肺気腫

 タバコ病の一つに「肺気腫」(正しくは慢性肺気腫)があります。タバコ煙には0.02マイクロメーターという極小の粒子まで含まれており、口やのど、太い気管支への沈着だけでなく、有害物質が肺の奥にまで達してしまいます。そして一番奥の細気管支を壊してしまい、さらに酸素交換の場である肺胞まで破壊されてしまいます。細い気管支が痛んでしまうと、吸い込んだ息をうまく吐き出すことができなくなってしまい、肺は過膨張状態となります。すると息を吸っても肺はそれ以上膨らむことができず、呼吸は苦しくなります。その症状は「肺気腫」の程度により違いますが、運動時だけ息切れに気づく程度から、安静にしても強い呼吸困難が起きる状態まで様々です。喫煙を続けることにより肺胞の破壊は徐々に進行し、気づいた時には手遅れという場合も少なくありません。

 「肺気腫」には酵素欠損が原因でおきるものもありますが、日本人にはまれで、我が国の「肺気腫」の原因は、そのほとんどが喫煙であることがわかっています。喫煙は発症の原因であるだけでなく、「肺気腫」の進行を早める因子でもあります。そのため「肺気腫」と診断されたら、まず真っ先に禁煙することが最高の治療方法なのです。

 その他に薬物治療もありますが、あまり効果を期待できないことも多く、とくにお年寄りの場合は呼吸筋のリハビリテーションが有効なようです。進行した「肺気腫」では日常生活が困難なほどの酸素欠乏状態となり、24時間の在宅酸素療法が必要になります。最近は肺移植も話題にのぼりますが、喫煙を続けている人の場合は勿論、適応外です。

 最近のトピック的な外科療法として、肺容量減少手術があります。肺の気腫化した部分を縫い縮める手術ですが、膨らみすぎた肺を小さくし、呼吸筋を動きやすくすることにより呼吸を楽にするものです。開胸手術で行われたり、身体の負担を少なくするため胸腔鏡を使って行われたり、施設によって多少手技は違いますが、最近は割合良い成績を上げているようです。今後の経過を見守る必要もあろうかとは思いますが、患者さんにとっては福音になるでしょう。

 

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