ハズェルクの手記第1回第2回/第3回

キャンペーン第3回

私たちはパクスを辞し、新たにケーアが見つかったというティデェイス村へと向かう事にしました。出発から5日後、キャラバン全滅の痕に再び遭遇しました。相変わらず悲惨な光景だったので、憐憫の情からか、彼らとその遺物を荼毘にふす事にしました。

おそらくはホラーの不浄の炎によって引き起こされたであろう惨劇。その犠牲者たちを、せめて清らかなる炎で送ってあげる事が、私たちにできる精一杯だったのです。

その地を後にして、さらに数日進みました。途中の分かれ道からティデェイス村へと進んでいる行程で、夕食の時間に怪物の襲撃をうけました。巨大な空飛ぶエイのような怪物、シャドウマントです。しかし勇敢なるアデプトたちは、全く損害受けずに勝利をおさめました。怪物について造詣の深いシャープは、シャドウマントの毒針に価値を見出し、回収していました。

私たちのようなアデプトパーティにとっては手応えの無い敵ですが、一般のキャラバンや旅人たちにとっては、こういう怪物との遭遇は不運といえるのではないでしょうか。

それから2日後の夜になって、ティデェイス村に到着しました。時間も遅いため、さっさと宿を確保しました。宿の親父に、ケーアについて質問した所、以下のような答が返ってきました。

次の日、朝からヘイゼルの家を訪れました。彼の口から、林の中にあった空き地にケーアの入り口が現れた事、1ヶ月ほど前に森から動物が姿を消した時期があった事を知ることが出来ました。
興味深い情報がいろいろと入手できたので、まずは現地へ赴く事にしました。途中、トゥールがあたりの木々に話しかけていましたが、特に情報は得られなかったようです。目的地に着くと、すぐに入り口を発見する事が出来ました。夕方近くでしたが、まずは様子見とばかりに、下り勾配の通路を進んでいきます。すると、前方から件のパーティが戻ってくる所でした。彼らにいろいろと情報を教えてもらい、今晩は一緒に野営をする事になったのです。

何事にも先駆者はあり、先駆者の話には真実の糸口が隠されているものです。自ら体験した事も知識であり、体験した者から聞いた疑似体験もまた知識なのです。

僭越ながら私のささやかな芸を披露しますと、お返しとばかりに相手方のトゥルバドール(吟遊詩人)が英雄を称える歌を聞かせてくれました。道を志すもの同士、打ち溶け合うのに、さ程の時間も必要ありませんでした。 彼らの話では、ケーアの中にはグールと言う怪物(アフニールの知識によると、ホラーの力で生まれた動く死体なのだそうです)が多数徘徊しているということです。「既に2つのパーティが全滅やほぼ全滅しているのは、無茶をしたせいである。多少の被害を受けるたびに撤退して体勢を整え、地道に探索を続けて行く。」と言うのが彼らのやり方なのだそうです。

至極もっともな意見です。焦りは何も産みません。目先の利益を追うのは、心の貧しき者の考え方でしょう。そして、死を恐れぬ勇気は、それが本当に必要な時に発揮できればよいのです。アデプトのパーティなら、死を避けるべく細心の注意を払い、常に一歩先を予想し、大業を成し遂げるだけの能力を身につけているはずです。

その晩は、彼らと協力して野営をしました。翌朝、いよいよケーアの探索を開始します。彼らの後をついていって、途中で別々に探索を始めました。中に入って気づいた事は、あまりに酷い悪臭が漂っている事でした。私たちの何人かも悪臭に耐え切れず、かなり酷い状態になりましたが、何とか探索を開始したのです。
第一階層には、4つの部屋があり、2つがパッション〜別の時代には「神」と呼ばれたものに近いようです〜(富を司るコロリスと、建築を司るアパンダル)の祭壇の部屋、2つが「都市の生活」と「鍛冶・宝石細工の作業を描いた」壁画の部屋でした。都市の壁画には、石ではない材質の建築物が描かれているようでしたが、それ以上の情報は得られませんでした。階段のあるホールから、下のフロアを覗いてみると、どうやら3階層構造になっていることが判りました。
私たちは第2階層に降り、先発隊の邪魔にならないよう、彼らのいない方向の調査を始めました。最初に調べた場所は農場でしたが、何故か焼け焦げた痕がありました。トゥールが生き残った野菜から情報を集めている間に、私たちは辺りを捜索しました。すると、奇妙な足跡を発見したのです。そう、パクスへ向かう途中に全滅していたキャラバンの周辺で見つけたのと同じ足跡を..。

このケーアを壊滅に追い込んだホラーは、キャラバンを襲ったのと同じものだという確信を得ました。時期的な点を考えると、1ヶ月前にホラーがこのケーアを襲い、その後移動してキャラバンを襲ったのでしょう。

さらに調査を続け、居住区と思しきエリアを調査しましたが、実利的にはたいした収穫も無かったものの、夕刻も近くなったので私たちは一旦地上に引き上げました。先遣隊は既に戻っており、再び情報交換をしました。気になっていた壁画の事を話すと、ジュエルズシティという、場所も存在も知られていないという伝説の都市ではないか、という話を聞く事が出来ました。

忘れられた都市・パーレインスと同じような都市が、他にも存在していたのですね。大変興味があります。

その晩も共同で野営し、翌朝さらに探索を継続しました。彼らは、第3階層を調べるとの事ですが、私たちは第2階層をもう少し調べる事にしました。残った居住区の調査をしている最中に、アフニールが警告を発しました。見ると、グールが3体いたので、各自的確な行動の末、被害も無く打ち倒しました。続けての調査でも特に得られるものはありませんでしたが、第3階層を覗くと、広間の真中に死体に埋もれた彫像があることを確認しました。しかし、その日は引き上げる事にしました。

先遣隊の皆さんのおかげで、危険はほとんど無く調査を続ける事が出来ます。明日はいよいよ第3階層でしょうか?

地上に上がると、彼らは手酷い傷を負っており、大事を取って明日は休養するとの事でした。翌朝、私たちは第3階層へと降り、探索を開始しました。広間の彫像(パッションを象ったものでした)の影に、4体のグールがいたのですが、皆の連携攻撃でやすやすと勝利を得ました。

広間から行ける部屋は多数ありました。最初に調べた4つの部屋は、宝石細工の部屋、道具の工房、鍛冶場、防具工房です。いずれも作業に必要な道具や、作成途中の道具などが置いてありましたが、肝心の仕上げ道具が見当たりませんでした。おそらく魔法の物品なので、先遣隊が回収したのでしょう。途中、良質の防具(作りかけでしたが)を見かけましたが、私の目は、その防具が虚飾に彩られている事を見破りました。

仮にも幻影魔術師なのです。虚実を見分ける事に関しては、他の仲間よりは一日の長があったのでしょうね。

続けて鍵のかかった部屋を調査しますが、この場に適した特技を持ったものはパーティにはおりません。そこで、無理矢理こじ開けようとしてみますが、なかなかうまく行かないものです。その間に、私とアフニールは別の扉を調べました。3つの扉が高熱でひしゃげたようになっているのを発見しました。これもホラーの仕業でしょうか。そうこうしていると、先ほどの鍵のかかった扉の方から、ものすごい轟音が聞こえました。慌てて戻ってみると、シャープが斧を振るって扉を吹き飛ばした事が判りました。

シャープの鍛えられた強靭な肉体と、一瞬に全能力を解放する集中力には、いつも感心させられます。そしてフラベラムの鍛えた斧。これだけの条件が揃うなら、頑丈な扉も打ち破れるものなのですね。

扉の向こう側は宝物庫でした。しかし、特に興味のあるようなものは無かったので、探索を続行しました。例の3つの扉の向こう側は、それぞれケーアの代表者の部屋だったようです。代表者は3人いて、それぞれドワーフ、エルフ、ヒューマンであることが、残された記録に記された言語から想像できます。部屋の中では、ヒューマンとエルフが殺し合って互いに息堪えており、ドワーフの首だけが見つかったので、私たちの想像は真実味を帯びました。3人とも、ホラーによって死を賜られたのでしょう。
調査の結果、3つの部屋の1つには、壁に4つの絵がかけられており、それを定められた場所に並べると、隠し扉が開く事が判りました。魔法的に仕掛けられた隠し扉です。非常に興味をそそられると同時に、その先に待ち受ける危険も予想しない訳には行きませんでした。これほど厳重に隠されているのですから。

隠し扉の向こうの階段を降りると、先の部屋の中には翼を持つ奇妙な生き物が3体いました。ガーゴイルと言うその怪物は、部屋に踏み込まない限り襲ってくる様子はありませんでした。
私たちは、出来る限り最善の準備を尽くしました。トゥールが、シャープとウルフバンダーの武器に炎を纏わせ、同時に私の幻術で、二人を「無害なもの」に変えたのです。二人の「無害なもの」に不意打ちされ、1体のガーゴイルがバランスを崩しました。もう1体は、シャープにかけた幻を見破りましたが、もう1体はただおかしな状況に困惑するばかりでした。その後、徐々に相手が幻を見破りだした頃、幻を施されたアフニールは、接近戦に参加します。状況を良く観察して、1体のガーゴイルが「消えてしまった」頃から、フラベラムとエイミィも戦闘に加わり、トゥールと私が後方支援を仕掛けました。
結果、シャープがそこそこの痛手を被ったものの、勝利を収めました。

途中、ガーゴイルが幻であると疑念を感じたのですが、その時は見破れませんでした。私の放ったかげろうの矢によって、最後の1体が掻き消えた時に初めて、それが幻であったと確信したのです..。修行が足りませんね、私も。

ガーゴイルの背後にあった3つの扉にも、その奥の部屋にも、幻術が施してあったため、調査に多少手間取りましたが、結果としてジュエルシティに関する書物を入手できました。それ以外にも、多量の書物を収めた書庫、多くの武器防具を収めた倉庫があり、それぞれが思い思いに丸1日を調査に費やし、自分の欲しいものを選り分けていったのです。

私はもちろん知識を求めました。虚構と現実の理(ことわり)に関する書物があればいいですね。それらしいものを数冊選び出しましたが、良く読んでみないと判りません。何はともあれ、私個人としてはジュエルシティに関する書物を研究してみたいと思います。人々にその存在を信じられながら、場所も存在も不明な都市。おそらくは強力な幻術によって守られているのでしょう。

私たちのケーア探索は完了しました。それぞれが自分にとっての収穫物を手に、一旦ティデェイス村へと戻りました。今後はパクスあたりに戻って、調査をしてみたいと考えていますが、さてどうなる事でしょうか?


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