが到達するタイミングとは無関係に、地球温暖化の特定のレベルで識別できます。{1.6、Box4.1、4.3、4.6、7.5、9.2、9.6、Cross-Chapter Box 11.1、Cross-Section Box TS.1}

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図SPM.4:この報告書で使用されている5つの例示的なシナリオについて、気候変動の主要な強制因子の将来の人為的排出と、強制因子のグループによる温暖化の寄与訳注6)(訳注7

5つのシナリオは、SSP1-1.9、SSP1-2.6、SSP2-4.5、SSP3-7.0、およびSSP5-8.5。

図a)2015ー2100年の期間にわたる人為的年間排出量。示されているのは、すべてのセクターからの二酸化炭素(CO2)(GtCO2/年)(左のグラフ)と、シナリオで考慮された3つの主要な非CO2強制因子のサブセット:メタン(CH4、MtCH4/年、右上のグラフ)、一酸化二窒素(N2O、MtN2O/年、右中央のグラフ)および二酸化硫黄(SO2、MtSO2/年、右下のグラフ、
図bの人為的エアロゾルに寄与します)の排出軌跡

図b)人為的強制因子のグループおよびシナリオによる温暖化の寄与は、1850-1900年に対する2081-2100年の世界平均表面温度の変化(℃)として示され、これまでに観測された温暖化も示されています。各シナリオの棒グラフは、地球温暖化の合計(℃;合計棒)(表SPM.1参照)と、CO2(CO2棒)、非CO2温室効果ガス(非CO2GHG棒;十分に混合された温室効果ガスとオゾンからなる)の変化による温暖化の寄与(℃)と、他の人為的強制因子(エアロゾルと土地利用棒;人為的エアロゾル、土地利用と灌漑の変化による反射率の変化、および飛行機雲;個々の強制因子のこれまでの温暖化への貢献について図SPM.2の図c参照)からの正味の冷却を表します。1850ー1900年に対して2010ー2019年に観測された温暖化の最良の推定値(図SPM.2の図a参照)は、合計棒の暗い部分で示されています。図bの温暖化への寄与は、合計棒について表SPM.1で説明されているように計算されています。他の棒については、強制因子のグループによる寄与は、気候感度と放射強制力の評価に依存する世界平均表面温度の物理的気候エミュレーターを使用して計算されています。

{Cross-Chapter Box 1.4、4.6、Figure 4.35、6.7、Figure 6.18、6.22および6.24、Cross-Chapter Box 7.1、7.3、Figure 7.7、Box TS.7、Figure TS.4およびTS.15}

B.1 考慮されるすべての排出シナリオの下で、世界平均表面温度は少なくとも世紀半ばまで上昇し続けるだろう。今後数十年でCO2やその他の温室効果ガス排出量が大幅に削減されない限り、21世紀には1.5℃と2℃の地球温暖化を超えるだろう。{2.3、Cross-Chapter Box 2.3、Cross-Chapter Box 2.4、4.3、4.4、 4.5}図SPM.1図SPM.4図SPM.8表SPM.1Box SPM.1

B.1.1 1850-1900年に対して2081-2100年で平均された世界平均表面温度は、検討された非常に低いGHG排出シナリオ(SSP1-1.9)の下で1.0℃から1.8℃高く、中間シナリオ(SSP2-4.5)で2.1℃から3.5℃高く、非常に高いGHG排出シナリオ(SSP5-8.5)24では3.3℃から5.7℃高くなる可能性が非常に高い。世界平均表面温度が1850年から1900年よりも2.5℃以上高く維持された最後の時代は300万年以上前でした(中程度の確信度)。 {2.3、Cross-Chapter Box 2.4、4.3、4.5、Box TS.2、Box TS.4、Cross-Section Box TS.1}{2.3, Cross-Chapter Box  2.4, 4.3, 4.5, Box  TS.2, Box  TS.4, Cross-Section Box  TS.1} (表SPM.1)  
表SPM.1検 討された5つの例示的な排出シナリオに対する選択された20年間の複数の証拠に基づいて評価された世界平均表面温度の変化。1850ー1900年の期間の平均世界平均表面温度に対する温度差が℃で報告されています。これには、AR5の参照期間1986-2005年に観測された過去の温暖化の改訂された評価(AR6ではAR5よりも0.08 [-0.01から0.12]℃高くなっている(脚注10参照))が含まれています。最近の基準期間1995-2014年に対する変化は、およそ0.85℃(1850-1900年から1995-2014年までに観測された温暖化の最良の推定値)を差し引くことによって計算できます。
{Cross-Chapter Box 2.3、4.3、4.4、Cross-Section Box TS.1}
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B.1.2  複数の証拠の評価に基づくと、この報告書で検討されている高いおよび非常に高いGHG排出シナリオ(それぞれ、SSP3-7.0、SSP5-8.5)では、1850ー1900年に対して2℃の地球温暖化を21世紀中に超えるであろう。中間シナリオ(SSP2-4.5)では、2℃の地球温暖化を超える可能性は極めて高い。非常に低いGHG排出シナリオと低いGHG排出シナリオでは、2℃の地球温暖化を超える可能性は極めて低い(SSP1-1.9)27、または超える可能性は低い(SSP1-2.6)25。中期(2041-2060年)に2℃の地球温暖化レベルを超えることは、非常に高いGHG排出シナリオ(SSP5-8.5)で発生する可能性が極めて高く、高いGHG排出シナリオ(SSP3-7.0)で発生する可能性があり、中間GHG排出シナリオ(SSP2-4.5)26では発生しない可能性が高い。{4.3、Cross-Section Box TS.1}(表SPM.1図SPM.4Box SPM.1

B.1.3 1850-1900年に対して1.5℃の地球温暖化は、この報告書で検討されている中、高、および非常に高いシナリオ(それぞれ、SSP2-4.5、SSP3-7.0、およbSSP5-8.5)の下で、21世紀中に超えるであろう。5つの例示的なシナリオでは、短期(2021-2040年)に、1.5℃の地球温暖化レベルは、非常に高いGHG排出シナリオ(SSP5-8.5)で超える可能性が非常に高く、中間および高いGHG排出シナリオ(SSP2-4.5およびSSP3-7.0)では超える可能性があり、低GHG排出シナリオ(SSP1-2.6)では超えない可能性が高く、非常に低GHG排出シナリオ(SSP1-1.9)では到達しない可能性が高い。さらに、非常に低いGHG排出シナリオ(SSP1-1.9)の場合、一時的なオーバーシュートで1.5℃超える地球温暖化は0.1℃以下であり、21世紀の終わりにかけて、世界平均表面温度が1.5℃未満に戻る可能性が高くなる。 {4.3、Cross-Section Box TS.1}表SPM.1図SPM.4

B.1.4 任意の1年間の世界平均表面温度は、実質的な自然変動28により、長期的な人為的傾向の上または下で変動する可能性があります。地球の表面温度が特定のレベル、たとえば1850ー1900年に対して1.5℃または2℃を超える個々の年が発生したとしても、この地球温暖化レベルに到達したことを意味するものではありません29。{Cross-Chapter Box 2.3、4.3、4.4、Box 4.1、Cross-Section Box TS.1}表SPM.1図SPM.1図SPM.8

B.2 気候システムの多くの変化は、地球温暖化の増加に直接関係して大きくなります。それらには、極端な高温、海洋熱波、大雨の頻度と強度の増加、一部の地域での農業的および生態学的干ばつ、激しい熱帯低気圧の割合、北極海の海氷、積雪、永久凍土の減少が含まれます。{4.3、4.5、4.6、7.4、8.2、8.4、Box 8.2、9.3、9.5、Box 9.2、11.1、11.2、11.3、11.4、11.6、11.7、11.9、Cross-Chapter Box 11.1、12.4、12.5、Cross-Chapter Box 12.1、Atlas.4、Atlas.5、Atlas.6、Atlas.7、Atlas.8、Atlas.9、Atlas.10、Atlas.11}図SPM.5図SPM.6図SPM.8

B.2.1  陸面が海面よりも暖かくなり続けることはほぼ確実です(おそらく1.4から1.7倍)。北極圏が世界平均表面温度よりも暖かくなり続けることはほぼ確実であり、地球温暖化の2倍を超えることに高い確信度があります。{2.3、4.3、4.5、4.6、7.4、11.1、11.3、11.9、12.4、 12.5、Cross-Chapter Box 12.1、Atlas.4、Atlas.5、Atlas.6、Atlas.7、Atlas.8、Atlas.9 、Atlas.10、Atlas.11、Cross-Section Box TS.1、TS.2.6}図SPM.5

B.2.2 地球温暖化がさらに増加するたびに、極端な変化はさらに大きくなり続けます。たとえば、地球温暖化が0.5℃増えるごとに、熱波(非常に可能性が高い)、大雨(高い確信度)、一部の地域での農業的および生態学的干ばつ30(高い確信度)の強度および頻度において、認識可能な増加を引き起こします。一部の地域では、0.5℃の地球温暖化が増えるごとに、気象学的干ばつの強度と頻度に識別可能な変化が見られ、減少よりも増加を示す地域が多く見られます(確信度は中程度)。一部の地域では、地球温暖化が進むにつれて、水文学的干ばつの頻度と強度の増加が大きくなります(確信度は中程度)。1.5℃の地球温暖化でも、追加の地球温暖化を伴う観測記録では前例のないいくつかの極端なイベントの発生が増加するでしょう。頻度の予測される変化率は、まれなイベントほど高くなります(高い確信度)。{8.2、11.2、11.3、11.4、11.6、11.9、Cross-Chapter Box 11.1、Cross-Chapter Box 12.1、TS.2.6}図SPM.5図SPM.6

B.2.3  いくつかの中緯度準乾燥地帯と南米モンスーン地域では、最も暑い日の気温の上昇が最も高く、地球温暖化の速度の約1.5から2倍になると予測されています(高い確信度)。北極圏では、最も寒い日の気温の上昇が最も高く、地球温暖化の約3倍の速度になると予測されています(高い確信度)。地球温暖化が進むにつれ、特に熱帯海洋と北極圏では、海洋熱波の頻度が増加し続けます(高い確信度)。{Box9.2、11.1、11.3、11.9、Cross-Chapter Box 11.1、クロス-チャプターBox 12.1、12.4、TS.2.4、TS.2.6}図SPM.6

B.2.4  地球温暖化が進むと、ほとんどの地域で大雨が激しくなり、頻繁になる可能性が非常に高い。地球規模では、1℃の地球温暖化ごとに、極端な日降水量が約7%増加すると予測されています(高い確信度)。強烈な熱帯低気圧の割合(カテゴリー4-5)と最も強烈な熱帯低気圧のピーク風速は、地球温暖化の増加とともに地球規模で増加すると予測されています(高い確信度)。{8.2、11.4、11.7、11.9、Cross-Chapter Box11.1、Box TS.6、TS.4.3.1}図SPM.5図SPM.6

B.2.5  永久凍土の融解、季節的な積雪、陸氷および北極海氷の喪失をさらに増幅する、追加の温暖化が予測されています(高い確信度)。北極圏は、この報告書で検討されている5つの例示的なシナリオの下で、2050年の前に少なくとも1回、9月に実質的に海氷がなくなる可能性があります31。南極の海氷の予測される減少については、確信度は低い。{4.3、4.5、7.4、8.2、8.4、Box 8.2、9.3、9.5、12.4、Cross-Chapter Box 12.1、Atlas.5、Atlas.6、Atlas.8 、Atlas.9、Atlas.11、TS.2.5}図SPM.8

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図SPM.5:年間平均表面温度、降水量、および土壌水分の変化
図a)観測された年平均表面温度変化とシミュレートされた年平均表面温度変化の比較。左の地図は、地球温暖化(℃)1℃あたり1850-2020年の期間に観測された年間平均表面温度の変化を示しています。ローカル(つまり、グリッドポイント)で観測された年間平均表面温度変化は、1850ー2020年の期間に世界平均表面温度に対して線形に回帰します。観測された温度データは、最大のカバレッジと最大の水平解像度を持つデータセットであるBerkeley Earthからのものです。線形回帰は、対応するグリッドポイントのデータが利用可能なすべての年に適用されます。回帰法は、完全な観測時系列を考慮に入れ、それによってグリッドポイントレベルでの内部変動の役割を減らすために使用されました。白は、時間範囲が100年以下であり、信頼できる線形回帰を計算するには短すぎる領域を示します。右の地図はモデルシミュレーションに基づいており、1℃の地球温暖化レベルでの年間マルチモデル平均シミュレーション温度の変化を示しています(1850-1900 年に対する20年間の平均地球表面温度変化)。カラーバーの両端にある三角形は、範囲外の値、つまり、指定された制限を超える値または下回る値を示します。

図b)
1.5℃、2℃、および4℃の地球温暖化レベル(1850ー1900年に対する20年間の世界平均表面温度変化)でのシミュレートされた年間平均温度変化(℃)、図c)降水量変化(%)、および図d)全カラム土壌水分変化(年々変動の標準偏差)。シミュレートされた変化は、対応する地球温暖化レベルでのCMIP6マルチモデル平均変化(土壌水分については中央値変化)に対応します。つまり、図a)の右側のマップと同じ方法です。
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図c)では、乾燥領域での高い正のパーセント変化は、小さな絶対変化に対応する可能性があります。図d)では、単位は1850ー1900年の間の土壌水分の経年変動の標準偏差です。標準偏差は、干ばつの深刻度を特徴付けるのに広く使用されている指標です。平均土壌水分の1標準偏差による予測される減少は、1850ー1900年の間に約6年に1回発生した干ばつに典型的な土壌水分条件に対応します。図d)では、ベースライン条件の経年変動がほとんどない乾燥地域の大きな変化は、小さな絶対変化に対応する可能性があります。カラーバーの両端にある三角形は、範囲外の値、つまり、指定された制限を超える値または下回る値を示します。5つの例示的なシナリオ(SSP1-1.9、SSP1-2.6、SSP2-4.5、SSP3-7.0、およびSSP5-8.5)のいずれかで対応する温暖化レベルに達したすべてのモデルの結果が平均化されます。3℃の地球温暖化レベルでの年間平均気温と降水量の変化のマップは、セクション4.6の図4.31と図4.32にあります。

グリッドセルレベルでのモデル一致のレベルを示すハッチングを含む図b)、c)、およびd)の対応するマップは、それぞれ図4.31、4.32、および11.19にあります;CC-Box Atlas.1で強調表示されているように、グリッドセルレベルのハッチングは、集約された信号が小規模な変動の影響を受けにくく、ロバスト性が向上する、より大きな空間スケール(AR6参照領域など)では有益ではありません。

{TS.1.3.2、Figure TS.3、Figure TS.5、Figure 1.14、4.6.1、Cross-Chapter Box  11.1、Cross-Chapter Box  Atlas.1}

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図SPM.6:陸地での極端な高温、陸地での極端な降水量、乾燥地域での農業的および生態学的干ばつの強度と頻度の予測される変化
 
予 測される変化は、1℃、1.5℃、2℃、および4℃の地球温暖化レベルで示され、人間の影響を受けない気候を表す1850ー1900年を基準にしています。この図は、さまざまな地球温暖化レベルの下での基準期間(1850ー1900年)からの10年または50年の極端なイベントの頻度と強度の増加を示しています。

極端な高温は、1850-1900年の基準期間中に平均して10年に1回(10年イベント)または50年に1回(50年イベント)を超えた陸地の1日の最高気温として定義されます。極端な降水イベントは、1850年から1900年の参照期間中に10年に1回平均して超えた陸地での1日の降水量として定義されます。農業的および生態学的な干ばつイベントは、1850-1900年の基準期間の10パーセンタイル未満の総カラム土壌水分の年平均として定義されます。これらの極値は、モデルグリッドボックススケールで定義されます。極端な高温と極端な降水量については、世界の陸地の結果が示されています。農業的および生態学的干ばつについては、乾燥地域のみの結果が示されています。これは、CMIP6の1850-1900年の基準期間に対して、2℃の温暖化レベルでの農業的/生態学的干ばつの予測される増加に少なくとも中程度の信頼があるAR6地域に対応します。これらの地域には、北アメリカ西部、北アメリカ中央部、中央アメリカ北部、中央アメリカ南部、カリブ海、南アメリカ北部、南アメリカ北東部、南アメリカモンスーン、南アメリカ南西部、南アメリカ南部、西および中央ヨーロッパ、地中海、南アフリカ西部、南アフリカ東部、マダガスカル、東オーストラリア、南オーストラリアが含まれます
(カリブ海はフルランドグリッドセルの数が小さすぎるため数値の計算には含まれていません)。非乾燥地域では、干ばつの深刻度が全体的に増減することはありません。CMIP5マルチモデルアンサンブルの農業的および生態学的干ばつの変化の予測は、アフリカやアジアの一部を含む一部の地域では、CMIP6の予測とは異なります。気象的および水文学的干ばつの予測される変化に関する評価は、第11章に記載されています。{11.6、11.9}

「頻度」セクションで は、毎年がドットで表されます。暗い点は極端なしきい値を超えた年を示し、明るい点はしきい値を超えていない年を示します。値は、さまざまなSSPシナリオでのCMIP6のシミュレーションからのマルチモデルアンサンブルに基づく中央値(太字)とそれぞれの5ー95%の範囲に対応します。一貫性を保つために、暗いドットの数は切り上げられた中央値に基づいています。「強度」セクションでは、CMIP6のシミュレーションからのマルチモデルアンサンブルに基づく中央値とその5ー95%の範囲が、それぞれ暗い棒グラフと明るいバーとして表示されます。極端な高温と極端な降水量の強度
の変化は、摂氏とパーセンテージで表されます。農的および生態学的干ばつについては、強度の変化は、年間の土壌水分の標準偏差の割合として表されます。
{11.1、11.3、11.4、11.6、Figure 11.12、Figure 11.15、Figure 11.6、Figure 11.7、Figure 11.18}

B.3 継続的な地球温暖化は、世界水循環(その多様性、世界のモンスーン降水および湿潤および乾燥イベントの過酷さを含む)をさらに強化すると予測されています。{4.3、4.4、4.5、4.6、8.2、8.3、8.4、8.5、Box 8.2、11.4、11.6、11.9、12.4、Atlas.3}図SPM.5図SPM.6

B.3.1 AR5 以降、地球の水循環は地球の気温が上昇するにつれて激化し続ける(高い確信度)という証拠が強化されており、降水量と地表水の流れは、季節内(高い確信度)および年ごとにほとんどの陸地で変動しやすくなると予測されています(中程度の確信度)。世界平均年間降水量は、1995年から2014年に比べて2081-2100年までに、非常に低いGHG排出シナリオ(SSP1-1.9)では0-5%、中間のGHG排出シナリオ(SSP2-4.5)では1.5-8%、非常に高いGHG排出シナリオ(SSP5-8.5)では1-13%増加すると予測されています(可能性の高い範囲)。降水量は、高緯度、赤道太平洋、モンスーン地域の一部で増加すると予測されていますが、SSP2-4.5、SSP3-7.0、SSP5-8.5においては、亜熱帯の一部と熱帯の限られた地域で減少すると予測されています(非常に可能性が高い)。季節平均降水量の検出可能な増加または減少を経験する地域は、増加すると予測されています(中程度の確信度)。 世界的に雪が支配的な地域では、夏の流れを犠牲にして流れのピークが高くなるため、春の融雪の早期開始には高い確信度があります。{4.3、4.5、4.6、8.2、8.4、Atlas.3、TS.2.6、Box  TS.6、TS.4.3}図SPM.5

B.3.2  より暖かい気候は、洪水や干ばつに関連する非常に湿ったおよび非常に乾燥した天候や気候イベントや季節を強めますが(高い確信度)、これらのイベントの場所と頻度は、モンスーンや中緯度の嵐の軌跡など、地域の大気循環の予測される変化によって異なります。エルニーニョ南方振動に関連する降雨変動は、SSP2-4.5、SSP3-7.0およびSSP5-8.5シナリオにおいて、21世紀の後半までに増幅されると予測されており、その可能性は非常に高い。{4.3、4.5、4.6、8.2、8.4、8.5、11.4、11.6、11.9、12.4、TS.2.6、TS.4.2、Box TS.6}図SPM.5図SPM.6

B.3.3  モンスーンの降水量は、地球規模で中長期的に増加すると予測されており、特にサヘル西部を除く南アジア、東南アジア、東アジア、西アフリカで増加すると予測されています(高い確信度)。モンスーンシーズンは、南北アメリカと西アフリカでの開始が遅れ(高い確信度)、西アフリカでの終了が遅れると予測されています(確信度が中程度)。{4.4、4.5、8.2、8.3、8.4、Box 8.2、Box TS.13}

B.3.4  南半球の夏の中緯度の嵐の軌跡とそれに関連する降水量の予測される南へのシフトおよび強化は、高いGHG排出シナリオ(SSP3-7.0、SSP5-8.5)の下で長期的には可能性が高いが、短期的には成層圏のオゾンの回復がこれらの変化を打ち消す可能性が高い(高い確信度)。北太平洋での嵐の継続的な極方向へのシフトとその降水量については中程度の確信度がありますが、北大西洋の嵐の軌跡で予測される変化については低い確信度です。{TS.4.2、 4.4、4.5、8.4、TS.2.3}

B.4 CO2排出量が増加するシナリオでは、海洋および陸地の炭素吸収源は、大気中のCO2の蓄積を遅らせる効果が低くなると予測されています。{4.3、5.2、5.4、5.5、5.6}(図SPM.7

B.4.1 自然の陸と海の炭素吸収源は、絶対的には、CO2排出量が少ないシナリオに対して高いシナリオの場合は、より大量のCO2を吸収すると予測されますが、効果は低下します、つまり、陸と海によって吸収される排出量の割合は累積CO2排出量の増加とともに減少します。これにより、大気中に残留する排出CO2の割合が高くなると予測されています(高い確信度)。{5.2、5.4、Box TS.5}図SPM.7

B.4.2 モデルの予測に基づくと、今世紀の大気中のCO2濃度を安定させる中間シナリオ(SSP2-4.5)では、21世紀の後半に陸と海が吸収するCO2の割合が減少すると予測されています(高い確信度)。非常に低いおよび低いGHG排出シナリオ(SSP1-1.9、SSP1-2.6)では、21世紀にCO2濃度がピークに達し低下しますが、大気中のCO2濃度の低下に応じて、陸と海が占める炭素の量が少なくなり(高い確信度)、SSP1-1.9の下で2100年までに弱い正味の排出源に変わります(中程度の確信度)。正味の負の排出がないシナリオ32(SSP2-4.5、SSP3-7.0、SSP5-8.5)では、2100年までに世界の陸と海の吸収源が排出源になる可能性はほとんどありません。{4.3、5.4、5.5、5.6、Box TS.5、TS.3.3}

B.4.3 気候変動と炭素循環の間のフィードバックの大きさは大きくなりますが、CO2排出量が多いシナリオでは不確実になります(非常に高い確信度)。ただし、気候モデルの予測では、2100年までの大気中のCO2濃度の不確実性は、排出シナリオ間の違いによって支配されていることが示されています(高い確信度)。湿地からのCO2およびCH4フラックス、永久凍土層の融解、野火など、気候モデルにまだ完全には含まれていない温暖化に対する追加の生態系応答は、大気中のこれらのガスの濃度をさらに増加させます(高い確信度)。{5.4、Box TS.5、TS.3.2}

6Is_f7.jpg
図SPM.7:5つの例示的なシナリオの下で、2100年までに陸と海の吸収源によって吸収される累積的な人為的CO2排出量

5つの例示的なシナリオ(SSP1-1.9、SSP1-2.6、SSP2-4.5、SSP3-7.0、およびSSP5-8.5)の下で陸と海の吸収源によって吸収される累積的な人為的二酸化炭素(CO2)排出量が、濃度駆動型シミュレーションにおけるCMIP6気候モデルによって1850年から2100年までシミュレートされました。陸と海の炭素吸収源は過去、現在、未来の排出量に反応するため、1850年から2100年までの累積吸収源をここに示します。歴史的期間(1850-2019年)の間に観測された陸と海による吸収は1430 GtCO2(排出量の59%)でした。

棒グラフは、2100年における1850年から2100年の間の累積人為的CO2排出量(GtCO2)、大気中に残る部分(灰色の部分)、陸と海に吸収される部分(色の付いた部分)の予測量を示しています。ドーナツグラフは、2100年に陸と海の吸収源によって吸収され、大気中に残っている累積的な人為的CO2排出量の割合を示しています。%の値は、2100年における陸と海の吸収源によって吸収された累積的な人為的CO2排出量の割合を示します。2100年に陸と海の吸収源を合わせたものによって吸収された累積的な人為的CO2排出量の割合を示します。全体的な人為的炭素排出量は、CMIP6シナリオデータベースからの正味の世界土地利用排出量を、規定のCO2濃度で実行された気候モデルから計算された他のセクター排出量に加算することによって計算されます33。1850年以降の陸と海のCO2吸収量は、土地の純生態群系生産性<net biome productivity>から計算され、土地利用変化の排出量と純海洋CO2フラックスを加算することにより、土地利用変化によるCO2損失を補正します。
{Box TS.5、Box TS.5、Figure 1、5.2.1、Table 5.1、5.4.5、Figure 5.25}


B.5 過去および将来の温室効果ガス排出による多くの変化、特に海、氷床、世界の海面の変化は、何世紀から何千年もの間不可逆的です。{Cross-Chapter Box 2.4、2.3、4.3、4.5、4.7、5.3、9.2、9.4、9.5、9.6、Box 9.4}図SPM.8

B.5.1 1750年以降の過去のGHG排出量により、世界の海洋は将来の温暖化が約束されています(高い確信度)。21世紀の残りの期間、海洋温暖化は1971ー2018年の変化の2ー4倍(SSP1-2.6)から4ー8倍(SSP5-8.5)の範囲である可能性があります。複数の証拠に基づいて、上部海洋成層化(実質的に確実)、海洋酸性化(実質的に確実)、および海洋脱酸素化(高い確信度)は、将来の排出量に依存する速度で、21世紀に増加し続けるでしょう。変化は、世界の海水温(非常に高い確信度)、深海の酸性化(非常に高い確信度)、および脱酸素化(中程度の確信度)の100年から1000年の時間スケールで不可逆的です。{4.3、4.5、4.7、5.3、9.2、TS.2.4}図SPM.8

B.5.2  山岳氷河と極地氷河は、数十年または数世紀にわたって融解し続けることが約束されています(非常に高い確信度)。永久凍土層の融解後の永久凍土層の炭素の損失は、世紀のタイムスケールで不可逆的です(高い確信度)。21世紀にわたって氷が失われ続けることは、グリーンランド氷床についてはほぼ確実であり、南極氷床については可能性があります。グリーンランド氷床からの総氷損失は、累積排出量とともに増加するという高い確信があります。高いGHG排出シナリオの下で何世紀にもわたって南極氷床からの氷の損失を大幅に増加させるという、可能性が低くインパクトが大きい結果(深い不確実性を特徴とする氷床の不安定性プロセスに起因し、場合によっては転換点<tipping points>を伴う)の証拠は限られています34。{4.3、4.7、5.4、9.4、9.5、Box 9.4、Box TS.1、TS.2.5}

B.5.3  世界平均海面が21世紀にわたって上昇し続けることはほぼ確実です。1995ー2014年に対して、2100年までに可能性ある世界平均海面上昇は、非常に低いGHG排出シナリオ(SSP1-1.9)では0.28ー0.55m、低いGHG排出シナリオ(SSP1-2.6)では0.32ー0.62m、中程度のGHG排出シナリオ(SSP2-4.5)では0.44-0.76m、非常に高いGHG排出シナリオ(SSP5-8.5)では0.63-1.01mであり、2150年まででは非常に低いシナリオ(SSP1-1.9)では0.37-0.86m、低いシナリオ(SSP1-2.6)では0.46ー0.99m、中間シナリオ(SSP2-4.5)では0.66-1.33m、非常に高シナリオ(SSP5-8.5)では0.98-1.88mです(中程度の確信度)35。 可能性が高い範囲を超えた世界平均海面上昇(非常に高いGHG排出シナリオ(SSP5-8)で2100年までに2m、2150年までに5mに近づく平均海面上昇(確信度が低い))は、氷床プロセスの不確実性が深いため、除外することはできません。{4.3、9.6、Box 9.4、Box TS.4}図SPM.8

B.5.4  長期的には、深海の温暖化と氷床の融解が続くため、海面は何世紀から何千年もの間上昇することが約束されており、何千年もの間上昇し続けるでしょう(高い確信度)。今後2000年間で、世界の平均海面は、温暖化が1.5℃に制限されている場合は約2から3m、2℃に制限されている場合は2から6m、5℃の温暖化で19から22m上昇し、継続します。その後の数千年にわたって上昇します(確信度が低い)。数千年にわたる世界平均海面上昇の予測は、過去の温暖気候期間中の再構築されたレベルと一致しています:地球の気温が1850-1900年よりも0.5℃ー1.5℃高い可能性が非常に高かった約125,000年前は現在よりも5-10m高かった可能性があります;およそ300万年前、地球の気温が2.5℃ー4℃高かったときは、おそらく5ー25m高かった可能性が非常に高い(中程度の確信度)。
{2.3、Cross-Chapter Box 2.4、9.6、Box TS.2、Box TS.4、Box TS.9}

6Is_f8.jpg
図SPM.8:この報告書で使用されている5つの例示的なシナリオの下での世界的な気候変動の指標訳注8

5つのシナリオのそれぞれの予測はカラーで示されています。陰影は不確実性の範囲を表します(詳細は以下の各図に記載されています)。黒い曲線は、過去のシミュレーション(図a、b、c)または観測(図d)を表しています。予測される将来の変化の背景<context>を提供するために、すべてのグラフに過去の値が含まれています。

図a)1850-1900年に対する世界平均表面温度変化
(℃)。これらの変化は、CMIP6モデルのシミュレーションに、シミュレーションによる過去の温暖化に基づく観測上の制約を課し、気候感度の最新の評価も合わせて得られました(Box SPM.1参照)。20年間の平均期間に基づく1850-1900年に対する変化は、1995-2014年に対するシミュレートされた変化に0.85℃(1850-1900年から1995-2014年までに観測された世界平均表面温度の上昇)を加算することによって計算されます。SSP1-2.6およびSSP3-7.0について、可能性が非常に高い範囲が示されています。

図b)CMIP6モデルシミュレーションに基づく106km2内の9月の北極海氷域。SSP1-2.6およびSSP3-7.0について、可能性が非常に高い範囲が示されています。北極圏は、中程度および高いGHG排出シナリオの下で、世紀半ば近くに実質的に氷がないことが予測されています。

図c)CMIP6モデルシミュレーションに基づく世界平均海洋表面pH(酸性度の尺度)。SSP1-2.6およびSSP3-7.0について、可能性が非常に高い範囲が示されています。

図d)1900年に対する世界の平均海面変化(メートル単位)。過去の変化は(1992年以前は検潮儀でその後は高度計で)観察されたもので、将来の変化は、CMIP、氷床、および氷河モデルで評価されたものです。SSP1-2.6およびSSP3-7.0について、可能性が高い範囲が示されています。非常に不確実なプロセスの分布を推定することは困難であるため、海面の変化については、可能性が高い範囲のみが評価されます。破線の曲線は、これらの非常に不確実なプロセスの潜在的な影響を示しています。これは、除外することはできないが、可能性が低くインパクトの大きい<low-likelihood,high-impact>氷床プロセスを含むSSP5-8.5予測の83パーセンタイルを示しています;これらのプロセスの予測は確信度が低いため、この曲線は可能性が高い範囲の一部を構成していません。

図e):1900年に対する2300年の世界平均海面変化(単位:メートル)。他のシナリオで2100年を超えるシミュレーションは少なすぎてロバストな結果が得られないため、SSP1-2.6とSSP5-8.5についてだけ2300年が予測されています。17ー83パーセンタイル範囲は影付きです。破線の矢印は、除外できない可能性が低くインパクトが大きい氷床プロセスを含むSSP5-8.5予測の83パーセンタイルを示しています。

図b)とc)は、各モデルからの単一のシミュレーションに基づいているため、内部変動の要素が含まれています。図a)、d)、e)は長期平均に基づいているため、内部変動による寄与は小さい。

{Figure TS.8、Figure TS.11、Box TS.4 Figure 1、Box TS.4 Figure 1、4.3、9.6、Figure 4.2、Figure 4.8、Figure 4.11、Figure 9.27}
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C. リスク評価と地域適応のための気候情報

自然科学的な気候情報は、気候システムが人間の影響、自然の要因、内部変動の間の相互作用にどのように反応するかを扱っています。気候応答と可能性が高い結果の範囲(可能性が低くインパクトが大きい結果を含む)に関する知識は、気候サービスに情報を提供します(気候関連のリスクの評価と適応計画)。世界、地域、局所の規模での自然科学的な気候情報は、観測結果、気候モデルの出力、適合した分析<tailored diagnostics>など、複数の証拠から作成されます。

C.1 自然の要因と内部変動は、特に地域規模で、そして短期的には、人為的な変化を変調しますが、100年間の地球温暖化にほとんど影響を与えません。これらの変調は、考えられるすべての変更を計画する際に考慮することが重要です。{1.4、2.2、3.3、Cross-Chapter Box 3.1、4.4、4.6、Cross-Chapter Box 4.1、4.4、Box 7.2、8.3、8.5、9.2、10.3、10.4、10.6、11.3、12.5、Atlas.4、Atlas.5、Atlas.8、Atlas.9、Atlas.10、Cross-Chapter Box Atlas.2、Atlas.11}

C.1.1  過去の世界平均表面温度の記録によると、10年ごとの変動が、根底にある人為的な長期的変化を強化および覆い隠しており、このような変動は将来も続くことが強調されます(非常に高い確信度)。たとえば、太陽と火山の要因の10年間の内部変動は、1998ー2012年の間、人為的な地表の地球温暖化を部分的に覆い隠し、顕著な地域的および季節的特徴を示しました(高い確信度)。それにもかかわらず、地球の海洋の継続的な温暖化(非常に高い確信度)と陸地での継続的な極端な高温の上昇(中程度の確信度)の両方に反映されているように、気候システムの加熱はこの期間中も続いていました。{1.4、3.3、Cross -Chapter Box 3.1、4.4、Box 7.2、9.2、11.3、Cross-Section Box TS.1}図SPM.1

C.1.2 予測される人間による平均気候の変化と、極端現象を含む気候インパクトドライバー<climatic impact-drivers>(CID)36訳注9は、内部変動37に よって増幅または減衰されます(高い確信度)。現在の気候に関して特定の場所で短期間の冷却が発生する可能性がありますが、人間の影響による地球の表面温度の上昇と矛盾しません(高い確信度)。{1.4、4.4、4.6、10.4、11.3、12.5、Atlas.5、Atlas.10、 Atlas.11、TS.4.2}

C.1.3
  内部変動は、多くの陸域で観測された人為的な十年から数十年の平均降水量の変化の増幅と減衰の主な原因となっています(高い確信度)。世界規模および地域規模では、モンスーンの短期的な変化は、内部変動の影響によって支配されます(中程度の確信度)。内部変動の影響に加えて、地球規模および地域規模での降水量の短期的な予測変化は、モデルの不確実性と自然および人為的エアロゾルからの強制力の不確実性のために不確実です(中程度の確信度)。{1.4、 4.4、8.3、8.5、10.3、10.4、10.5、10.6、Atlas.4、Atlas.8、Atlas.9、Atlas.10、Cross- Chapter Box Atlas.2、Atlas.11、TS.4.2、Box TS.6、Box TS.13}

C.1.4 古気候および歴史的証拠に基づくと、21世紀に少なくとも1回の大規模な爆発的火山噴火38が発生する可能性があります。このような噴火は、特に陸地での地球の表面温度と降水量を1年から3年間低下させ、地球規模のモンスーン循環を変化させ、極端な降水量を修正し、多くのCIDを変化させます(中程度の確信度)。したがって、そのような噴火が発生した場合、これは一時的かつ部分的に人為的な気候変動を覆い隠すことになります。{4.4、Cross-Chapter Box 4.1、2.2、8.5、TS.2.1}

C.2  さらなる地球温暖化に伴い、すべての地域で、気候インパクトドライバーの同時かつ複数の変化がますます経験されると予測されています。いくつかの気候インパクトドライバーの変化は、1.5℃の地球温暖化と比較して2℃でより広範囲に及んでおり、より高い温暖化レベルではさらに広範囲に、および/または顕著になります。{8.2、9.3、9.5、9.6、Box 10.3、Box 11.3、Box 11.4、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.9、12.2、12.3、12.4、12.5、Atlas.4、Atlas.5、 Atlas.6、 Atlas.7、Atlas.8、Atlas.9、Atlas.10、Atlas.11、CrossChapter Box 11.1、Cross-Chapter Box 12.1}表SPM.1図SPM.9

C.2.1 すべての地域39で、高温の気候インパクトドライバー(CID)がさらに増加し、低温のCIDが減少すると予測されています(高い確信度)。永久凍土、雪、氷河と氷床、湖と北極海の氷では、さらに減少が予測されています(中程度から高い確信度)40。これらの変化は、2℃以上の地球温暖化では1.5℃よりも大きくなります(高い確信度)。たとえば、農業と健康に関連する極端な熱のしきい値は、より高い地球温暖化レベル(高い確信度)でより頻繁に超えると予測されています。{9.3、9.5、11.3、11.9、12.3、12.4、12.5、 Atlas.4、Atlas.5、Atlas.6、Atlas.7、Atlas.8、Atlas.9、Atlas.10、Atlas.11、TS.4.3 、Cross-Chapter Box 11.1、Cross-Chapter Box 12.1}表SPM.1図SPM.9

C.2.2 1.5℃の地球温暖化では、アフリカとアジア(高い確信度)、北アメリカ(中から高い確信度)40、ヨーロッパ(中程度の確信度)のほとんどの地域で、大雨とそれに伴う洪水が激しくなり、より頻繁になると予測されています。また、1850ー1900年と比較して、アジアを除くすべての人間が住んでいる大陸のいくつかの地域で、より頻繁および/または深刻な農業的および生態学的干ばつが予測されています(中程度の確信度)。気象学的干ばつの増加もいくつかの地域で予測されています(中程度の確信度)。少数の地域では、平均降水量が増減すると予測されています(確信度は中程度)。{11.4、11.5、11.6、11.9、Atlas.4、Atlas.5、Atlas.7、Atlas.8、Atlas.9、 Atlas.10、Atlas.11、TS.4.3}表SPM.1

C.2.3 2℃ 以上の地球温暖化では、1.5℃の場合と比較して、干ばつと大雨および平均降水量の変化に対する確信度と変化の大きさが増加します。大雨とそれに伴う洪水は、太平洋諸島と北米とヨーロッパの多くの地域でより激しく頻繁になると予測されています(中程度から高い確信度)40。これらの変化は、オーストラレーシアと中南米の一部の地域でも見られます(中程度の確信度)。アフリカ、南アメリカ、ヨーロッパのいくつかの地域では、中程度から高い確信度で、農業的および生態学的干ばつの頻度および/または深刻度の増加が見込まれています40;オーストラレーシア、中南米およびカリブ海でも中程度の確信度で増加が見込まれています。アフリカ、オーストラレーシア、ヨーロッパと北アメリカのわずかな地域でも水文学的干ばつの増加の影響を受けると予測されており、いくつかの地域は気象学的干ばつの増加または減少の影響を受けると予測されており、より多くの地域が増加を示しています(中程度の確信度)。平均降水量は、全ての極地域、北ヨーロッパ、北アメリカの地域、ほとんどのアジア地域、および南アメリカの2つの地域で増加すると予測されています(高い確信度)。{11.4、11.6、11.9、12.4、12.5、Atlas.5、Atlas.7、 Atlas.8、Atlas.9、Atlas.11、TS.4.3、Cross-Chapter Box 11.1、Cross-Chapter Box 12.1}表SPM .1図SPM.5図SPM.6図SPM.9

C.2.4 1.5℃の地球温暖化と比較して、2℃以上ではより多くの地域でより多くのCIDが変化すると予測されています(高い確信度)。地域固有の変化には、熱帯低気圧および/または温帯低気圧の激化(中程度の確信度)、河川洪水の増加(中程度から高い確信度)40、平均降水量の減少と乾燥度の増加(中程度から高い確信度)40、および火災の天候(中程度から高い確信度)40が含まれます。雹、氷の嵐、激しい嵐、砂嵐、大雪、地滑りなど、他のCIDの潜在的な将来の変化については、ほとんどの地域で確信度は低い。{11.7、 11.9、12.4、12.5、Atlas.4、Atlas.6、Atlas.7、Atlas.8、Atlas.10、TS.4.3.1、 TS.4.3.2、TS.5、Cross-Chapter Box、 11.1、Cross-Chapter Box 12.1}表SPM.1図SPM.9

C.2.5 地質学的な土地隆起率が高いいくつかの地域を除いて、地域の平均相対海面上昇が21世紀を通じて続くことはほぼ確実です40。 世界の海岸線の約3分の2は、世界平均増加の±20%以内に地域の相対的な海面上昇が予測されています(中程度の確信度)。相対的な海面上昇により、最近1世紀に1回発生した極端な海面イベントは、2100年までにすべての検潮所の半分以上で少なくとも年に1回発生すると予測されています(高い確信度)。相対的な海面上昇は、低地での沿岸洪水の頻度と深刻さの増加、およびほとんどの砂浜に沿った海岸侵食に寄与します(高い確信度)。{9.6、12.4、 12.5、Box TS.4、TS.4.3、Cross-Chapter Box 12.1}図SPM.9

C.2.6  都市は人為的な温暖化を局所的に強め、さらなる都市化はより頻繁な極端な高温とともに熱波の過酷さを増加させるでしょう(非常に高い確信度)。都市化はまた、都市の風上および/または風下での平均のおよび大量の降水量を増加させ(中程度の確信度)、結果として地表を流れる雨水の強度を増加させます(高い確信度)。沿岸都市では、より頻繁な極端な海面イベント(海面上昇と高潮による)と極端な降雨/河川流イベントの組み合わせにより、洪水の可能性が高くなります(高い確信度)。{8.2、Box 10.3、11.3、12.4、Box TS.14}

C.2.7  多くの地域では、より高い地球温暖化にともない複合イベントの確率が高くなると予測されています(高い確信度)。特に、同時に発生する熱波と干ばつはより頻繁になる可能性があります。1.5℃の地球温暖化と比較して、2℃以上では、作物生産地域を含む複数の場所での同時の極端現象<extremes>がより頻繁になります(高い確信度)。{11.8、Box 11.3、Box 11.4、12.3、12.4、TS.4.3、Cross-Chapter Box 12.1}表SPM.1
6Is_f9.jpg
図SPM.9:気候インパクトドライバーが変化すると予測されるAR6WGI参照領域の数訳注9

合計35の気候インパクトドライバー(CID)が次の7つのタイプにグループ化されています:暑さと寒さ、湿ったと乾いた、風、雪と氷、沿岸、外洋。棒グラフの棒には、CIDごとに、変化が予測されるAR6WGI参照領域の数が表示されています。色は変化の方向と変化の確信度を表します。紫は増加を示し、茶色は減少を示します。暗い色合いと明るい色合いは、それぞれ高い確信度と中程度の確信度を示します。明るい背景色は、各CIDが広く関連する領域の最大数を表します。

パネルa)陸域および沿岸地域に関連する30のCIDを示し、パネルb)外洋地域に関連する5つのCIDを示しています。海洋熱波と海洋酸性度は、パネルa)の沿岸海洋地域とパネルb)の外洋地域について評価されています。地域の定義は、Atlas.1およびInteractive Atlasで提供されています(interactive-atlas.ipcc.chを参照)。 

{表TS.5、図TS.22、図TS.25、11.9、12.2、12.4、Atlas.1}表SPM.1
C.3 氷床の崩壊、急激な海洋循環の変化、いくつかの複合的な極端なイベント、非常に可能性が高いと評価された将来の温暖化の範囲よりも大幅に大きい温暖化など、可能性の低い結果は除外することはできず、リスク評価の一部です。{1.4、Cross-Chapter Box 1.3、Cross-Chapter Box 4.1、4.3、4.4、4.8、8.6、9.2 、Box 9.4、Box 11.2、11.8、Cross-Chapter Box 12.1}表SPM.1

C.3.1  地球温暖化が、低GHG排出シナリオを含む、特定のGHG排出シナリオで評価された可能性の高い範囲を超える場合、地域の降水量やその他のCIDなど、気候システムの多くの側面における世界および地域の変化も、可能性が非常高いと評価された範囲を超えるだろう(高い確信度)。このような可能性の低い高温暖化の結果は、より激しく、より頻繁な熱波や大雨などによる潜在的に非常に大きな影響と、特に高GHG排出シナリオの人間および生態系に対する高いリスクに関係しています。{Cross-Chapter Box 1.3、4.3、4.4、4.8、Box 9.4、Box 11.2、Cross-Chapter Box 12.1、TS.1.4、Box TS.3、Box TS.4}表SPM.1

C.3.2 特定のGHG排出シナリオにおいて可能性が非常に高い範囲内の地球温暖化の場合であっても、可能性が低くインパクトが大きい結果34は、地球規模および地域規模で発生する可能性があります。可能性が低くインパクトが大きい結果の確率は、地球温暖化レベルが高いほど高くなります(高い確信度)。南極氷床の融解の大幅な増加や森林の立ち枯れなど、気候システムの突然の反応や転換点<tipping points>を除外することができません(高い確信度)。{1.4、4.3、4.4、4.8、5.4、8.6、Box 9.4、Cross-Chapter Box 12.1、TS.1.4、TS.2.5、Box TS.3、Box TS.4、Box TS.9}表SPM.1

C.3.3 地球温暖化が増加すると、過去および現在の気候で発生する可能性が低いいくつかの複合的な極端なイベント18がより頻繁になり、観測記録で前例のない強度、期間、および/または空間範囲が増加したイベントが発生する可能性が高くなります(高い確信度)。{11.8、Box 11.2、Cross-Chapter Box 12.1、Box TS.3、Box TS.9}

C.3.4  大西洋南北熱塩分循環は、すべての排出シナリオで21世紀にわたって弱まる可能性が非常に高いです。21世紀の衰退には高い確信度がありますが、傾向の大きさには低い確信度しかありません。2100年以前に突然の崩壊が起こらないという中程度の確信があります。そのような崩壊が起こった場合、熱帯雨林帯の南向きのシフトなど、地域の気象パターンと水循環の突然のシフトを引き起こし、アフリカとアジアのモンスーンの弱体化し、南半球のモンスーンを強化し、ヨーロッパを乾燥化する可能性が非常に高いだろう。{4.3、8.6、9.2、TS2.4、Box TS.3}

C.3.5  気候に対する人間の影響とは関係のない、予測不可能でまれな自然災害は、可能性が低くインパクトが大きい結果につながる可能性があります。たとえば、過去数十年以内に一連の大規模な爆発的な火山噴火が発生し、数十年にわたって世界的および地域的な気候変動を引き起こしました。このようなイベントは将来的に除外することはできませんが、それらに本来備わっている予測不可能性のため、この報告書で参照されている一連の例示的なシナリオには含まれていません。{2.2、Cross-Chapter Box 4.1、Box TS.3}(Box SPM.1

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D. 将来の気候変動の制限

AR5以降、残余カーボンバジェットの推定値は、SR1.5で最初に提示された新しい方法論、更新された証拠、および複数の証拠からの結果の統合によって改善されました。シナリオで考えられる将来の大気汚染管理<air pollution controls>の包括的な範囲を使用して、気候と大気汚染の予測に対するさまざまな仮定の影響を一貫して評価します。新しい発展は、排出削減に対する気候応答が、内部変動や自然要因を含む、自然気候変動よりも上でいつ識別可能になるかを確定する能力です。

D.1 自然科学の観点から、人為的な地球温暖化を特定のレベルに制限するには、累積CO2排出量を制限し、少なくとも正味ゼロのCO2排出量に達するとともに、他の温室効果ガス排出量を大幅に削減する必要があります。CH4排出量の強力で迅速かつ持続的な削減は、エアロゾル汚染の減少に起因する温暖化効果を制限し、大気の質を改善します。{3.3、4.6、5.1、5.2、5.4、5.5、5.6、Box 5.2、Cross-Chapter Box 5.1、6.7、7.6、9.6}(図SPM.10表SPM.2

D.1.1 この報告書は、累積的な人為的CO2排出量とそれらが引き起こす地球温暖化との間にほぼ線形の関係があるというAR5の知見を高い確信を持って再確認します。累積CO2排出量の各1000GtCO2は、世界の表面温度を0.27℃から0.63℃上昇させる可能性が高いと評価されており、最良の推定値は0.45℃です41。これは、AR5およびSR1.5と比較して狭い範囲です。この量は、累積CO2排出量(TCRE)に対する一時的な気候応答と呼ばれます。この関係は、人為的CO2排出量を正味ゼロ42にすることは、人間が誘発する地球の気温上昇をあらゆるレベルで安定させるための要件であることを意味しますが、地球の気温上昇を特定のレベルに制限するということは、累積CO2排出量をカーボンバジェット43内に制限することを意味します。{5.4、5.5、TS.1.3、TS.3.3、Box TS.5}(図SPM.10
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図SPM.10:累積CO2排出量と世界平均表面温度の上昇との間のほぼ線形の関係

上図:過去のデータ(細い黒線)は、1850年から2019年までの過去の累積二酸化炭素(CO2)排出量(GtCO2)の関数として、1850年から1900年までに観測された地球の表面温度の上昇を示しています。中央に線がある灰色の領域は、過去の人為的表面温暖化に対応する推定値を示します(図SPM.2参照)。色付きの領域は、2020ー2050年の累積CO2排出量の関数として、評価された非常に可能性の高い世界平均表面温度予測の範囲を示し、太い色付きの中心線は、一連の例示的なシナリオ(SSP1-1.9、SSP1-2.6、 SSP2-4.5、SSP3-7.0、およびSSP5-8.5、図SPM.4参照)における中央推定値を示します。予測では、それぞれのシナリオの累積CO2排出量が使用され、予測される地球温暖化には、すべての人為的強制力からの寄与が含まれます。この関係は、累積CO2排出量(TCRE)に対する一時的な気候応答が一定であると確信がある累積CO2排出量の領域、および1850年から2050年までの期間、すべての例示的なシナリオで世界のCO2排出量が正味の正の値を維持している期間にわたって示されています。正味の負のCO2排出量の下での温度変化を推定するためのTCREの定量的適用を支持する証拠が限られているためです。
下図:それぞれのシナリオでのGtCO2の過去および予測の累積CO2排出量。
{図TS.18、図5.31、セクション5.5}
D.1.2 1850-2019年の期間に、人為的のCO2の合計2390±240(可能性の高い範囲)GtCO2が排出されました。残余カーボンバジェットは、TCREの推定値とその不確実性、過去の温暖化の推定値、非CO2排出による予測される温暖化の変動、永久凍土の解凍による排出量のような気候フィードバック、および世界の人為的CO2排出が正味ゼロに達した後の世界平均表面温度変化に基づいて、いくつかの世界温度制限<several global temperature limits>とさまざまなレベルの確率について推定されています。
{5.1、5.5、Box 5.2、TS.3.3}(表SPM.2
表SPM.2:過去のCO2排出量と残余カーボンバジェットの見積もり
推定残余カーボンバジェットは2020年の初めから計算され、世界の正味ゼロCO2排出量に達するまで延長されます。非CO2排出による地球温暖化の影響を考慮しながら、CO2排出について言及しています。この表の地球温暖化は、人間が引き起こした地球の表面温度の上昇を示しており、個々の年の地球の気温に対する自然変動の影響は除外されています。{Table TS.3、Table 3.1、Table 5.1、Table 5.7、Table 5.8、5.5.1、5.5.2、Box 5.2}
6Is_t2.jpg
D.1.3  残余カーボンバジェットの見積もりを決定するいくつかの要因が再評価され、SR1.5以降のこれらの要因の更新は小さい。したがって、以前の報告書以降の排出量を調整すると、残余カーボンバジェットの推定値はSR1.5と比較して同様の大きさですが、方法論の改善によりAR5と比較して大きくなっています44。{5.5、Box 5.2、TS.3.3}表SPM.2

D.1.4 人為的CO2除去(CDR)は、大気からCO2を除去し、それを貯留手段に永続的に貯蔵する可能性です(高い確信度)。CDRは、残留排出量を相殺して、正味ゼロCO2または正味ゼロGHG排出量に到達する、あるいは人為的除去が人為的排出量を超える規模で実施された場合は、表面温度を下げることを目的としています。CDR法は、生物地球化学的循環と気候に広範囲の影響を与える可能性があり、CO2を除去して温暖化を減らすこれらの方法の可能性を弱めたり強めたりする可能性があり、水の利用可能性と水質、食料生産と生物多様性にも影響を与える可能性があります45(高い確信度)。{5.6、Cross-Chapter Box 5.1、TS.3.3}

D.1.5 世界の正味の負の排出につながる人為的CO2除去(CDR)は、大気中のCO2濃度を低下させ、表面の海洋酸性化を逆転させます(高い確信度)。人為的CO2の除去と排出は、陸と海の炭素プールから、または陸と海の炭素プールへのCO2の放出と取り込みによって、それぞれ部分的に相殺されます(非常に高い確信度)。CDRは、同じ大きさの人為的排出による増加にほぼ等しい量だけ大気中のCO2を削減します(高い確信度)。人為的のCO2除去による大気中のCO2の減少は、CDRの総量に応じて、同量のCO2排出による大気中のCO2の増加よりも最大10%少なくなる可能性があります(中程度の確信度)。{5.3、5.6、TS.3.3}

D.1.6 世界の正味の負のCO2排出量が達成され、維持された場合、世界のCO2による表面温度の上昇は徐々に逆転しますが、他の気候変動は現在の方向に数十年から数千年の間続きます(高い確信度)。たとえば、正味の負のCO2排出量が多い場合でも、世界の平均海面が逆転するまでには数世紀から数千年かかるでしょう(高い確信度)。{4.6、9.6、TS.3.3}

D.1.7 5つの例示的なシナリオでは、大気汚染にも寄与するCH4、エアロゾル、およびオゾン前駆物質の放出の同時変化が、短期的および長期的に正味の地球表面温暖化につながります(高い確信度)。長期的には、この正味の温暖化は、大気汚染防止と強力で持続的なCH4排出削減(高い確信度)を組み合わせたシナリオでは低くなります。低いおよび非常に低いGHG排出シナリオでは、人為的エアロゾル排出の想定される削減は正味の温暖化につながり、CH4およびその他のオゾン前駆物質排出の削減は正味の冷却につながります。CH4とエアロゾルの両方の寿命が短いため、これらの気候の影響は互いに部分的に相殺され、CH4排出量の削減は、地球規模の表面オゾンを削減することで大気質の改善にも貢献します(高い確信度)。{6.7、Box TS.7} (図SPM.2ボックスSPM.1)

D.1.8 人為的CO2排出量と人為的CO2除去のバランスが取れた地球規模の正味ゼロCO2排出量を達成することは、CO2による地球規模の表面温度上昇を安定させるための要件です。これは、計量基準で重み付けされた<metric-weighted>人為的GHG排出量が計量基準で重み付けされた人為的GHG除去に等しい、正味ゼロのGHG排出量を達成することとは異なります。特定のGHG排出経路について、個々の温室効果ガスの経路が結果の気候応答46を決定しますが、さまざまなGHGの総排出量と除去量の計算に使用される排出量の計量基準47の選択は、総温室効果ガスが正味ゼロと計算される時点に影響します。100年の地球温暖化係数によって定義される正味ゼロGHG排出量に到達し、それを維持する排出経路は、より早いピークの後に表面温度の低下をもたらすと予測されています(高い確信度)。{4.6、7.6、Box 7.3、TS.3.3}

D.2  GHG排出量が非常に少ないまたは少ないシナリオ(SSP1-1.9およびSSP1-2.6)は、高いおよび非常に高いGHG排出シナリオ(SSP3-7.0またはSSP5-8.5)と比べて、数年以内に温室効果ガスとエアロゾルの濃度、および相対的な大気の質に識別可能な影響をもたらします。これらの対照的なシナリオの下で、地球の表面温度の傾向の識別可能な違いは、約20年以内に自然変動から区別できるようになり、他の多くの気候インパクトドライバーについてはより長い期間が必要でしょう(高い確信度)。{4.6、Cross-Chapter Box 6.1、6.6、6.7、9.6、Cross-Chapter Box 11.1、11.2、11.4、11.5、11.6、12.4、12.5}(図SPM.8図SPM.10

D.2.1 COVID -19の蔓延を減らすための措置に関連する、2020年の排出削減は、大気汚染に対する一時的ではあるが検出可能な影響(高い確信度)と、人間の活動から生じるエアロゾルによって引き起こされる冷却の減少に主として関連する小さな一時的な総放射強制力の増加をもたらしました(中程度の確信度)。ただし、この一時的な強制力に対する世界的および地域的な気候応答は、自然変動を超えて検出することはできませんでした(高い確信度)。大気中のCO2濃度は、2020年も上昇を続け、観測されたCO2増加率の検出可能な低下は見られませんでした48(中程度の確信度)。{Cross-Chapter Box 6.1、TS.3.3} 

D.2.2 GHG排出量の削減は、大気の質の改善にもつながります。ただし、短期的49には、GHG排出量が少ないシナリオや非常に少ないシナリオ(SSP1-2.6およびSSP1-1.9)のように、GHGが大幅に削減されたシナリオでも、これらの改善は多くの汚染地域で世界保健機関によって指定された大気の質ガイドラインを達成するのに十分ではありません(高い確信度)。大気汚染物質排出量の削減を目標としたシナリオでは、GHG排出量のみの削減と比較して、数年以内に大気の質がより急速に改善されますが、2040年以降、大気汚染物質とGHG排出量を削減する取り組みを組み合わせたシナリオではさらなる改善(地域によって利益の大きさは異なる)が予測されます(高い確信度)。{6.6、 6.7、Box TS.7}。 

D.2.3 GHG 排出量が非常に少ないまたは少ないシナリオ(SSP1-1.9およびSSP1-2.6)は、GHG排出量が多いまたは非常に多いシナリオ(SSP3-7.0またはSSP5-8.5)と比較して、人為的な気候変動を制限するための迅速かつ持続的な効果がありますが、気候システムの初期の反応は、自然の変動性によって覆い隠される可能性があります。世界平均表面温度については、高いまたは非常に高いGHG排出シナリオ(SSP3-7.0またはSSP5-8.5)と比較して、非常に低いGHG排出シナリオ(SSP1-1.9)では、20年の傾向の違いが短期的に現れる可能性があります。他の多くの気候変数の応答は、21世紀後半のさまざまな時期に自然変動から区別できるようになるでしょう(高い確信度)。{4.6、Cross-Section Box TS.1}図SPM.8図SPM.10

D.2.4 GHG排出量が非常に少ないシナリオ(SSP1-1.9およびSSP1-2.6)の場合、GHG排出量が多いシナリオおよび非常に多いシナリオ(SSP3-7.0およびSSP5-8.5)よりも、2040年以降のCID36の 変化の幅が大幅に小さくなるでしょう。今世紀終わりまでに、GHG排出量が非常に少ないシナリオでは、極端な海面イベントの頻度の増加、大雨と洪水、危険な熱しきい値の超過など、いくつかのCIDの変化が大幅に制限され、さらに、そのような超過が発生する地域の数を、より高いGHG排出シナリオと比較して、制限されるでしょう(高い確信度)。変化は、低い排出シナリオと比較して非常に低いシナリオで、また高いまたは非常に高い排出シナリオと比較して中間のシナリオ(SSP2-4.5)では小さいでしょう(高い確信度)。{9.6、Cross-Chapter Box 11.1、11.2、 11.3、11.4、11.5、11.6、11.9、12.4、12.5、TS.4.3}

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脚注

1 決定IPCC/XLVI-2。

2 3つの特別報告書は次のとおりです:1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威、持続可能な開発、および貧困撲滅への取り組みの文脈において、産業革命前のレベルからの1.5℃の地球温暖化の影響および関連する地球規模の温室効果ガス排出経路に関するIPCC特別報告書(SR1.5);気候変動と土地:気候変動、砂漠化、土地劣化、持続可能な土地管理、食料安全保障、および陸域生態系における温室効果ガスフラックスに関するIPCC特別報告書(SRCCL);変化する気候における海洋と気候変動に関するIPCC特別報告書(SROCC)。

3 この報告書は、2021年1月31日までに出版が承認された科学文献を対象としています。

4 それぞれの知見は、根底にある証拠と合意の評価に基づいています。確信のレベルは、5つの修飾子を使用して表されます:非常に低い、低い、中程度、高い、非常に高い、およびイタリック体のタイプセット(たとえば、'中程度の確信度')です。次の用語は、結果または結果の評価された可能性を示すために使用されています:ほぼ確実な可能性99-100%<virtually certain 99ー100% probability>、非常に可能性が高い90-100%<very likely 90-100%>、可能性が高い66-100%<likely 66ー100%>、たぶん可能性がないだろう33-66%<about as likely as not 33ー66%,>、可能性が低い0-33%<unlikely 0ー33%>、非常に可能性が低い0-10 %<very unlikely 0ー10%,>、非常にありそうもない0-1%<exceptionally unlikely 0ー1%>。追加の用語(可能性が極めて高い95-100%<extremely likely 95.100%>、50-100%を超えない可能性が高い<more likely than not >50ー100%,>、可能性が極めて低い0.5%<extremely unlikely 0ー5%>)も、適切な場合に使用できます。評価された可能性はイタリック体で植字されています、たとえば、'非常に可能性が高い'。これはAR5と一致しています。このレポートでは、特に明記されていない限り、角括弧[xからy]を使用して、評価された非常に可能性の高い範囲、つまり90%の間隔を提供します。

5 Interactive Atlasは、次のURLで入手できます。 https://interactive-atlas.ipcc.ch

6 2019年のその他のGHG濃度は次のとおりです。PFC(109 ppt CF4相当)。SF6(10 ppt); NF3(2 ppt); HFC(237 ppt HFC-134a相当); その他のモントリオール議定書ガス(主にCFC、HCFC、1032 ppt CFC-12相当)。2011年からの増加は、CO2で19 ppm、CH4で63 ppb、N2Oで8ppbです。

7 陸と海は、他のGHGにとって実質的な吸収源ではありません。

8 「世界平均表面温度<global surface temperature
>」という用語は、このSPM全体の世界平均表面温度<global mean surface temperature>と世界平均表面気温<global surface air temperature>の両方を参照して使用されます。これらの量の変化は、互いに最大10%異なると高い確信度で評価されますが、矛盾する一連の証拠により、長期的な傾向の違いの確信度は低くなります。{Cross-Section Box TS.1}

9 1850ー1900年の期間は、地球の表面温度を推定するのに十分に地球規模で完全な観測の最も早い期間を表し、AR5およびSR1.5と同様に、産業革命前の状況の近似値として使用されます。

10 AR5以降、方法論の進歩と新しいデータセットにより、北極圏を含む表面温度の変化をより完全に空間的に表現できるようになりました。これらおよびその他の改善により、地球の表面温度変化の推定値がさらに約0.1℃増加しましたが、この増加はAR5以降の追加の物理的温暖化を表すものではありません。

11 A.1.2との期間の区別は、帰属調査がこのわずかに早い期間を考慮しているために生じます。2010ー2019年に観測された温暖化は1.06 [0.88から1.21]℃です。

12 このSPM全体を通じて、「主な要因」とは、変更の50%以上に責任があることを意味します。

13 セクションB.1で述べたように、非常に低い排出シナリオSSP1-1.9の下でも、気温は少なくとも2100年までは直近の10年の気温を上回り、したがって6500年前の世紀規模の期間よりも暖かいままであると評価されます。

14 このSPM全体を通じて、「主な要因」とは、変更の50%以上に責任があることを意味します。

15 農業的および生態学的干ばつ(影響を受けるバイオームに応じて):降水量の不足と過剰な蒸発散の組み合わせに起因する異常な土壌水分不足の期間であり、成長期には一般に作物生産または生態系機能に影響を与えます。気象学的干ばつ(降水量の不足)と水文学的干ばつ(河川流の不足)で観察された変化は、農業および生態学的干ばつの変化とは異なり、基礎となるAR6資料で取り上げられています(第11章)。

16 地球の表面を構成する開放水域と氷の表面、裸の土壌、および植生から大気に水が移動する複合プロセス。

17 世界のモンスーンは、年間降水量の範囲(局地的な夏から局地的な冬を差し引いたもの)が2.5mm day-1を超える地域として定義されます。世界の陸域モンスーン降水量とは、世界のモンスーン内の陸域の平均降水量を指します。

18 複合的な極端なイベントは、社会的または環境的リスクに寄与する複数の要因および/または危険の組み合わせです。例としては、同時熱波や干ばつ、複合的な氾濫(例えば、極端な降水量および/または河川流量との組み合わせで高潮)、複合的な火災気象条件(すなわち、暑く乾燥の組み合わせ、および強風)、またはさまざまな場所での同時両極端現象。

19 年の累積エネルギー増加は1971ー2006年にかけて282 [177から387] ZJ(1 ZJ = 1021 J)でした。

20 2006ー2018年にかけて152 [100から205] ZJの20の累積エネルギー増加。

21 気候プロセス、計器による記録、古気候、モデルベースの緊急制約の理解(用語集を参照)。

22 この報告書全体を通して、5つの例示的なシナリオはSSPx-yと呼ばれ、「SSPx」は共通社会経済経路<
Shared Socio-economic Pathway>を指し、「SSP」はシナリオの根底にある社会経済的傾向<socio-economic trends>を表し、「y」は2100年のシナリオから生じる放射強制力のおおよそのレベル(W m-2)。以前のIPCC報告書で使用されたシナリオとの詳細な比較は、セクションTS1.3および1.6と4.6に記載されています。気候モデルを推進するために使用される特定の強制力シナリオの根底にあるSSPは、WGIによって評価されません。むしろ、SSPx-yラベリングは、特定の強制力経路が気候モデルへの入力として使用される基礎となる文献へのトレーサビリティを保証します。IPCCは、考えられるすべてのシナリオを網羅しているわけではないSSPの根底にある仮定に関して中立です。

23 CO2の人為的除去が人為的排出量を超えると、正味の負のCO2排出量に達します。{用語集}

24 世界平均表面温度の変化は、特に明記されていない限り、20年間の平均として報告されます。

25 SSP1-1.9およびSSP1-2.6は、2015年に開始され、非常に低いおよび低いGHG排出量とCO2排出量が2050年頃またはその後に正味ゼロに減少し、その後にさまざまなレベルの正味の負のCO2排出量が続くシナリオです。

26 超えるとは、ここでは、評価された世界平均表面温度の変化が20年間の平均で、特定の地球温暖化レベルを超えていることと定義されています。
 
27  特定の地球温暖化レベルが最初に超過したときのAR6評価は、例示的なシナリオ、放射強制力に対する将来の世界平均表面温度応答の評価に入る複数の証拠、および過去の温暖化の改善された推定の検討から恩恵を受けます。したがって、AR6の評価は、最近の過去の温暖化率の単純な線形外挿から、2030年から2052年の間に1.5℃の地球温暖化に達する可能性が高いと報告したSR1.5SPMと直接比較することはできません。線形外挿の代わりにSSP1-1.9と同様のシナリオを検討する場合、1.5℃の地球温暖化が最初に超過したときのSR1.5推定値は、ここで報告されている最良の推定値に近くなります。

28 自然変動とは、人間の影響を受けずに発生する気候変動、つまり、火山噴火、太陽活動の変化、さらに長い時間スケールでは軌道効果やプレートテクトニクスなどの外部自然要因への応答と組み合わされた内部変動を指します。

29 任意の1年間の内部変動は、約±0.25℃(5.95%の範囲、高い確信度)と推定されます。

30 農業的および生態学的干ばつの予測される変化は、主に総カラム土壌水分に基づいて評価されます。降水量と蒸発散量の定義と関係については、脚注15を参照してください。

31 月平均海氷面積は100万km2未満で、1979年から1988年に観測された9月の平均海氷面積の約15%です。

32 大気中のCO2の安定化または減少に対するこれらの予測される炭素吸収源の調整は、残りの炭素収支の計算で考慮されます。

33 その他の部門別排出量は、陸と海の正味CO2吸収量の残差と、CMIP6シミュレーションで規定された大気中CO2濃度の変化として計算されます。これらの計算された排出量は正味の排出量であり、暗黙的に含まれている除去から総人為的排出量を分離しません。

34  可能性が低くインパクトが大きい結果とは、発生の可能性が低いか、よく知られていないが(深い不確実性の文脈のように)、社会や生態系への潜在的なインパクトが大きい可能性がある結果です。転換点は、システムが再編成する重要なしきい値であり、多くの場合、突然および/または不可逆的に再編成されます。 {Cross-Chapter Box 1.3、1.4、4.7 }

35 AR5およびSROCCで使用されている1986ー2005年ベースライン期間と比較するには、世界平均海面上昇推定値に0.03mを追加します。図SPM.8で使用されている1900年ベースライン期間と比較するには、0.16mを追加します。

36  気候インパクトドライバー(CID)は、社会または生態系の要素に影響を与える自然科学的な気候システムの状態(たとえば、手段<means>、イベント、極端現象)です。システムの許容範囲に応じて、CIDとその変更は、有害、有益、中立、または相互作用するシステム要素と領域全体でそれぞれが混在する可能性があります。CIDのタイプには、暑さと寒さ、湿ったと乾いた、風、雪と氷、沿岸および外洋が含まれます。

37 主な内部変動現象には、地域の影響による、エルニーニョ南方振動、太平洋十年規模変動、および大西洋数十年変動が含まれます。

38 2,500年間の再構築に基づくと、-1 W m-2よりも負の噴火は、平均して1世紀に2回発生します。

39 ここでの地域とは、この報告書で使用されているAR6 WGI参照地域を指し、亜大陸および海洋地域の情報を要約しています。特に指定がない限り、変化は過去20ー40年間の平均と比較されます。{1.4、12.4、Atlas.1、Interactive Atlas}

40 確信度または可能性の具体的なレベルは、検討する地域によって異なります。詳細は、技術要約と基礎となる報告書に記載されています。

41 文献では、1000 PgCあたりの℃の単位が使用されており、AR6は、基礎となる報告書でTCREの範囲が1000 PgCあたり1.0℃から2.3℃であると報告しており、最良の推定値は1.65℃です(訳注:PgCは炭素換算で10の15乗グラム。Pは、ギガ、テラ、ペタの「ペタ」)。

42 人為的二酸化炭素(CO2)排出量が、指定された期間にわたる人為的CO2除去によってバランスが取られている状態。

43 カーボンバジェットという用語は、他の人為的気候変動要因の影響を考慮に入れて、地球温暖化を特定の確率で特定のレベルに制限する結果となる、累積的な正味の世界の人為的CO2排出量の最大量を指します。これは、産業革命前の期間から表される場合は総カーボンバジェットと呼ばれ、最近指定された日付から表される場合は残余カーボンバジェットと呼ばれます(用語集を参照)。過去の累積CO2排出量は、これまでの大幅な温暖化を決定しますが、将来の排出量は将来の追加の温暖化を引き起こします。残余カーボンバジェットは、温暖化を特定の温度レベル未満に保ちながら、どれだけのCO2を排出できるかを示しています。

44 AR5と比較して、AR5以降の排出量を考慮すると、AR6の推定値は、温暖化を1.5℃に制限する残余カーボンバジェットについて約300ー350GtCO2大きくなります。2℃については、差は約400ー500GtCO2です。

45  生物多様性、水、食料生産に対するCDRの潜在的なマイナスとプラスの影響は方法に固有であり、多くの場合、地域の状況、管理、以前の土地利用、規模に大きく依存します。IPCC第IIおよびIII作業部会は、CDRの可能性、およびAR6への貢献におけるCDR手法の生態学的および社会経済的影響を評価します。

46 気候システムが放射強制力にどのように反応するかについての一般的な用語(用語集参照)。

47 排出量の計量基準の選択は、ガスまたは放射強制力物質<forcing agents>を比較する目的によって異なります。この報告書には、更新された排出量の計量基準の値が含まれており、ガスを集約するための新しいアプローチを評価しています。

48 他のGHGについては、2020年中の大気増加率の検出可能な変化の評価の時点で利用可能な文献が不十分でした。

49 短期:(2021-2040年)


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訳注

(訳注1)IPCC第6次報告書は第5次とは全く違う

IPCCは2021年8月9日、第6次報告書の第I作業部会報告書を発表しました。この翻訳はそのうちの政策決定者向け要約を日本語訳したものです。

IPCCは1990年に第1次報告書を発表し、その後、数年おきに報告書を発表し、今回が6回目の報告書です。IPCC第6次報告書は、これまでの報告書と同様に、第I作業部会(自然科学的根拠)報告書(今回発表されたもの)、第II作業部会(影響、適応、脆弱性)報告書(2022年2月21日発表予定)、第III作業部会(気候変動の緩和)報告書(2022年3月28日発表予定)、統合報告書(2022年10月3日発表予定)から構成される膨大な報告書です。

第I作業部会報告書は、政策決定者向け要約(ここで翻訳しているもの)、技術要約、報告書本文からなります。その報告書本文の各章のタイトルを翻訳して以下に示します(<>内は原文)。今回の報告書本文の章立ては、前回の第5次とは全く違うので驚きました。
第1章:枠組、背景、および方法;第2章:気候システムの変化状態;第3章:気候システムに対する人間の影響;第4章:将来の地球規模の気候:シナリオベースの予測と短期情報;第5章:世界の炭素およびその他の生物地球化学的サイクルとフィードバック;第6章:短寿命気候強制因子;第7章:地球のエネルギー収支、気候フィードバック、および気候感度;第8章:水サイクルの変化;第9章:海洋、雪氷圏、および海面の変化;第10章:変化する気候における天 候と気候の極端なイベント;第11章:変化する気候における気象と気候の極端イベント;第12章:地域への影響とリスク評価のための気候変動情報<原文: Chapter 1:Framing, context, and methods; Chapter 2:Changing state of the climate system; Chapter 3:Human influence on the climate system; Chapter 4:Future global climate: scenario-based projections and near-term information; Chapter 5:Global Carbon and other Biogeochemical Cycles and Feedbacks; Chapter 6:Short-lived climate forcers; Chapter 7:The Earth's energy budget, climate feedbacks, and climate sensitivity; Chapter 8:Water cycle changes; Chapter 9:Ocean, cryosphere and sea level change; Chapter 10:Weather and climate extreme events in a changing climate; Chapter 11: Weather and climate extreme events in a changing climate; Chapter 12:Climate change information for regional impact and for risk assessment>

以下に前回の第5次報告書第I作業部会の報告書本文の各章のタイトルの日本語訳を示します。
第1章:はじめに;第2章:観測:大気および陸上;第3章:観測:海洋;第4章:観測:雪氷圏:第5章:古気候の記録からの情報;第6章:炭素および他の炭素および他の生物地球化学循環;第7章:雲およびエアロゾル;第8章:人為的および自然起源放射強制力;;第9章:気候モデルの評価;第10章:気候変動の検出および原因特定:世界から地域へ;第11章:短期の気候変動:予測および予報;第12章:長期の気候変動:予測、気候の安定化、不可避性および不可逆性;第13章:海面水位の変動;第14章:気候事象およびその将来の地域の気候変動との関連

第5次では、第2〜4章で観測データ、第5章で古気候データを示した上で、炭素→エアロゾル→放射強制力→シミュレーションと進みます。自然科学では、どんなに素晴しい理論やシミュレーションであっても実験データや観測データに合わないものは排除されるので、最初に観測データを示した第5次の章立ては、第1作業部会が扱う「自然科学的根拠」に相応しいものであると思います。

ところが、第6次の章立ては第5次で章別に扱っていたものをごちゃ混ぜにして、「気候システムに対する人間の影響」を強調するものではないかと思います。

実際、ごちゃ混ぜにしたことは第I作業部会自身が認めています。第6次の第1章の図1.2に、第5次の第I作業部会の章とこれに関連する第6次の第I次作業部会の章の関係が示されてるので、これを日本語に翻訳して以下に示します。
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第5次では章が科学の専門分野で構成されていたので、各章を担当する科学者が自ずと決まって、その科学者が自分の専門分野に関する内容を執筆していたと考えられます(科学者主導)。ところが、第6次では各章が様々な専門分野を集めたものなので、特定の分野を研究する科学者よりも、分野横断的な人が主導権を取って執筆したのではないでしょうか。IPCCは各国政府から推薦された専門家や科学者で構成されています。第6次の章立ては、科学者よりも、科学者ではない専門家が主導権を取って(非科学者主導で)執筆することを意図したものではないでしょうか。第6次の第1作業部会(自然科学的根拠)報告書は、科学的というよりも、非科学的な報告書なのかもしれません。


(訳注2)この翻訳はAI機械翻訳を修正したものであり、正確な翻訳を目指しますが、翻訳の正確性を保証するものではありません。<>内に原文の英語を表示することがあります。翻訳は原文に忠実に客観的に行っていますが、(訳注)においては私(翻訳者:井上雅夫)の意見を述べることがあります。例えば、今回の報告書のこの要約はNHKやBBCが気候変動恐怖番組をつくるのに最適な内容だ!


(訳注3)産業革命以降の温暖化は温度計のたった1目盛り

左の図はこの「政策立案者向け要約」の図SPM.1bで、1850ー2020年の温度変化(1.07℃)を示す図です。右の図はほぼ同じ期間の1868(明治元年)-2018年の温度変化を30年ごとに平均して5本の温度計を並べて示した図です。表現方法は違いますが、どちらも実質的には同じ温度変化を示す図です。左右の図の間に示した青い線は左右の図の温度の対応関係を示す線です。
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左の図を見ると産業革命以降の地球温暖化(1.07℃)がものすごいように見えますが、右の図を見ると温度計のたった1目盛りの地球温暖化であることがわかります。

この「政策立案者向け要約」は人為的地球温暖化によって様々な悪いことが起こると予測しています。左の図だけを見ていると、この要約に書いてあることを真に受けてしまいますが、右の図も見て眉につばをつけて読むのもよいかもしれません。

また、テレビでは様々な災害が報道されています。これを人為的地球温暖化のせいだと思っている人も多いかもしれません(この「政策決定者向け要約」はそれを煽っています)。でも、人為的とこの報告書が決めつける地球温暖化は温度計のたった1目盛りに過ぎないことを考えれば、最近の様々な災害が人為的地球温暖化のせいかどうか疑問になるのではないでしょうか。

実際に災害にあった人はそれほど多くはないと思います。しかし、私たちは最近ものすごくたくさんの災害を経験していると思っています。今年7月の熱海の土石流は衝撃的でした。それは土石流をスマホで撮影した人がいて、その映像をテレビやネットで見たからです。実際には災害を体験していないのに、リアルな映像を見てあたかも自分がその災害を経験したように思ってしまうのです。昔なら土石流を目撃した人の話を新聞で読んでその災害を知ることになります。これでは自分が災害を経験したようには思いません。最近、多くの災害を経験しているように思うのは、「百聞は一見にしかず」効果ではないでしょうか。なお、熱海の土石流災害は盛り土をした人による人為的災害ですが、「人為的CO2→人為的地球温暖化(温度計1目盛り分)→人為的災害」ではありません。


(訳注4)問題点だらけのホッケースティック曲線が大復活

左の図はこの要約の図SPM.1aです。右の図は2001年にIPCCが発表した第3次報告書 第1作業部会 政策決定者向け要約の図1bです。両者は驚くほど似ていますが、右の3次はホッケースティック曲線として論争を引き起こした図で、それが6次で大復活しているのは驚きです。
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3次のホッケースティック曲線については、マッキンタイヤ氏が様々な問題点を指摘しています。その内容が伊藤公紀氏の「ホッケースティック曲線にまつわる問題点」で解説されています:(その1)「主成分分析の問題点」、(その2)「木の年輪の問題点」、(その3)「気温の上下を逆にしている問題点」。いずれも深刻な問題点です。

3次と6次のホッケースティック曲線には相違点もあります。3次は北半球だけで西暦1000年以降であるの対して、6次では世界平均であり西暦1年以降という相違点です。そこで、3次のグラフを透明化し縦軸横軸を合わせて第6次に重ねた図を次に示します。左はぴったり重ねた図、右は6次の曲線が見えるように3次を少し下にずらした図です。
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左右の図を見比べると、3次と6次のホッケースティック曲線は細部は違いますが基本的にはほぼ同じです。一番の違いは右の図の西暦1000年近辺で3次では温度が少し下がっているのに対して、6次では少し上がっていて、西暦1ー1000年の間、その温度を0.1〜0.2℃程度の範囲でほぼ一定に保っていることです。0.1〜0.2℃の精度で1000年間も一定であることを証明できるほど古気候のデータの精度は高いのでしょうか?

6次の全報告書をダウンロードして、3次のホッケースティック曲線を作成した「M.E. Mann」氏で検索すると、参考文献として11回ヒットします(これは共同著者)。さらに「Mann, M.E.」で検索すると19回ヒットします(これはほとんどが筆頭著者)。Mann氏を含む論文が合計30回も引用されているのです。「大文字と小文字を区別」の設定にして「Mann et al.」で検索するとMann氏が筆頭著者の論文が本文中で引用されている箇所が20箇所あることがわかります。

Mann氏は第6次報告書の執筆者ではありませんが、参考文献の著者の一人として、第6次報告書の古気候の分野で依然として大きな影響力を持っていることがわかります。6次のホッケースティック曲線にもMann氏の問題点だらけの業績が色濃く反映されているのではないでしょうか。


(訳注5)人為的CO2温暖化を人為的エアロゾルで冷やすシミュレーション

左の図は(訳注3)で使った、産業革命以降の温度上昇を5本の温度計で示す図です。始まりの年1868年(明治元年)は正に日本の産業革命元年です。欧米の産業革命は日本より早く始まりましたが、注9に示されているように、1850ー1900年の平均値が産業革命前の近似値として使用されています。右の図はこの要約の図SPM.2で、図aの灰色の棒グラフは産業革命以降の温度上昇の観測値(1.07℃)を示しています。そして、この産業革命以降の温度上昇(灰色の棒グラフの高さ)は、青色の線で示すように、温度計のたった1目盛りです。
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図a が観測事実のグラフであるのに対して、図b、cはシミュレーションのグラフです。図bの一番左にはピンクの棒グラフ「人間の影響の全体」があります。その高さは図aの灰色の棒グラフ(産業革命以降の温度上昇の観測値)とまったく同じ高さになっています。これこそがIPCCが主張する「人為的地球温暖化」なのです。つまり、産業革命以降の観測された温度上昇全部が人間の影響によるものであるというIPCCの主張です。

図bの2番目のピンクの棒グラフ「十分に混合された温室効果ガス」は、排出削減が求められているCO2などによる温暖化を示しています。その高さは1.5℃付近を指しています。でも、これでは図aの観測値(1.07℃)を大幅に超えてしまい、シミュレーションは失敗です。そこで導入されたのが、3番目の青い棒グラフ「他の人間の要因」です。この青い棒グラフはマイナスであり、地球を冷やしています。温室効果ガスによる大きすぎる温暖化を「他の人間の要因」で冷やして、「人間の影響の全体」のピンクの棒グラフの高さを、図aの観測値の灰色の棒ブラフに合わせるシミュレーションをやっているのです。

図bの4番目の「太陽と火山の要因」と、5番目の「内部変動」は地域的や時間的には温度を上げたり下げたりしますが、時間的、空間的に平均すれば0になるというのがIPCCの主張なので、棒グラフはなく、変動の範囲だけがヒゲで示されています。

図bの「十分に混合された温室効果ガス」の内訳が図cの「二酸化炭素」と「主に非CO2温室効果ガス」で、図bの「他の人間の要因」の内訳が図cの「主に人為的エアロゾル」と「土地利用の反射率と灌漑」と「飛行機雲」です。

温室効果ガスによる温暖化し過ぎをエアロゾルで冷やしてシミュレーション値を観測値に合わせたいきさつを、元国立環境研究所理事長の住明正氏が「さらに進む地球温暖化」17〜19頁で次のように述べています。
…1990年前半頃には、人間活動による地球温暖化論は危機に瀕していたように思います。理由は、その当時の大気中の二酸化炭素濃度、さらに、メタンなどの他の温室効果気体の効果を加えると…有意な温度上昇が観測されてしかるべきであったのに、実際の観測データからは有意な温度上昇が見出されていなかったからです。この危機を救ったのが、英国のハドレーセンターのシミュレーション計算結果であったと思います。そこでは、大気中のエアロゾルの直接効果による冷却効果を導入して、現実の観測された温度とシミュレーションの温度変化の矛盾を回避したのでした。

…特に、化石燃料の燃焼による硫酸エアゾルは、大気中の二酸化炭素濃度の増加とともに、大気中の硫酸エアロゾル濃度も増加します。温暖化が促進されればそれに比例して冷却効果も強くなるので、地球の温暖化を減らすのに都合が良いと考えられたのでした。そして、エアロゾルの冷却効果を取り入れれば、現実の温度変化をよく再現するのだから気候モデルの結果は信用できるとして、「人間活動による地球の温暖化」を示唆したのが1995年に発表された第2次報告書なのです。

今から考えると、この時に用いたエアロゾルの直接効果は非常に大きい値でしたので、温度の観測データに合うようにパラメータを導入したと勘ぐられても仕方がないような印象を拭い去ることができません。「なんとしても、人間活動による地球温暖化の旗を守る」という英国の決意を感じるのは、筆者の勘ぐりでしょうか? …エアロゾルによる冷却効果などは、昔からよく知られており、格別新しい概念ではありません。ただ、「それが重要だ。それを入れれば、それでいける」という判断をしたのはさすがだと思います。
つまり、温室効果ガスだけのシミュレーションでは温度が高くなりすぎて観測値に合わないので、非常に大きなエアロゾルの直接効果で冷やしてむりやり観測値に合わせたということです。その後、直接効果だけでは冷やしきれないことがわかり、間接効果を含めて冷やして観測値に合わせたのです。図cの説明に「エアロゾルについては、(放射による)直接効果と(雲との相互作用による)間接効果の両方が考慮されています。」と記載されているのはこのことを指しています。

以上のように、人間の影響には温度を上げる要因と下げる要因の両方があるので、シミュレーション値が観測値に合っているからといって、正しいシミュレーションであるという保証はなく、気候システムを正しく理解したともいえないのです。

図bの3番目の青い棒グラフ「他の人間の要因」の先端はー0.4℃近辺を指しています。その先端から可能性の高い範囲を示す上ヒゲと下ヒゲが伸びていますが、上ヒゲの先端は0.0℃近辺を指しています。なので、「他の人間の要因」は0.0℃(冷却効果なし)である可能性も高いことをIPCC自身が認めているということになります。

もし「他の人間の要因」が0.0℃であるとすれば、ピンクの棒グラフ「十分に混合された温室効果ガス」の先端を下ヒゲの先端(1.0℃近辺)まで下げて、図aの灰色の棒グラフ(観測値)に合わせなければならないことになります。もしそうなったら、「なんとしても、人間活動による地球温暖化の旗を守る」という英国ハドレーセンターの決意が無に帰すことになるのです。


(訳注6)気候モデルのシミュレーションは何W/m2で加熱したら何℃になるかの計算

左の図はこの要約の図SPM.4aで、現在から21世紀末にかけてのCO2などの排出シナリオです。(訳注5)で述べたように、IPCCは、自然要因や内部変動は平均化すれば0となり、人為的CO2などの温度を上げる要因と人為的エアロゾルような温度を下げる要因によって人為的な気候変動が起こると主張しています。そこで将来を予測するシミュレーションを行うためには、今後、人間がCO2などやエアロゾルなどをどのように排出するのかのシナリオをコンピュータに入力する必要があります。
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そ れが左の図に示されたSSP1-1.9〜SSP5-8.5の5つのシナリオです。SSP1〜5のあとに記載された数字1.9、2.6、7.0、8.5は、第5次報告書のシナリオRCP2.6、4.5、6.0、8.5の8.5以外の数値を変更したものです。例えば、8.5は21世紀末に地表を1平方メートル当り8.5W(ワット)で加熱するという意味で、現在から21世紀末までは図の曲線にしたがって加熱(エアロゾルの場合は冷却)するシナリオです。他のシナリオも同様です。

加熱すれば地球の温度は上がります。温度が上がれば、赤外線による放熱が多くなり、加熱と放熱がバランスした温度になります。放熱はステファン・ボルツマンの法則「E=σT4」で決まるのですから、何W/m2で加熱したら何℃になるのかの計算はパソコンでもできるのではないでしょうか?

しかし、気候学者たちは気候モデルというソフトをスーパーコンピュータ(スパコン)にかけて極めて複雑な計算をしてシミュレーションを行います。左の図のシナリオはスパコンへの入力データです。図の二酸化炭素とメタンと一酸化二窒素は温室効果ガスで温度を上げる要因です。二酸化硫黄はエアロゾルで温度を下げる要因です。ここに示されているのは代表的な人為的要因だけで、他の人為的要因は図SPM.2cに示されています。

右の図図SPM.4bで、21世紀末期(2081-2100年)のシミュレーション結果(予測値)で、左の図の5つのシナリオの入力データに対する出力データです。「合計(観測)」の棒グラフの色の濃い部分は産業革命以降の温度上昇の現在の観測値(1.07℃)を示しています。

右の図の一番右側はSSP5-8.5(CO2出し放題)のシナリオ(入力データ)に対する出力データです。合計の棒グラフを見ると産業革命以降の温度上昇が4.4℃になることが示されています。その右に内訳として、CO2による温度上昇が極めて大きく、非CO2温室効果ガスによる温度上昇もかなり大きく、エアロゾル等による温度低下は少なくなることが示されています。左の図の右下の図にエアロゾルの代表である二酸化硫黄がSSP-5ではかなり減ることが示されています。冷却効果がある(とIPCCが主張する)エアロゾルが減ると温度は上昇しますが、エアロゾルは公害物質なので、地球温暖化とは無関係に、公害対策として削減が必要です(環境展望台「環境技術解説:排煙脱硫技術」参照)。

右の図の一番左はSSP1-1.9(脱炭素)の出力データです。合計の棒グラフを見ると産業革命以降の温度上昇が1.4℃になることが示されています。これは現在の観測値である1.07℃よりも高い温度上昇です。2番目の棒グラフは21世紀末期のCO2の温度上昇への寄与は1.0℃程度であることを示しています。そころが図SPM.2cを見ると現在の二酸化炭素の温度上昇への寄与は0.8℃程度ですから、現在より0.2℃程度寄与が大きくなっています。

左の図の二酸化炭素の図を見ると、SSP1-1.9は2060年ごろに脱炭素を達成し、それから21世紀末にかけてマイナスになる、つまり大気中のCO2を吸収するシナリオです。それでも、CO2の温度上昇への寄与は現在より0.2℃大きいという結果です。これは現在から脱炭素達成(2060年ごろ)までの期間のCO2による加熱の方が、脱炭素達成以降のCO2の吸収による冷却より大きいからではないかと推測します。なお、これはあくまで気候モデルにシナリオSSP1-1.9を入力した場合のシミュレーション結果であり、実際に正しいかどうかは21世紀末にならないとわからないかもしれません。


(訳注7)IPCCは現実直視のシナリオで21世紀末のシミュレーションを

SSP1-1.9〜SSP5-8.5のシナリオの後半の数字1.9〜8.5については(訳注6)で説明しました。一方、前半のSSP1〜SSP5のSSPとは共通社会経済経路(Shared Socioeconomic Pathways)というものです。これについては、『解説:「共通社会経済経路(SSP)」で未来の気候変動を探る Zeke Hausfather 国立環境研究所 訳』で解説されています。この文献によればSSP1〜SSP5は次のようなもののようです。
SSP1 持続可能性-グリーンロード(緩和と適応の困難性が低い)
SSP2 ミドル・オブ・ザ・ロード(緩和と適応の困難性が中程度)
SSP3 地域間の対立-ロッキーロード(緩和と適応の困難性が高い)
SSP4 不平等-分断された道(緩和の困難性は低く、適応の困難性は高い)
SSP5 化石燃料による開発-ハイウェイ(緩和の困難性は高く、適応の困難性は低い)
各SSPにはそれぞれ数行の説明文が記載されていますが、左の図に、排出量の最も少ないSSP1と、最も多いSSP5の説明文を示します。
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これを読んでも全く意味がわかりません。1つのSSP(共通社会経済経路)につき数行のこの文章から、図SPM.4aのCO2などの排出量のシナリオが“科学的に”決まるとは到底信じることはできません。SSPは現実から遊離した学者の机上の空論ではないでしょうか。

右の図が現実を示しています。日米欧は2050年の脱炭素を目指しています。一方、中国(ピンクの曲線)は21世紀に入り排出量を激増させ現在ダントツで世界一のCO2排出国です。その中国(ピンクの破線)は2030年までCO2排出量を増やすと主張しています。日米欧が脱炭素をしても、中国がこれを帳消しにするのが現実です。

IPCCは、机上の空論的なSSP1〜5シナリオではなく、国によって気候政策が違う現実を直視したシナリオを使って、現実に近い21世紀末のシミュレーション結果を公表すべきではないでしょうか。

(訳注8)「可能性が低くインパクトの大きいストーリー展開」で恐怖を煽る報告書

次の図はこの要約の図SPM.8dの海面上昇の図です。私はこの図の説明を翻訳していて驚きました。「可能性が低くインパクトの大きいストーリー展開」と記載されていたからです。第1作業部会は「自然科学的根拠」の作業部会です。その報告書に「ストーリー展開」とは! 読む人が翻訳者の創作と誤解しないように、図に原文「Low- likelihood, high-impact storyline」を書き添えておきました。
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実際には、この図dの右には超縦長の図SPM.8e(2300年の海面上昇の予測図)が示され、「15mを超える海面上昇を除外することはできません」と記載されています。超縦長でも15mの海面上昇は1頁に入りきれず、破線の矢印で15mを示唆しています。IPCCは「可能性が低くインパクトの大きいストーリー展開」で恐怖を煽りたいようです。

この図SPM.8を参照する「B.5.3」 には「氷床プロセスの不確実性が深いため、除外することはできません<cannot be ruled out due to deep uncertainty in ice sheet processes>」と記載されています。深い不確実性があるのなら、除外するのが科学だと私(翻訳者)は思いますが、IPCCは不確実性が深いから除外できないという評価です。

一方、「B.5.2」 には、「高いGHG排出シナリオの下で何世紀にもわたって南極氷床からの氷の損失を大幅に増加させるという、可能性が低くインパクトが大きい結果(深い不確実性を特徴とする氷床の不安定性プロセスに起因し、場合によっては転換点を伴う)の証拠は限られています」と、南極の氷床が解けるプロセスについて慎重な見方がなされています。

しかし、「C.3」「C.3.2」「C.3.5」にも、可能性の低いものを除外できない旨記載されています。さらに、「ストーリー展開<storyline>」という用語は全報告書中に237回も使われています。IPCC第6次報告書は「可能性が低くインパクトの大きいストーリー展開」で恐怖を煽る報告書なのです。

私たちがよく知っている「可能性が低くインパクトの大きい」ものは宝くじです。宝くじは当たる可能性は低いですが、当たれば大もうけです(正のインパクトが大きい)。宝くじの宣伝は、何億円も当たる夢を振りまきます。私(翻訳者)は現実派なので宝くじを買ったことはありません。でも夢を追う人も多いようで、宝くじ売り場に長蛇の列ができているのを見たことがあります。

一方、IPCCの「可能性が低くインパクトの大きい」ものはストーリー展開の予測です。これも当たる可能性は低いですが、当たれば地球が大変なことになります(負のインパクトが大きい)。このIPCC第6次報告書は、上記の図などを使って南極大陸の氷床が解けて海面が15mを超えて上昇する悪夢を振りまきます。私は現実派なのでIPCCの予測は信じません。ところが、日米欧の首脳はこの悪夢に取り付かれたのか、2050年脱炭素を目指すと宣言し、莫大な対策費を支出しようとしています。もちろんその財源は国民が負担することになるのです。

IPCCが振りまく当たる可能性が低い悪夢。しかし、その悪夢から逃れるために目指すべきとされる脱炭素社会もまた悪夢なのです。杉山大志『「脱炭素」は嘘だらけ』88頁によると、『政府「グリーン成長戦略」における2050年CO2ゼロのイメージ。水素、CO2回収、貯留技術(CCUS)など、現時点では研究開発段階に過ぎない未熟で高価な技術が大量導入される。出力が不安定な再生可能エネルギーが大量導入される。安価な化石燃料の使用を禁止し、脱炭素電力で置き換える。化石燃料を使う場合はCCUSを使用してCO2を排出しないことを強制される。今からあと30年でこのようにすることは常識的に考えても不可能だ。強引に達成しようとすれば国家予算規模の費用がかかり、国民経済は破壊される。』

ところで、通常の科学の分野では、どんなに理論やシミュレーションが素晴しくても、実験や観測に合わないものは相手にされないと思います。将来の予測でも、可能性の低いものは排除されると思います。ところが、気候科学の分野では「可能性が低くインパクトの大きいストーリー展開」は除外されず、逆に大歓迎なのです。この報告書の中に参考文献として掲載されている論文のタイトルにも「ストーリー展開<storyline>」が入っているものも多数あります。可能性が低くても、地球が大変なことになるというストーリー展開を考え出して論文に書けば、IPCCから高く評価されるのです。しかも、2100年とか2300年の予測では自分が生きているうちに検証されることもないでしょう。そして、研究費もたくさんもらい、科学者として高い地位も得られるのです。気候科学者というのはおいしい商売なのかもしれません。


(訳注9)気候インパクトドライバーって何?

C.1.2に出てくる「climatic impact-drivers」をAI機械翻訳は「気候インパクトドライバー」と翻訳していました。これでは意味がわかりません。Googleで検索しても有用な情報はありませんでした。そこで「インパクトドライバー」で検索して出てきたのが左の図です。インパクトドライバーとは回転と同時に回転方向に打撃力(インパクト)を加えるドライバーです。気象庁の「政策決定者向け要約の概要」を見ると「気候的な影響駆動要因」と訳されていました。「impact」を「影響」、「driver」を「駆動要因」と訳すのは理解できます。
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右の図はこの要約の図SPM.9です。この図を翻訳していて、「暑さと寒さ」「湿ったと乾いた」などなら、「駆動」は適切ではないと思い、「気候影響要因」と訳していました。この訳注を書くまでは…

この訳注を書いていて、(訳注2)の最後に「今回の報告書のこの要約はNHKやBBCが気候変動恐怖番組をつくるのに最適な内容だ!」と書いていたことを思い出しました。これを書いたのは少し前に、BBCの『気候変動 「1.5度上昇」の上限超える危険とは』という動画を見ていたからです。この動画は視聴者に気候変動の恐ろしさを映像でこれでもかこれでもかと印象づける印象操作番組です。私はこの「政策決定者向け要約」を翻訳していて、このような気候変動恐怖番組にネタと根拠を与えるのがこの「政策決定者向け要約」の役割の一つではないかと感じていたのです。

そうすると「climatic impact-drivers」の訳語は、気候が人間や生態系に良い悪いにかかわらず何らかのインパクトを与えていること示す訳語でなければならないことになります。英語の「impact」には「衝撃」と「影響」の二つの意味があります。一方、日本語の「インパクト」は「衝撃」の意味だけです。第6次報告書は、「気候が人間や生態系にインパクトを与えている」ことを印象づけて、排出量削減を各国政府の政策決定者に決定させようという意図で書かれていると思います。「climatic impact-drivers」は「気候インパクトドライバー」と訳すのがIPCCの意図に合っていると思うようになり、それまで使っていた「気候影響要因」を、AI機械翻訳が訳した「気候インパクトドライバー」に書き換えました。なお、「インパクト<impact>」という用語は全報告書中に2,459回も使用されています。

私たちは、IPCC第6次報告書はこのような意図で書かれたものであることを認識した上で、この報告書を盲信するのではなく、冷静に客観的に読む必要があるのではないでしょうか。


(訳注10)これが人為的地球温暖化の正体だ!

   (訳注10)の内容はここをクリックしてください。




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